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優秀な人ほど躓く|チームが動くリーダーシップ

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「自分がやったほうが早い」をやめた日
—Googleで学んだ、チームが動くリーダーシップ

 

 

 

 

 

 

 

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私がGoogleで初めてチームを持ったとき、正直に言えば自信があった。プレイヤーとして結果を出してきた。戦略も立てられる。数字も読める。だから「マネージャーとして何が難しいのか」がわからなかった。

 

しばらくして気づいた。チームが動いていない。正確には、私が動いていた。部下の仕事に口を出し、自分でやり直し、会議では私が話し続けた。「自分がやったほうが早い」——その感覚が、知らないうちにチームの自律性を奪っていた。気づいたときには、メンバーは私の判断を待つだけになっていた。指示待ちではなく、指示依存。私がボトルネックになっていた。

 

 

優秀な人ほど、チームを動かせない

 

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これは私だけの話ではない。プレイヤーとして優秀だった人ほど、マネージャーになったときに躓く。理由はシンプルだ。プレイヤー時代に成功した方法——自分が考え、自分が動き、自分が結果を出す——を、そのままマネージャーになっても続けてしまうからだ。

 

マネージャーの仕事は「自分が成果を出すこと」ではない。「チームが成果を出せる環境をつくること」だ。この転換が、思っている以上に難しい。頭ではわかっていても、体がついてこない。

 

ある日、私はチームメンバーに言われた。「信濃さん、私たちが考える前に、いつも答えを出してしまうんですよね」。痛かった。本人は悪気なく言ったのだと思う。でも、それが現実だった。私はチームを「動かしている」つもりで、実は「止めていた」。

 

プレイヤーとして優秀であることと、リーダーとして機能することは、まったく別のスキルだ。この事実を、多くのマネージャーが昇進してから初めて知る。教科書には書いていない。誰も教えてくれない。現場でぶつかって、初めてわかる。

 

 

Googleで気づいた「心理的安全性」の本質

Googleが社内で実施した大規模な研究「プロジェクト・アリストテレス」は、「最も成果を出すチームの共通点は何か」を明らかにしようとしたものだ。数百のチームを分析した結果は意外だった。メンバーのスキルでも、経験でも、IQでもなく、最も重要だったのは「心理的安全性」——チームの中で、リスクを取っても安全だという感覚——だった。

 

この研究が社内で共有され、コーチングの研修が一斉に始まった頃、私はちょうどPeople Managerとして組織を率いていた。ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンが築いたカルチャーを組織として仕組み化していく、そのただ中にいた。現場のマネージャーとして、「心理的安全性」という概念と向き合った。

 

最初に聞いたとき、「居心地のいい職場をつくること」だと思っていた。違った。心理的安全性とは、「失敗しても責められない」という感覚ではない。「自分の意見を言っても、チャレンジしても、馬鹿にされない」という感覚だ。もっと言えば、「このチームで正直でいられる」という確信だ。

 

リーダーが正解を持ち、メンバーはそれを実行するだけ——そういう構造では、心理的安全性は生まれない。メンバーが「どうせ信濃さんが決める」と思っていたら、彼らは考えることをやめる。考えることをやめたチームは、指示がなければ止まる。それは私が作り出した構造だった。

 

自分のマネジメントスタイルを変えることは、思っていたより怖かった。任せて失敗したら、自分の責任だ。口を出さずにいることへの不安。でも、そこを越えなければ、チームは育たないとわかっていた。

 

 

リーダーの仕事は「動かす」ではなく「動きたくなる環境をつくる」

Googleでの経験を経て、Uber Eatsでは200名を超える営業チームを率いた。コロナ禍の急成長期、foodpanda、DiDi、出前館、Woltなど競合が次々と参入してくる環境で、スピードと規模の両方が求められた。

 

そこで痛感したのは「リーダーが全部抱えると、組織は止まる」ということだ。200名のチームで、私が全員に指示を出すことはできない。リーダーがボトルネックになった瞬間、組織のスピードはリーダーのキャパシティに制限される。

 

コーチングを学び直して、私の関わり方が変わった。答えを与えるのではなく、問いを立てる。「どうすればいいと思う?」「何が一番の障壁だと感じている?」「もし制約がなかったら、どうする?」——こうした問いかけが、メンバー自身の思考を引き出し、自律的な行動につながっていく。

 

最初は時間がかかるように見える。答えを出した方が早い。でも、問いを重ねることで、メンバー自身が考え、動くようになる。そうなると、リーダーがいなくても組織が回り始める。これが「チームが動きたくなる環境」の正体だ。

 

「自分がやったほうが早い」は正しい。短期的には。でも、それをやり続けると、チームは育たない。リーダーが抜けた瞬間に、組織は止まる。本当の意味でチームが機能するとは、リーダーがいなくても動き続けることだ。

 

20年以上、さまざまな組織でリーダーを務めてきた。プレイヤーからマネージャーへの転換に苦しんだ経験も、コーチングで視点が変わった瞬間も、すべて今の講演や研修の核になっている。教科書には載っていない、現場のリーダーシップを、これからも伝え続けていきたい。

 

 

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【推薦書籍】

『How Google Works』(エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ著)

 

Googleという組織がどのように機能し、どのようなカルチャーのもとで成果を生み出してきたか——この本はその核心を明かしている。「スマートクリエイティブ」と呼ばれる人材をどう動かすか、リーダーはどうあるべきか。私がGoogleで実際に経験したことが、ここに体系的にまとめられている。マネージャーとしての視点を根本から問い直したい方に、強く勧めたい一冊だ。

 

 

 

信濃伸明(しなののぶあき)
信濃伸明(しなののぶあき)
Morgenrot Advisory代表/エグゼクティブコーチ

ローランド・ベルガーを経て、Googleで最年少マネージャーとして営業組織を率い、Uber Eats Japanでは営業部門の日本代表として200名超の組織を統括。現在はMorgenrot Advisoryを設立し、エグゼクティブコーチとして経営者・管理職のリーダーシップ開発支援や企業向け講演・研修を実施。

 

 

 

本コラムで紹介した「自分がやったほうが早い」からの脱却は、初めて部下を持つ管理職の方だけでなく、チームの成果に悩むすべてのリーダーにも、通じるものがある内容だと思います。

 

なぜ、プレイヤーとして優秀な人ほど、マネージャーになると躓くのか。
メンバーが自ら考え、動き出すチームとは何か。

 

講演では、Google、Uber Eats Japan、ADKなどで20年以上にわたり事業・組織のリーダーを務めてきた経験をもとに、プレイヤーからマネージャーへの転換のポイント、心理的安全性と成果を両立するチームづくり、問いかけでメンバーの主体性を引き出すリーダーシップについて分かりやすくお話しいたします。

 

新任管理職研修や次世代リーダー研修、マネージャー向けリーダーシップ研修、経営者・役員向けセミナー、人事・組織開発担当者向け講演会など、自律的に動く組織づくりを目指す場面におすすめです。ご依頼・ご相談はSpeakers.jpまでお気軽にお問い合わせください。

 

 

 

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