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「なぜ人は間違えるのか?
『行動経済学』から見る事故が起きる理由」
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「注意していたのに…」
「確認したつもりだった」
「まさか自分が…」
事故やヒヤリ・ハットの報告書には、よくこうした言葉が並びます。
しかし、本当に「注意していた」のでしょうか。
実は、多くの事故は「不注意」や「やる気の問題」ではなく、人間の脳の仕組みから生まれています。
どれだけ真面目な人でも、どれだけ経験豊富な人でも、間違える可能性はあります。
それは能力が低いからではなく、人間である以上避けられない「心のクセ」があるからです。
こちらのコラムでは、「人はなぜ間違った行動を起こしてしまうのか」、そして「どうすればプロとして安全な選択ができるのか」について述べて参ります。
3秒で答えてください
バットとボールは合わせて1,100円で売っています。
別々で買うと、バットはボールより1,000円高いです。
Q.ボールはいくらでしょう?
・
・
・
「『100円』は不正解。正解は『50円』です。」
直感で答えると、かなりの割合で間違えます。
これは能力の問題ではありません。
人間の脳は、素早く答えを出そうとする性質があるからです。
私たちの脳には、「速い思考」と「遅い思考」があります。
速い思考は直感的で無意識。
遅い思考は論理的で意識的。
普段の仕事の多くは、速い思考によって支えられています。
慣れた作業、いつもの工程、長年の経験。
無意識でもできるからこそ、仕事はスムーズに進みます。
しかし同時に、速い思考は確認不足や思い込みを生みやすいという側面も持っています。
現場でも同じことが起こります。
「多分こうだろう」
「いつも通りだから大丈夫」
「今までも問題なかった」
速い思考が働き、確認を飛ばしてしまう。
だからこそ、慣れた作業ほど「あえて確認する」ことが必要です。
確認は不安の証ではありません。
確認こそが、プロの仕事です。

「今だけ」が一番危ない
人は、将来よりも「今」を優先します。
安全靴を履くのが少し面倒。
図面確認に時間をかけたくない。
点検で機械を止めるのがもったいない。
私たちは将来の事故より、今の手間や時間のほうを強く感じます。
これを心理学では「遅延価値割引」と呼びます。
将来の安全より、今の楽さを選んでしまう。
「この作業だけだから大丈夫」という言葉の裏には、この心理が潜んでいます。
これは怠慢ではなく、人間の自然な傾向です。
だからこそ安全は、「気合い」では守れません。
大切なのは、「今の判断が未来にどう影響するか」を考えられる力です。
長期的な影響を想像できること。それがプロ意識です。
プロは「失ってはいけないもの」を知っている
人は「得をしたい」よりも、「損を避けたい」気持ちのほうが強いと言われています。
点検に時間をかける=時間を損する
部品交換をする=コストを損する
だから、ついその行動を避けてしまう。
目の前の小さな損を避けようとするあまり、将来の大きな損を見落としてしまうことがあります。
しかし本当に失ってはいけないものは何でしょうか。
作業時間でしょうか。
目先のコストでしょうか。
それとも――安全でしょうか。
事故が起これば、失うのは時間やお金だけではありません。
信頼、仲間、そして将来です。
プロとは、目先の損得ではなく、「守るべき価値」を理解している人です。

安全は「仕組み」で守る
安全を守る方法は二つあります。
A:気合いで頑張る
B:ミスが起きにくい仕組みを作る
どちらが長続きするでしょうか。
品質管理の世界では、
「ミスをしない仕組みを作るのがプロ」と言われます。
安全も同じです。
感情で判断するのではなく、安全を選ばざるを得ない流れを作る。
確認しやすい環境。
声をかけやすい雰囲気。
無意識でも守れる仕組み。
人を責めるのではなく、人を理解する。
そして、人の特性を前提にした対策を考える。
そこから本当の事故防止が始まります。
安全大会は、堅苦しくありません
私がお話する安全大会等での講演では、
クイズやワークを交えながら、「なぜ人は間違えるのか」を楽しく体験的に学んでいただきます。
「自分も例外ではない」と気づく瞬間があります。
思わず笑いが起きる場面もあります。
しかし、その笑いの裏側には深い気づきがあります。
若手にも、ベテランにも、それぞれの立場で刺さる内容です。
経験豊富な方ほど、「自分は大丈夫」という思い込みに気づくことがあります。
安全は重いテーマです。
だからこそ、分かりやすく、楽しく。そして深く。
事故ゼロは、気合いからではなく、理解から。
人間の心理を知ることが、安全への最短距離です。
安全大会という時間が、「注意喚起の場」ではなく、「気づきと学びの場」になることを願っています。

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(ゴマブックス株式会社・2015/9/28)

北海道小樽市生まれ。国立釧路工業高等専門学校(釧路高専)機械工学科卒業後、北海道内大手企業にてシステム開発、新入社員教育、営業職など幅広い分野を経験。営業部門では、行動心理学を応用し12か月連続でトップ成績(年間契約件数450件)を達成。2009年に合同会社友歩を設立。
事故やミスの背景には、人の思い込みや判断のクセが関係しています。
本コラムで紹介した内容は、安全対策や現場改善を考えるうえでのヒントとしてもご活用いただける内容です。講演テーマとしてのご紹介も可能ですので、ご興味のある方はSpeakers.jpまでお気軽にお問い合わせください。
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