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人口5万人の島|狭く深く刺す経営術

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人口5万人の島で、ユーザー10000人を獲れた理由
〜AIエージェント時代の石垣島マーケティング論〜

 

 

 

 

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「この島には、Uber Eatsはない」

数年前、石垣島でフードデリバリー事業を立ち上げたとき、人口約5万人のこの島に、大手のデリバリーサービスは参入していませんでした。ほぼ毎日ミーティングでパツパツだった私には非常にこれが不便で、自分でこの事業を立ち上げる事にしました。

 

多くの人は「大手が来ていない市場」を「需要がない市場」と読み違えます。しかし実際は逆でした。需要はある。ただ、大手が儲かる規模ではないだけなのです。この隙間に、地域密着のニッチ戦略で入り込んだ結果、このサービスは今や人口5万人の島でユーザー数10000人超を獲得するまでになりました。それを見たせいか4年遅れで2026年にUber Eatsが入ってきたのです。

 

正直に言えば、立ち上げ当初はこんなに大きくなるとは思っていませんでした。人口5万人という数字だけを見れば、誰もが「市場が小さすぎる」と判断します。しかし現場に入ってみると、島には島特有の生活リズムがあり、観光客と住民では求めるものがまったく違い、既存の配達手段では拾いきれていないニーズが至る所に転がっていました。統計上の市場規模と、実際に足を運んで見える市場規模は、まったくの別物だったのです。

 

既存の配達手段が拾いきれていなかった理由を突き詰めると、「情報が更新されない」という一点に行き着きます。石垣島は個人店中心の島です。ある店は、息子の運動会があるからと手書きの貼り紙一枚で臨時休業になる。ある店は、マグロが獲れなかったからという理由だけで、その日のメニューが黙ってサーモンに変わる。これは怠慢ではなく、島の暮らしと商売がそれだけ密接に結びついているということです。しかし、これでは大手のアプリ上のメニューや営業時間は、あっという間に現実と乖離してしまいます。

 

何より、「スマホも使えない」と本人が笑うようなおじーが、日々ネット上でメニューをメンテナンスするところなど想像できません。デリバリーの仕組み以前に、情報そのものがデジタル空間に存在していなかったのです。大手が入ってこなかったのは投資対効果の問題だけでなく、この「情報のアナログ性」を埋めるコストに見合わなかったからだと、今なら分かります。

 

 

 

 

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「1000人の熱狂的ファン」に刺しに行く、という考え方

私がマーケティングで一貫して大事にしているのは、「広く浅く」ではなく「狭く深く」刺さるビジネスをつくるという考え方です。全国1.2億人のうち1%を獲るより、5万人のうち10%に本気で愛されるほうが、圧倒的に再現性が高い。これは石垣島だけでなく、都市で証明されたモデルを地方に持ち込む「タイムマシン経営」の発想とも重なります。

 

ただし、この考え方には一つ大きな壁がありました。狭い市場に深く刺さるマーケティングは、本来ものすごく手間がかかるということです。地域ごとに言葉遣いを変え、住民の生活動線を理解し、口コミが生まれる場所を一つひとつ押さえていく。これは大手が真似したくても真似できない、しかし小さな会社にとっても骨の折れる仕事でした。

 

例えば、同じ「配達が遅い」というクレーム一つとっても、都市部なら「早くしてほしい」という単純な不満ですが、島では「今日は台風だから多少遅れるのは仕方ないが、それならそうと一言連絡が欲しい」という、天候・人間関係・生活リズムが絡んだ複雑な期待に変わります。この温度感を理解して初めて、狭い市場は「深く」刺さるのです。しかし、この温度感を汲み取る作業を、限られた人数のスタッフだけで24時間続けるのは、どうしても限界がありました。

 

 

 

 

 

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AIエージェントが変えるのは、「手間」の壁

ここで今、私が強く意識しているのがAIエージェントの存在です。AIエージェントというテクノロジー自体、世に出てきてからまだ日が浅く、正直なところ自社のオペレーションに本格導入し、リリースするところまではまだ至っていません。ただ、色々な使い方を試している中で、これまで人手でしかできなかった「狭く深いマーケティング」の部分、つまり地域ごとの反応を見ながら発信内容を微調整し、問い合わせに答え、口コミを拾って次の一手に反映するというサイクルを、AIエージェントが担えるようになるのではないか、という手応えを感じ始めています。

 

専門用語を使わずに言えば、これまで「一人の担当者が本気で向き合わないと成立しなかった狭い市場」に、AIエージェントというもう一人の担当者を増やせる可能性が見えてきた、ということです。人口5万人の島でも、5000人の熱量の高いファンと日々やり取りをしながら関係を深めていく。これを人手だけで続けるのは限界がありましたが、AIエージェントが定型対応と一次分析を引き受けてくれるようになれば、人はより人間にしかできない判断に集中できるはずです。

 

例えば、先ほどの「台風で配達が遅れる」というやり取りも、AIエージェントが天候情報と過去の対応履歴をもとに、一次連絡と説明を先回りして行い、人間はイレギュラーな判断や、本当に困っているお客様への個別対応だけに集中する、という役割分担が今後は実現できるのではないかと考えています。人口5万人の島では、こうした「一件一件への丁寧さ」の総量が、そのままブランドへの信頼になります。AIエージェントは、この丁寧さを維持したまま規模を広げるための、いわば「もう一人の現場スタッフ」になり得るのではないか。今はまさに、そうした仮説を手探りで検証している段階です。

 

ここで大事なのは、「何でもAIエージェントに任せる」ということではありません。自動化していい部分と、人がきちんと関わるべき部分を、意図的に線引きすることだと思っています。私たちのサービスは「島コンシェルジュ」という名前を掲げている以上、お客様への丁寧な対応、つまりカスタマーサポートの本質的な部分は、これからも人が担うべきだと考えています。加盟店に一軒ずつ電話をかけて「今日は営業していますか」と確認し、出なければ実際に歩いて見に行く、というあの泥臭いやり取りも同じです。この一件一件への向き合い方こそが、狭く深い市場での信頼を生んでいるからです。一方で、注文データの集計や請求処理といった事務作業、あるいは「営業時間は何時までですか」「配送エリアはどこまでですか」といった簡単な問い合わせへの一次対応は、AIエージェントに任せられる余地が大きいはずです。さらに、確認の電話が何日も取れていない店や、キャンセル率が急に上がっている店があれば、AIエージェントがそれを察知してスタッフにアラートを出す、という使い方も考えられます。ただし、そこから先の実際の電話や店への訪問は、あくまで人が担う。定型的な事務処理と簡単な問い合わせ、そして異常の察知はAIエージェントに預け、コンシェルジュとしての丁寧な対応と現場への一歩は人が引き続き担う。この線引きこそが、AIエージェント時代における「狭く深く」のかたちだと考えています。

 

 

 

地方だからこそ、AIエージェント経営の実験場になる

大企業が入ってこない市場だからこそ、狭く深いマーケティングが機能する。そして、そこにAIエージェントを組み合わせることができれば、これまで「人手が足りないから諦めていた」地方の事業機会が、もう一度開き直せるのではないかと感じています。石垣島は人口も市場も小さいからこそ、こうしたAIエージェント活用の仮説を、リスクを抑えながら検証できる実験場だと考えています。

 

大きな市場でいきなりAIエージェントを本格導入するのは、失敗したときの影響も大きく、経営者としてはどうしても慎重になります。しかし人口5万人、ユーザー数10000人規模の市場であれば、うまくいかなかった場合の損失も限定的です。小さく試し、勝ちパターンが見えてから都市部や他の地域へ展開する。これは、以前フードデリバリー事業で実践した「狭く深く」の考え方と、まったく同じ構造です。

 

大手企業が入ってこない市場、限られた予算、少ない人数。地方の事業は制約だらけに見えます。しかし私は、この制約こそが、AIエージェントという新しい経営資源を試すには最適な条件だと考えています。失敗しても被害が小さく、成功すればそのまま横展開できる。石垣島でうまくいったモデルを別の島へ、別の地域へと広げていくのと同じ発想で、AIエージェント経営のノウハウも、地方から都市へ逆流させることができるはずです。

 

私の講演テーマでは、こうした地方発のマーケティング事例と、AIエージェントをまだ試行錯誤しながら自社の「狭く深く」にどう組み込もうとしているか、そのリアルな検討過程をお話ししています。

 

 

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瀬沼健吾(せぬまけんご)
瀬沼健吾(せぬまけんご)
S&K Holdings株式会社 代表取締役

小中高をインターナショナルスクール、大学をトロントで過ごしたバイリンガル。商社での10年間のグローバルビジネス経験を経て、MBA取得を機に起業。以降、15社以上の起業に携わる連続起業家として活躍している。

 

 

 

 

人口が少ない地域だからこそ見えてくる、マーケティングの本質があります。「狭く深く」刺さるビジネスとは何か。そこにAIエージェントを組み合わせることで生まれる可能性とは何か。講演では、石垣島でフードデリバリー事業を立ち上げ、人口5万人の島でユーザー数10000人超を獲得した実体験をもとに、地域密着のニッチ戦略とAIエージェント活用のリアルな検討過程について分かりやすく解説いたします。地方創生・マーケティング研修、DX推進セミナー、経営者向け講演会などでご活用いただけます。ご依頼・ご相談はSpeakers.jpまでお気軽にお問い合わせください。

 

 

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