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私たちが無文字社会の暮らしから学ぶこと
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無文字社会を想像してみましょう
現代社会は文字や画像、動画、映像であふれかえっています。そのような社会に住むあなたは、文字のない社会を想像したことなど、おそらくないでしょう。そこで、例えば、次のような場面を思い浮かべてみてください。
あなたは友人との待ち合わせ場所に行くために、駅のホームで電車を待っています。その時、電車の運転一時見合わせを知らせる駅員さんのアナウンス。このままだと、待ち合わせに遅刻しそう。きっと、あなたはスマホで友人にメッセージを送ろうとするでしょう。でも、もし文字がない世界だったら? LINEもDMも送れないので、スマホで電話しようとするでしょう。しかし、この世の中に文字(数字)がなければ、電話番号は存在せず、電話はかけられません。それに、そもそもスマホを作ることはできませんし、電車を運行させることも、電車の車両を製造することも不可能です。
つまり、文字がなければ、「文明の利器」というものが存在せず、私たちの生活は根底から覆されるでしょう。私たちは大変な不便を強いられるはずです。

人類史における文字の使用
ところで、人類はいつ頃から文字を使うようになったのでしょうか。今のところ、一番古い文字と言えるものは、古代メソポタミアの約5300~4900年前の地層から発掘されていて、粘土板に刻まれた文字は「ウルク古拙文字」と呼ばれています。現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカに出現したのが約20万~30万年前で、人類が言葉を話し始めたのが約5万~10万年前ですから、人類史の中で文字が生み出されたのは、つい最近のことだと言っても過言ではありません。人類は、文字が発明されるまでは、口で話す「口頭言語(話し言葉)」しか持たず、文字で書き表された「書記言語(書き言葉)」はありませんでした。
文字はとても便利なので、人間社会に定着し、広がっていきました。そして、世界のほぼすべての社会は、国や地域によって時期に違いこそあれ、無文字社会から文字社会に移行しました。
ちなみに、日本にはいつ文字があらわれたかというと、中国大陸から日本列島に文字(漢字)が伝来したのは1世紀頃のこと。中国で作られて日本にもたらされた金印や銅銭に漢字が記載されていました。5世紀頃になると、日本で作られた鉄剣や銅鏡に、日本の地名や人名が記載されるようになりました。そして、6世紀の半ばに仏教が伝来した頃から、漢字を読み書きできる人が増えていきました。仏教には漢字で書かれたお経(経典)があるからです。しかし、庶民の大半が日本語の文字を読み書きできるようになったのは、1868年の明治維新以後のことで、近代的な学校制度が創設されてからです。

東シベリアに住むサハ人が火の神に祈りを捧げる様子。無文字社会の人々は生活のいろんな場面で神々に祈りの言葉を唱えました。その言葉は美しく、時に長くなることがありました。(筆者撮影)
講演を聴いて無文字社会の暮らしを知りましょう
昨年の12月、NHKテレビ「おとなのEテレタイムマシン」で「わたしの自叙伝 宮本常一―民俗学との出会い―」という番組がありました。この番組は、元々は1979年に放送されたもので、民俗学者の宮本常一さん(1907~81)が自身の半生を振り返っていました。その中で宮本さんは、「文字を知らない人たち、学校に行ったことのない人たちは、実に優れた話し手、いわゆる語り部であり、文字を介さずに記憶した事柄を話すとき、彼らの話には一定の型があり、抑揚がある」という内容のことを言っていました。宮本さんは日本中を歩き回った民俗学者として有名で、彼が話を聴いた人々の中には、文字の読み書きができない人や、明治維新以前のことを記憶している人も少なくありませんでした。2日ぐらいは、夜もろくに寝ないで話をしてくれる人もいたそうです。
文字の読み書きができない人々はどのような生活を営んでいたのでしょうか。私は講演で無文字社会の経済や政治、娯楽、宗教・信仰、メディア・コミュニケーションなどについてお話しします。
講演をお聴きになれば、私たち現代人が無文字社会から学ぶことがたくさんあることにお気づきになるでしょう。私たちは文字を獲得したことによって、いろんなものを失ってしまいました。現代社会は実に様々な問題を抱えています。その問題を解決するためのヒントが無文字社会を知ることに隠されています。無文字社会に生きた人々があなたに大切なことを教えてくれるはずです。さあ、講演を聴いて、あなたも無文字社会の暮らしに思いを巡らせてみませんか。

南シベリアに住むハカス人の英雄叙事詩の語り手。語りには「チャトハン」と呼ばれる箏の伴奏が付きます。無文字社会の人々にとって、物語を聴くことは大切な娯楽の一つでした。シベリア少数民族は、現在ではほぼすべての人が文字の読み書きができますが、1917年のロシア革命以前は、ほとんどの人ができませんでした。(筆者撮影)
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1964年 大阪市生まれ
東京外国語大学でロシア語を習得し、早稲田大学大学院でシベリア少数民族の文学を研究。1993年から1997年まで、東シベリアのヤクーツク市にあるサハ国立大学(現在の北東連邦大学)で日本語を教える傍ら、サハ語を習得し、サハの文化を研究。帰国後、千葉大学大学院でサハの口頭伝承、特に英雄叙事詩を研究。その後は現在まで、ロシア語の通訳・翻訳・講師の仕事に携わる。
現代社会では当たり前となった「文字」。しかし、人類の歴史を振り返ると、文字を持たない時代のほうがはるかに長く、人々は“語り”や“記憶”によって文化や知恵を受け継いできました。講演では、無文字社会の暮らしや価値観をひもときながら、現代人が失いつつあるコミュニケーションや人間関係の本質について、豊富なフィールドワークをもとに分かりやすくお話しいたします。教育・地域文化・コミュニケーション・人材育成など幅広いテーマでご活用いただける講演です。ご依頼、ご相談はSpeakers.jpまでお気軽にご相談ください。
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