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NO.025 川原礼子氏- 気遣い・コミュニケーション ー

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小さな気づかいが、組織と関係性を変える

 

 

 

 

 

 

川原礼子コラム画像

 

 

 

 

「またあなたにお願いしたい」「また、あなたと仕事がしたい」

 

営業やサービスの現場で、このような言葉をお客様からいただけるスタッフには、ある共通点があります。 私自身、25歳のときにアメリカで寿司店を開業し、その後8年間、現地で人気店の女将として店を切り盛りしてきました。 日本人は実年齢よりも若く見られることが多く、私も当時は「気の利く学生アルバイト」だと思われていたようで、チップを多めにいただいたり、他のレストランから「うちで働かないか?」と声をかけていただくことも頻繁にありました。

 

帰国後は、アメリカでの経験を活かし、リクルートのカスタマー対応部門などで18年間、顧客対応や人材育成の仕事に携わってきました。 こうした長年の経験を通して、私はある確信を持つようになりました。 それは、「お客様から支持される人に共通するのは、特別なスキルではない」ということです。

 

では、何がその違いを生むのでしょうか。
それは、一見目立たないけれど確実に伝わる、“小さな気づかい”の積み重ねなのです。

 

 

 

 

 

気づかいの最強の軸とは?

 

ここからは、接客、営業、社内コミュニケーションなど、あらゆる現場で信頼を生む「気づかいの力」について、私自身の実体験や研修・講演を通じた学びをもとにお話ししていきます。

まずは、研修や講演の冒頭で必ずお伝えしている「気づかいの軸」をご紹介しましょう。

それは、「自分がされてうれしかったことを、相手にもすること」。

一見、ごく当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、実は多くの人が見落としがちな大切な考え方です。

私がアメリカの寿司店で働き始めたばかりのころ、あるスタッフがとても人気で、すぐにお客様の方から名前を覚えられるほどでした。 彼女のモットーは、「頼まれる前にテーブルに行くこと」。

 

「たとえば、お茶のお替わりが欲しいのにスタッフが近くにいなかったら、不便ですよね?私なら、お寿司はたっぷりのお茶と一緒に食べたい。だから、呼ばれる前にお茶を差し替えるようにしているんです。 どうやってわかるかって? お客様がお茶を飲むときの湯のみの傾き具合を見れば、大体わかるんですよ。」

 

この話を聞いた瞬間、まさに「自分がされてうれしいこと」という気づかいの本質に触れた気がしました。 以来、私もお客様の湯のみの傾きを気にするようになりました。

 

ビジネスシーンに置き換えてみると…

・質問をしたときに、「いい質問をありがとう」と返してもらえた経験
・大事な日を覚えていて、「今日だったね」と声をかけてもらった
・困っていたときに、「いま、どんな感じ?」とさりげなく寄ってきてくれた

 

そんな、さりげないのに「心が動いた記憶」は、誰もが一度は経験しているはずです。

それらの記憶を、自分の言葉や行動に取り入れていくことで、次第に信頼されるふるまいとなり、やがて組織全体の雰囲気さえも変えていく力になると私は考えています。

 

もちろん、相手にとっての「うれしい」と、自分が感じる「うれしい」が異なることもあるでしょう。 でも、そのときは「これじゃなかったんだな」と受け止めればよいのです。 そこから、「相手にとって何がうれしいのだろう?」と考えるきっかけにしてみてください。

気づかいは、まず「やってみる」ことから始まります。

 

 

 

 

 

現場での事例:「また会いたい」と思ってもらう気づかい

 

ある営業チームの研修で、常に成績が下位だったスタッフがいました。 近くでモニタリングしていると、その人は「成約を取ること」や「実績を上げること」にばかり意識が向いていて、お客様が考えている最中でも構わず商品の説明を一方的に話してしまっていたのです。

 

そこで私は、「話しやすい人になること」に意識を向けるようアドバイスをしました。 すると翌月、彼は営業成績で全社3位に入る快挙を達成。 お客様からは「またあの人にお願いしたい」という声が届くようになったのです。

また、ある地方の旅館では、接客スタッフに対して「気づかいの基本」を継続的に伝えた結果、半年後には口コミサイトの評価が大きく改善し、ランキングも上昇しました。

 

気づかいとは、小さな「感じの良さ」の積み重ね。
「自分だったらどうされたいか?」という問いかけを持ちながら仕事に向き合えば、やがて会社へのエンゲージメントや主体性も高まっていきます。

 

そしてこの気づかいの力は、社外のお客様だけに向けられるものではありません。

むしろ、社内での報連相や上司・部下の関係など、日々のコミュニケーションにこそ、大きな変化をもたらします。

 

たとえば、報告のタイミングに悩んでいた部下に対し、「言いにくかったよね。でも、このタイミングで言ってくれて助かったよ」と一言添える。

あるいは、ミスを指摘する際に、まずは「何かあったの?」と相手の事情を聞く。

 

そんなふうに「相手の心の余白を尊重する伝え方」を心がけるだけで、職場の空気はガラリと変わります。

実際、ある企業ではOJTや1on1面談にこの考え方を取り入れた結果、新卒3年以内の離職率が50%以上も改善したという事例もありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づかいは文化になる

 

「気づかいは伝播する」──これは、私がこれまで数多くの現場で見てきた事実です。

まずは最初のひとりから。 その人のふるまいを見て、「私もやってみよう」と思った誰かが行動を変える。 それが静かに波紋のように広がり、やがて報告がしやすくなり、クレームが減り、ミスが減り、対話が戻ってくる。

こうした職場にこそ、「心理的安全性」が育まれていくのではないでしょうか。

 

気づかいは、制度やルールでは生まれません。
一人ひとりの意識と行動が、今日この瞬間から始められる、組織を変える力なのです。

私の講演や研修では、「相手の言葉を聴き、自分の言葉で相手に届く関わり方」をテーマにしています。 管理職、若手、営業、接客、カスタマーサービスなど、対象に応じて言葉の届け方を工夫しながら、体験を通じて「気づかいの力」を体感していただいています。

 

「またこの人にお願いしたい」
「またこの人と働きたい」

 

そう思われる関係性を育てる人を、増やしていきたい。
そして、そうした働き方が、働く人自身のモチベーションにもつながっていく。
それが、私の願いです。

 

小さな声かけ、小さな表情、小さなふるまい。
そのすべてが、相手の安心につながっているとしたら──。

 

今日、あなたが何気なく発したひと言が、誰かの心に温かく残っているかもしれません。

気づかいは、誰にでもできるけれど、つい忘れがちなもの。
だからこそ、日々の中で「自分がされてうれしかったこと」を、もう一度思い出してみてください。

組織と人との関係性は、そこから静かに変わり始めると信じています。

 

 

 

 

 

 

 

 

川原礼子コラム画像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『気づかいの壁』書影

『気づかいの壁 「気がつくだけの人」を「気が利く人」に変える、たった1つの考え方
著者:川原礼子
(ダイヤモンド社・2023/2/14)

 

 

 

川原礼子(かわはられいこ)
川原礼子(かわはられいこ)
企業研修講師/選ばれるコミュニケーション力育成講師

高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店を8年半経営。人気レストランの女将として顧客満足の奥深さおよび国籍の異なる従業員のマネジメントの醍醐味を味わう。帰国後、KDDIエボルバを経て、2005年に株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・ メール対応・責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。

 

 

 

 

 

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