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『VIVANT』から学ぶ!
「本音」は比較すると見えてくる
―表情から相手のニーズを考える技術
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TBS日曜劇場『VIVANT』第2シーズン第14話(2026年8月16日放送)に、次のようなシーンがあります。
主人公の乃木が、警視庁公安部の佐野部長に電話をかけ、「新庄(公安の捜査員)が死亡した」という情報と、「野崎(公安の捜査員)が別班員の拉致に関与していた」という情報を順に伝えます。佐野部長の受け答えの様子を監視カメラが録画。後日、別班が保持する分析AI「ハヤト」が、その映像から佐野の表情を解析します。
AIハヤト:まず新庄の死亡を聞いた時の反応だ
――「新庄が死んだだと?」と反応する佐野の解析結果が画面に映し出される。
AIハヤト:想定外の反応で間違いない。佐野は心の底から驚いている。続いて野崎の方を。
――「拉致を実行させたのは、野崎です」という乃木の報告を受けた佐野の反応を解析する。画面には「95.8% 虚偽」と表示される。
AIハヤト:先ほどのベースライン反応と比べ、変化のタイミングが遅く…
別班の司令官:一目瞭然。説明を聞くまでもありません。佐野は野崎が別班員を売ったことを既に知っていた。そう断定して差し支えないでしょう。
私は、このシーンを監修しました。
佐野部長が「野崎の関与を以前から知っていたのではないか」と推測する場面です。
ところでこのシーン、ドラマのストーリー上、都合よく作られたものでしょうか。
そんなことはありません。
もちろん、現在のAIがドラマのように表情から「95.8%虚偽」と正確に判定できる、という意味ではありません。
ここで注目していただきたいのは、AIの性能ではなく、ハヤトが使っている「比較する」という考え方です。

一つの表情ではなく、「違い」を見る
「新庄の死亡」を初めて知らされたとき、佐野は驚きの反応を示しました。これは、佐野にとって本当に予想外の情報を聞いたときの反応、いわば比較の基準となる反応です。ハヤトは、この反応をベースライン(基準値)として取得します。
一方、知りたいのは、「拉致を実行させたのは野崎だ」という情報を佐野がすでに知っていたか否か。
そこでハヤトは、佐野が初めて情報を知ったときの反応と、野崎について知らされたときの反応を比較します。つまり、一つの表情だけを見て「嘘だ」と判断しているのではありません。「本当に初めて知ったときの反応」と「疑わしい情報を聞いたときの反応」の違いを見ているのです。
実際、犯罪捜査やインタビュー研究の世界でも、ある人物の比較可能な状況での反応と、本当に知りたいことを質問をしたときの反応の違いを検討するという考え方があります。しかし、この「比較する」という視点は、虚偽検出だけのものではありません。日常やビジネスのコミュニケーションにも活用できるのです。
「比較」で見える好み

例えば、懇親会や接待の席で、相手の食べ物や飲み物の好みを知りたいとします。相手は必ずしも、「これは好きです」 「これは苦手です」とはっきり言ってくれるとは限りません。そこで、一つの料理を食べているときの表情だけを見るのではなく、複数の料理を食べているときの反応を比べるのです。
私が関わったあるビール選好実験では、実験参加者に3種類のビールを試飲してもらい、そのときの表情を分析しました。その結果、参加者が最も好んだビールを飲んでいるときに、唇を上下からプレスさせたり、唇を口に巻き込む表情が最も多く生じる傾向が確認されました。
こうした唇の動きは、味わっているときに生じる表情であることが知られています。ポイントは、「唇を動かしたかどうか」だけではありません。どのビールでもこの表情をする可能性はあるのです。しかし、3種類を比べたとき、どのビールで最もその反応が強かったか。比較したからこそ見えてきた違いなのです。
テレビ番組でも使った「比較」観察法
ここでもう一つ、テレビの話。私が、バラエティー番組の「ギャラを奪い合う」という企画に出演したときのことです。
あるアイドルの方が、A~Hの8区分に分けられた家具量販店の店内に、その日のギャラを3か所に分散して隠しました。そのうち1か所はダミーでした。私が隠し場所を見つければ、そのギャラを私が獲得し、アイドルの方はその分ノーギャラになる、という企画でした。
「お金を隠したのはAエリアですか?」 「お金を隠したのはBエリアですか?」 …… 「お金を隠したのはHエリアですか?」と順番に尋ねられているときのアイドルの表情を観察しました。
その結果、3か所中2か所の隠し場所を当てることができました。
これも、一つの表情だけを見て判断したわけではありません。質問の際、どのエリアのときに反応が変化したかを比べていたのです。
そう、これも「比較」です。
営業・商談でも「違い」はヒントになる
ビジネスシーンで応用してみましょう。
営業や商談で、顧客に3つのプランを提示したとします。
「Aプランは○○円です」 「Bプランは○○円です」 「Cプランは○○円です」
AとCでは真顔なのに、Bプランを説明した瞬間だけ、嫌悪表情が一瞬生じたとします。

嫌悪に限らず、感情が動いたということは、その情報が本人にとって何らかの意味を持っていた可能性が考えられます。そこで、AやCと比較して、「Bプランの何かが、この顧客にとって気になる要素だったのではないか」という仮説を立てます。
嫌悪という感情は、不快なものから距離を取りたい、取り除きたいという動機と関連します。ここから、「Bは嫌がられた。だからAかCを勧めよう」だけで終わらせるのは、少し早いかもしれません。むしろ、「Bプランについて、何か気になる点はありますか?」 「条件の中で、変更した方がよいところはありますか?」と尋ねてみる。
価格なのか、内容なのか、契約期間なのか。何が相手の反応を生んだのかがわかれば、Bプランの一部を変更することで、むしろ魅力的な提案に変わる可能性があるのです。
表情は「答え」ではなく、「問い」のきっかけ
重要なのは、「この表情だから、この人はこう思っている」と決めつけることではありません。見るべきなのは、
いつもと比べてどう違うのか。
AとBではどう違うのか。
どんな話題のときに表情が動いたのか。
その「違い」から相手の気持ちやニーズについて仮説を立て、必要に応じて質問して確かめるのです。人は、いつでも明確な言葉や、わかりやすい表情で自分の気持ちを表明してくれるとは限りません。しかし、その人を取り巻く条件や状況、選択肢を比べながら微細な表情変化を観察することで、
「ここに何か気になることがあるのではないか」 「もう少し聞いてみた方がよいのではないか」
という手がかりを得ることができます。
表情は、相手の心の「答え」そのものではありません。
しかし、相手をより深く理解するための「問い」を与えてくれます。
『VIVANT』のAIハヤトが行ったのも、一つの表情を見ることではなく、反応を比べて、その違いを見ることでした。
営業、商談、採用、マネジメント――。
私たちの日常のコミュニケーションでも、相手を決めつけるのではなく、よく観察し、比べ、そして尋ねる。そうすることで、相手の本音にグッと近づくことが出来るのです。

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『裏切り者は顔に出る』(清水建二著)

1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論・コミュニケーション論を学ぶ。国内有数の認定FACSコーダとして、表情・微表情・しぐさなどの非言語コミュニケーションを専門に、科学的研究に基づく研修・講演・コンサルティングを行う。『科捜研の女』『VIVANT』など、テレビドラマや情報・バラエティー番組の監修・企画協力・出演も多数。
本コラムで紹介した「比較して見抜く」という視点は、テレビドラマの監修エピソードだけでなく、日々の営業・商談やマネジメントの現場で相手の本音を探りたい方にも、通じるものがある内容だと思います。相手が本当に伝えたいことは何か。表情の奥に隠れた「違い」に、どう気づけばよいのか。営業・商談における顧客ニーズの見極め研修、採用面接における人物評価研修、マネジメント研修、接客・カウンセリング講座など、幅広い場面でご活用いただけます。ご依頼・ご相談はSpeakers.jpまでお気軽にお問い合わせください。
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