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結婚、出産、育児、介護。女性の人生には、働き方を選び直す「分かれ道」が何度も訪れます。そしてその選択の多くは、本人も気づかないうちに「お金」で決まっています。
20代・30代を中心とした女性のライフプラン相談に携わってきた中で強く感じるのは、働き方を減らす選択をした方の多くが、それを生涯のお金の見通しを持たないまま決めているということです。目の前の保育料や手取りだけを見て選んだ働き方が、数年後のキャリアや老後の年金に大きな差を生むこともあります。
本コラムでは、女性が働き方の分かれ道でどのように判断しているのか、そして企業がその判断をどう支えられるのかを、2026年10月に撤廃された「106万円の壁」にも触れながら解説します。
女性の働き方には「分かれ道」が何度も訪れる

女性が働き方を選び直すタイミングは、ライフイベントのたびに訪れます。
- 結婚:配偶者の扶養に入るか、今の働き方を続けるか
- 出産・育児:育休後に復職するか、時短にするか、いったん離れるか
- 子育て期:保育料や教育費と、働く時間のバランスをどう取るか
- 介護:仕事を続けながら親を支えられるか
さらに、制度の変化もこの選択に影響します。2026年10月には、パート・アルバイトの社会保険加入をめぐる「106万円の壁」(月額賃金8.8万円以上という要件)が撤廃され、加入の基準は「年収」から「週20時間以上働くか」に変わりました。配偶者に扶養される人の年金制度である「第3号被保険者制度」についても、国の検討会で議論が始まっています。
一人ひとりのライフイベントと、変わり続ける制度。この2つが重なる場所で、女性は働き方を決めています。
分かれ道で「働き方を減らす」選択が起きる理由
1,目の前の数字だけで判断している
育休明けに時短勤務を選ぶとき、パートで扶養内に収めるとき、多くの方が見ているのは「今月の手取り」や「保育料を払うといくら残るか」です。一方で、働き続けた場合の生涯収入の差や、将来受け取る年金の差は目に見えません。見える数字だけで比べれば、働き方を減らす方が合理的に見えてしまいます。
2,制度を「なんとなく」で理解している
相談の現場では、「扶養内で働いています」と言いながら、それが税と社会保険のどちらの基準なのかを正確に知らない方が少なくありません。制度が変わっても、自分の場合どうなるのかが分からなければ、「今の働き方を変えない」ことが一番安全な選択になります。
3,働き方が家庭の中で決まっている
家事・育児の分担や配偶者の働き方など、働く時間は本人だけでなく世帯の事情で決まります。家族と話し合うための材料がなければ、選択肢を広げることはできません。
この結果、企業では育休後の離職や時短勤務の長期化、管理職候補の不足、パート従業員の働き控えによる人手不足が起きています。本人が望んでいないのに働き方を減らしているとすれば、それは本人のキャリアにとっても、企業の人材活用にとっても大きな損失です。

企業ができる3つの支援
支援1:ライフイベントの「前」に、お金の見通しを届ける
働き方を決める場面になってから情報を集めても、判断は目の前の数字に引っ張られます。若手社員向けの金融教育や、育休取得前の研修などで、ライフイベントごとに必要なお金と、働き方による違いを早めに伝えることが効果的です。
支援2:働き方の選択肢ごとに「生涯のお金」を見える化する
フルタイムで続ける、時短で働く、扶養内のパートで働く。それぞれの選択で、毎月の手取りだけでなく、生涯の収入や将来の年金、病気や出産のときの保障がどう変わるのかを並べて示します。年収の壁についても、自社の企業規模と所定労働時間に照らして「当社で働く皆さんに関係する基準」に絞って伝えれば、誤解による働き控えを減らせます。
支援3:働き方を選ぶための対話の機会をつくる
研修で終わらせず、個別に相談できる場や、家族と話し合うための資料を用意します。管理職が部下のライフイベントに向き合えるよう支えることや、時短正社員・正社員登用などキャリアの道筋を示すことも欠かせません。従業員が納得して選んだ働き方は、定着にもつながります。
最後に
女性が働き方を減らす選択は、本人が心から望んだものであれば尊重されるべきです。問題は、お金の見通しを持てないまま、その選択をしてしまうことです。判断に必要な数字と対話の機会を企業が用意することで、女性社員は「お金が理由で人生の選択肢を諦める」ことなく、自分に合った働き方を選べるようになります。それは人材の定着と活躍を支える、人的資本への投資でもあります。
お金の知識は、贅沢をするためのものではなく、人生の選択肢を守るためのものです。結婚しても、子どもを持っても、親を支えることになっても、自分の望む働き方と生き方を選べること。その土台となる金融教育を、学校や家庭だけでなく、多くの女性が人生の大半を過ごす「職場」から広げていくこと。それが、女性一人ひとりの未来を、そしてこれからの社会を支える力になると信じています。

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ファイナンシャルプランナー(CFP®)、株式会社メヴィリエ代表取締役。金融商品を販売しない独立系FPとして、20代・30代を中心に女性のライフプラン相談に携わる。2026年9月より厚生労働省「国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会」構成員を務め、年収の壁をはじめとする社会保障制度の議論にも参画。
本コラムで紹介した内容は、女性活躍や人材定着に取り組む企業の方だけでなく、これから結婚・出産・育児を迎える方や、ご自身の働き方とお金に悩む方にとっても、気づきの多いテーマではないでしょうか。
女性のキャリアは、なぜ「お金の見通し」で左右されるのか。企業は、従業員の働き方の選択をどう支えられるのか。
講演では、数多くのライフプラン相談の現場で得た知見をもとに、年収の壁・第3号被保険者制度の動向と、ライフイベントを見据えた働き方とお金の考え方について、分かりやすくお話しいたします。
企業の女性活躍推進研修、若手社員向け金融教育、育休前後の社員向けセミナー、管理職研修、自治体・団体の講演会などにご活用いただけます。
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