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AI時代に必要な「知性」とは|問いを立てる力と人材育成の新常識

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「知」のシャープナー

知性を磨き上げるAI時代に必須のスキル―

 

 

 

 

 

 

 

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私は1993年に文部省(現・文部科学省)に入省して以来、東京大学の部長職や中高一貫校の校長職を含め、約35年にわたり教育に携わってきました。その間、一貫して語られてきたのが、「知識偏重・詰め込み教育からの脱却」とのテーマです。そして今、その問いは、かつてないほど切迫したものとなっています。

 

生成AIは、膨大な知識を瞬時に集約し、文章や画像、動画、分析レポートなどを生み出します。こうした時代において、知識をたくさん持っていることの価値、いわば「物知り」「クイズ王」の価値は、急激に失われています。「どれだけ知識を持っているか」より、「どれだけ知性を持っているか」が決定的に重要な時代となったのです。

 

「知性」とは、ものごとを考え、理解し、判断する能力であり、「なぜそうなるのか(why)」「どう活かすか(how)」などの問いを重ね、知識・情報を整理し、新しい認識を形成する精神の働きです。断片的な知識・情報を「点」から「線」「面」「立体」へと昇華させていく力とも言えるでしょう。

 

 

 

 

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弱く、狭く、浅くなりゆく知性

一方で、実際、経営者や管理職の方々とお話しすると、こんな声をよく耳にします。

「見栄えの整った資料は上がってくるのに、なぜか物足りない」

「会議を重ねても、新たな発想が生まれない」

「若手が、すぐにできないと言ってあきらめてしまう」等々。

 

これらは「知識」の問題ではなく、「知性」の問題。知識は増えても、知性が失われている状況がうかがわれます。そしてその原因は、大きく三つあります。

 

一つには、「短絡化」です。「タイパ」「コスパ」など「パ」を重視し、なるべくショートカットで負担なくものごとを処理しようとする。二つの「シコウ」、すなわち「思考」と「試行」を重ねようとしない。難しそうなことを避け続けた結果、耐性も育たず、折れやすくなる。効率化を過度に重視した短絡的な考え方が、知性を弱くしているのです。

 

二つには、「頑迷化」です。四六時中SNSにアクセスする中、自分の考えに近い、自分の好みにあった情報を浴び続けた結果、偏った考えが固定化されてしまう「フィルターバブル」「エコーチェンバー」と言われる状況が生じています。プラットフォーマーのアルゴリズムに支配され、繰り返し強化された頑迷な考え方が、知性を狭くしているのです。

 

三つには、「皮相化」です。リモートワークやチャットツールの普及により、表層的なコミュニケーションは増えましたが、多様な他者と膝を突き合わせて考えをぶつけ合う機会は減っています。また、若者を中心に、生成AIに悩みごとを相談する者は多いですが、その答えは相手に迎合する上っ面のものにとどまりがちです。情報化がかえって、知性を浅くしているのです。

 

 

 

 

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知性を磨き上げる「知」のシャープナー

 

このように、弱く、狭く、浅くなりゆく知性を、いかに強く、広く、深くしていくか。そのためのツールを、私は「知」のシャープナーと呼んでいます。「シャープナー」とは、刃物を磨いて切れ味を良くする砥石のこと。知性を磨き上げるツールが「知」のシャープナーなのです。

 

この「知」のシャープナーの具体的内容については、同名のタイトルの本を光文社新書から上梓しており、講演でも詳しくお話ししています。本稿では、代表的な「知」のシャープナーである、「問い」について触れたいと思います。

 

問いを立てること(立問)、問いを発すること(発問)の重要性については、学校でも職場でも近年とりわけ強調されています。私は、「問い」には、大きく分けて3つの段階があると考えます。「初発の問い」「縦横斜めの問い」「認証の問い」であり、これらが知性を磨くツール、すなわち格好の「知」のシャープナーとなるのです。

 

まず、「初発の問い」とは、最初に発する問いです。問いを立てないことには何も始まりません。自らの好奇心や問題意識に基づき、「なぜ、そうなるのか?」「それで、どうすべきか?」などと問いを立てます。この初発の問いが、いわばアンテナとなって、思考や調査を起動させることとなります。

 

次に、「縦横斜めの問い」とは、初発の問いを深めていく問いで、縦とは時間、横とは空間、斜めとは時間や空間を超えた飛躍を指します。すなわち、「縦の問い」とは、過去はどうだったのか、未来はどうなりそうか、どうなるべきかなどといった問い。「横の問い」とは、他社、他地域、他国などではどうかといった問いを言います。

 

それに対し、「斜めの問い」とは、かけ離れた他の領域、他の分野ではどうか、他の生き物ではどうかなど、業界や分野等を超えた問いを言います。例えば、運輸業界と教育業界は全く異なる業界ですが、人手不足や高齢化、超勤削減(働き方改革)などの課題は共通しており、それらにどう対処しているのかなどといった点は、互いに参考になり得ます。

 

そして、「斜め」の角度が大きければ大きいほど、すなわち領域や分野等のギャップが大きければ大きいほど、AIが出してこないような、思わぬアウトプットが出てくることが期待されます。

 

このようにして、縦横斜めに問いを粘り強く重ねながら、一定の答え、アウトプットをまとめていきます。その過程では、上司・同僚等との対話や、AIを使った壁打ちも有効です。しかし最後は、自分の責任と判断でGOサインを出さなければなりません。そのための問いが、「認証の問い」。他者の受け売り、AIの吐き出しを無批判にそのまま使うのではなく、自分の名前で出す答え、アウトプットにふさわしいのか、責任を持って最終確認する最後の問いが「認証の問い」なのです。

 

以上の「問いの3段階」について、講演では、自分自身で繰り返す自問自答の「問い」、AIと繰り返す壁打ちの「問い」、組織内でリーダーを中心に繰り返す「問い」の技術を、「知」のシャープナーの一つとして詳しく紹介していきます。

 

そして、このような「問いの3段階」を組織内で機能させるには、「心理的安全性」の高い環境づくりが不可欠です。あなたが属する組織には、何でも遠慮なく質問できる雰囲気がありますか。知ったかぶりや遠慮、忖度が支配する組織では、知は急速に劣化します。この機に、個人でも組織でも、知的好奇心旺盛で、知性を重んじ、知的に謙虚な状態をめざし、知性の磨き方、「知」のシャープナーについて、じっくりと考えてみませんか。

 

 

 

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「知」のシャープナー

『 「知」のシャープナー
著者:御厩祐司
(光文社・2013/02/20)

 

 

御厩祐司(みまやゆうじ)
御厩祐司(みまやゆうじ)
一般社団法人日本教育啓発研究所代表理事・所長

1970年香川県出身。ひとり親世帯で育ち、県立高松高等学校から京都大学へ進学。1993年文部省(現文部科学省)入省。芸術文化課企画調査係長、私学助成課課長補佐、学生課育英奨学専門官、政策課課長補佐、生涯学習企画官、地域政策室長、生命倫理・安全対策室長、愛媛県教育委員会保健スポーツ課長、兵庫教育大学大学院教授、総務省情報通信利用促進課長、国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター長、内閣府参事官等を歴任。

 

 

 

本コラムで紹介した「知性を磨く力」は、教育現場だけでなく、人材育成や組織開発、リーダー育成にも通じるテーマです。AIが急速に普及する時代だからこそ、知識を活用し、自ら考え、問いを立てる力がますます重要になっています。講演では、長年にわたる教育行政や学校経営の経験をもとに、AI時代に求められる人材像や組織づくり、知性を育むための実践的なヒントについて分かりやすくお話しいたします。教育関係者はもちろん、企業の人材育成研修や管理職研修、自治体職員研修などにもご活用いただける内容です。ご依頼・ご相談はSpeakers.jpまでお気軽にお問い合わせください。

 

 

 

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