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いじめを認める強さを育てる
子どもに法律を届ける理由
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「いじめは悪いことだと思いますか」と尋ねれば、ほとんどの人が「はい」と答えるでしょう。それでも、いじめはなくなりません。悪いことだと知っているだけでは、目の前で起きていることをいじめだと認め、止めたり、助けを求めたりする行動に必ずしもつながらないからです。私は、道徳的に「仲良くしよう」と呼びかけるだけでなく、何が人の権利を傷つけるのか、困ったときにどのように助けを求めるのかを、具体的な言葉で学ぶ必要があると考えています。
私には、小学生のころにいじめられた経験と、いじめる側に回った経験の両方があります。当時は、自分がされていることをうまく説明できず、大人に相談しても状況を変えられませんでした。一方で、自分が誰かを傷つけたときには、それを後輩に対する正しい注意だと思い込み、いじめだと認められませんでした。この経験から、被害を訴える言葉と、自分の行為を振り返る基準の両方が必要だと感じるようになりました。
大学では「法教育を通じたいじめ問題解決」を研究し、慶應義塾大学在学中の2014年に『こども六法』の原型となる法教育副教材を制作しました。それが2019年に書籍化されました。難しい条文を覚えてもらうことが目的ではありません。法律が守ろうとしている価値を子どもに届く言葉へ置き換え、自分や相手の権利を考えるための道具として届けること。それが、私の研究と教育実践の出発点です。

いじめを認めるところから始める
いじめをする人が、自分の行為を「悪いこと」だと思っているとは限りません。「ふざけていただけ」「相手にも原因がある」「間違いを直してあげた」と考えていることがあります。周囲も、深刻に受け止めることで関係が壊れるのを恐れ、「よくあること」と済ませてしまうかもしれません。こうして、苦痛を受けている人がいても、その出来事はいじめとして扱われないまま続いていきます。
だから必要なのは、誰かを簡単に悪者と決めることではなく、起きている行為とその影響を見ることです。自分の意図が善意でも、相手が心身の苦痛を感じているなら、立ち止まらなければなりません。被害を受けた人が「嫌だ」「助けてほしい」と言えること、周囲がその言葉を軽く扱わないこと、行為をした人が言い訳の前に事実を受け止めること。講演タイトルにある「いじめを認める強さ」とは、そのための強さです。
また、被害を訴えた子どもに「相手も悪気はない」「あなたにも原因がある」と返せば、その後の相談をためらわせてしまいます。事実確認は必要ですが、まず行うべきなのは、その場で子どもの話を決めつけることではなく、安全を確保し、何があったのかを丁寧に聴くことです。
法律を助けを求める言葉にする
法律というと、違反した人を罰するためのもの、争いになったときに使うもの、という印象を持つ人もいます。しかし、法律には、社会が守ろうとしている権利や、してよいことといけないことの境界を、立場の違う人どうしで確かめる役割があります。その基準を知ると、つらい出来事を「自分が弱いから」と抱え込まず、「これは相談してよい問題だ」と捉え直しやすくなります。
ただし、法律を知れば、それだけでいじめが解決するわけではありません。記録や証拠がそろっていなくても、まず安全を優先し、信頼できる大人や専門機関に状況を伝えてかまいません。そのうえで、無理のない範囲で起きたことや日時をメモし、残っているメッセージや画像を保存できれば、状況を伝える助けになります。子ども一人に証拠集めや解決を背負わせず、大人が一緒に動くことが欠かせません。
出張授業では、年齢や学校の課題に合わせた身近な事例を使い、「どこからがいじめだろう」「この場面で誰に何を伝えられるだろう」と問いかけます。法律を脅し文句にするのではなく、相手の権利と自分の権利を同時に考え、相談につなげるための共通言語として扱います。

相談できる子どもと相談を受け止める大人を増やす
子どもが相談しないのは、困っていないからとは限りません。「信じてもらえないかもしれない」「話したらもっと悪くなるかもしれない」「大人を困らせたくない」と考え、言葉をのみ込むことがあります。大人が正解をすぐ示すことよりも、まず話を遮らずに聞き、本人の安全と希望を確かめ、必要な支援につなぐことが大切です。相談を受け止めてもらえた経験は、次に助けを求めるときの支えになります。
私の講演と授業では、児童生徒向けの「いじめを認める強さを身につけよう」で、被害を受けたとき、誰かを傷つけてしまったとき、周囲で見たときにできる行動を考えます。教職員・保護者・地域の方向けの「大人を動かす悩み相談術」では、子どもが相談をためらう背景と、相談を受ける側が整えたい環境を扱います。「こども六法の時代」では、現代の学校と子どもの権利を法教育の視点から捉え直します。
学校行事、人権教育、道徳、総合的な学習の時間、PTA講演会、教育委員会主催の教職員研修など、参加者と目的に応じて言葉や事例を調整しています。子どもが自分の置かれた状況を理解し、他者の権利を尊重しながら、必要なときに助けを求められるようにすること。子どもだけに強さを求めるのではなく、相談を受け止めて動ける大人と環境を増やすこと。それが、私が法教育を届ける理由です。

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『こども六法の使い方』(山崎聡一郎著)

自身のいじめ被害・加害経験から法教育を通じたいじめ問題解決を研究し、慶應義塾大学在学中に出版した『こども六法』は累計87万部超のベストセラーとなり新風賞を受賞。株式会社Art&Arts代表取締役として、法教育を軸としたオンラインスクール「こども六法スクール」を運営するほか、写真家・舞台俳優としても活動。
本コラムで紹介した「いじめを認める強さ」は、子どもたちだけでなく、相談を受け止める立場にある教職員や保護者、地域の方にとっても、心に留めておきたいテーマです。
なぜ、悪いことだと分かっていても、いじめはなくならないのか。子どもが安心して助けを求められる環境とは何か。
講演では、いじめられた経験といじめる側に回った経験の両方と、ベストセラー『こども六法』の著者として法教育を研究・実践してきた知見をもとに、いじめを”認める”ことから始める予防と対応の視点、そして法律を「助けを求める言葉」として活かす方法について分かりやすくお話しいたします。
児童生徒向けの人権教育や道徳の授業、PTA講演会、教職員研修、教育委員会主催の研修会、人権啓発講演会など、いじめ防止や子どもの権利について考える場面におすすめです。ご依頼・ご相談はSpeakers.jpまでお気軽にお問い合わせください。
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