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26歳、経験も実績もない若者が、なぜ笑われたのか
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2017年、26歳。
東京・板橋区の舟渡という街で、私は小さな居酒屋を開業しました。
駅から徒歩7分。飲食店が並ぶ繁華街ではなく、工場や会社が点在するエリア。周囲の誰もが「難しい場所だ」と言いました。それでも私は、ここでやると決めていました。
開店初日の朝礼で、私は従業員たちの前にこう宣言しました。
「私はこの店を、地域で一番の居酒屋にします」
従業員たちは顔を見合わせて笑いました。アルバイトの子は下を向いて、クスクス笑いをこらえていました。
無理もありません。経験も実績もない26歳の若者が、立地も知名度もゼロの状態で「地域一番店」と言っているのです。誰もが「また若者が夢を語っている」と思ったはずです。当時の私には、その宣言を裏付ける数字も、実績も、何もなかった。あったのは、根拠のない確信だけでした。
3年後——「せんごく」は、本当に地域で一番繁盛する居酒屋になっていました。
毎晩カウンターには、企業を経営する人、税理士、コンサルタント、営業マン——肩書きは様々でも、本音で語り合う仲間たちが集まるようになりました。
笑われても、やり続けた。だから今がある。
あれから10年が経ちました。現在36歳。私の講演で最初に話すのは、いつもこの話です。

「挑戦のハードルを下げる」とはどういうことか
「地域一番店になる」と宣言したとき、私の中に根拠はありませんでした。ただ一つだけ、決めていたことがあります。
「今日できる一番小さなことを、確実にやる」
開店初日、私がやったことは「常連になってくれそうなお客様に、翌日も来たくなる理由を一つ作る」ことだけでした。翌日も、その翌日も、同じことをやり続けた。「地域一番店」という大きな目標は、常に頭の中にある。でも今日やることは、目の前の一つだけ。
高い目標に届かないのは、多くの場合「無理をしすぎによる自滅」です。一気に頂上を目指して息切れする。最初から完璧を求めて動けなくなる。私はそれをやらなかった
挑戦のハードルを下げることは、目標を下げることではありません。目標はそのままに、今日の一歩を小さくする——それが私の経営哲学の原点です。
影響を受けた経営者や尊敬する人物には、自ら頭を下げて教えを乞うことを徹底してきました。学歴のない私にとっては、体当たりで実践から学ぶしかなかったからです。今振り返ると、経営とは知識や職業のジャンルではなく、生き方そのものだと感じています。
この話を講演でお伝えすると、若い社員を持つ経営者や管理職の方々から「うちの若者に聞かせたかった」という声を多くいただきます。「頑張れ」と言うだけでは若者は動かない。動き方を一緒に考えることが、育成の本質だということを、私は経営者として身をもって学んできました。
居酒屋の経営者が、なぜ若者の育成に向き合うのか

2024 年、近所の小学校の校長先生から一本の電話をもらいました。子ども食堂の依頼でした。食材を扱うノウハウも、スペースもある。即答しました。
ところが子ども食堂を続けるうちに、私はある現実に直面します。子どもたちは、ご飯を食べながら少しずつ本音を話してくれるようになりました。その言葉の中に、私が予想していなかったものがありました。
「将来どうなるんだろう。なんか、不安なんだよね」
小学生が、です。
お腹を満たすことはできる。でも、この子たちが社会に出たとき、本当に必要なものを提供できているだろうか——そう考えたとき、居酒屋のカウンターに毎晩集まる大人たちの顔が浮かびました。経営者、税理士、コンサルタント——実社会の最前線で戦い続けてきた人たちの経験を、若者たちに届けられないか。
2025 年、「魁こども経営塾」をスタートさせました。1 年間のテストランで、多くの若者と真剣に向き合いました。すると、表面上の「悩み」の奥に、もっと深い閉塞感が見えてきました。
「変わりたいのに、何から変えればいいかわからない」
「頑張りたいのに、頑張れない」
「自分が何者かわからない。友達の前の自分と、家にいる自分と、どれが本当の自分かわからない」
「本音を言ったら嫌われそうで、いつも合わせてばかりいる」
「正解がわからないまま、毎日だけが過ぎていく」
これは個人の問題ではない。今の時代を生きる若者たちが、構造的に抱えている痛みだ——私はそう確信しました。そしてこの痛みは、学校や既存の塾・スクールでは解決できないものだとも感じました。なぜなら彼らが求めているのは「正解を教えてくれる先生」ではなく、「自分のことを一人の人間として向き合ってくれる大人」だからです。
講演で伝えたいこと
テストランを経て、2026年4月、「桜花ライフアカデミー」としていよいよ開講します。対象は16歳から22歳。高校生から大学生、そして若年社会人。
開講に先立ち、私の店でアルバイトをしている高校生や大学生の友達を紹介してもらい、この層の若者たち数十人に直接インタビューを行いました。そこでわかったことがあります。
彼らは無気力なわけではありません。スマホを開けば同世代の活躍が次々と目に飛び込んでくる。「自分だけ取り残されている気がする」という焦りも、変わりたいという気持ちも、確かに持っている。ただ、どこから動けばいいかがわからない。
それは「やる気の問題」でも「根性の問題」でもなく、「動き方を誰にも教えてもらったことがない」という問題です。学校は答えを教えてくれます。でも「自分の答えの見つけ方」は、誰も教えてくれない。就職活動で「あなたの強みは何ですか」と聞かれても、自己分析をすればするほど自分のことがわからなくなる——そんな若者が、今の日本にはたくさんいます。
私はよくこんな話をします。
ライオンは、ライオンに生まれても、ライオンに育てられなければ本当のライオンにはなれない。でも、羊に生まれてライオンに育てられれば、羊の王様にはなれる——と。
どんな環境に生まれても、誰と出会い、誰に育てられるかで、人生は大きく変わる。そしてその「出会い」を意図的に作ることが、経営者として、大人として、私にできることだと思っています。
私の講演では、この経営哲学を軸に、挑戦することへの恐怖を手放す具体的な思考法をお伝えします。学校では教わらない「実学」——目標の立て方、言葉にする力、小さく動く勇気——を、居酒屋経営者としての等身大の実体験を通じて語ります。難しい理論ではありません。26歳で笑われた若者が、泥臭く積み上げてきた話です。
「笑われても挑戦する若者を応援したい」
あの日、従業員たちに笑われた26歳の若者は、36歳になった今もその気持ちだけは変わっていません。あなたの組織の若者たちの背中を、一緒に押させてください。

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26歳で独立。「居酒屋せんごく」を経営し3年で地域一番店に。2026年現在9年目、コロナ禍以外は売り上げ前年比を取り続ける。コロナ禍の東京都初の自粛要請の日に、2店舗目をオープン。東京都内で唯一の挑戦だったためテレビ朝日から取材を受ける。2年前より地域創生コミュニティを設立。
若者が動けない背景には、やる気や根性だけでは片づけられない不安や迷いがあります。
本コラムでお伝えした視点は、若手社員の育成や定着、挑戦を後押しする組織づくりを考える際のヒントとしてもお役立ていただけます。講演テーマとしてのご案内も可能ですので、ご関心のある方はSpeakers.jpまでお気軽にお問い合わせください。
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