
宇宙心理学の視点から見る宇宙旅行事前訓練の重要性
はじめに
2025年、待望の宇宙旅行事前訓練事業がついに実現します。私は、ヒューストン大学で宇宙心理学を学び、そこで得た知見と経験を元に、この画期的な事業に携わることとなりました。今回の訓練プログラムは、宇宙飛行士が日常的に行う「適応訓練」とは一線を画し、一般の方々が初めて宇宙に旅立つための心身を整えるものです。
この訓練を通じて、宇宙旅行における心理的・身体的な準備をすることは、ただの趣味や冒険ではなく、科学的にも深い意味を持ちます。
宇宙の無重力という「異次元」の環境
宇宙と地球で最も異なる点、それは「無重力環境」です。地球上では、私たちの身体は重力に引っ張られて生活していますが、宇宙においてはその引力がほとんど感じられません。国際宇宙ステーション(ISS)では、宇宙飛行士に毎日2時間の運動を義務づけていますが、その目的は、無重力環境での筋肉や骨の萎縮を防ぐためです。長期間宇宙に滞在することで、身体の筋力が低下し、地上に戻ったときには簡単な動作すら困難になることがあります。これが、宇宙旅行事前訓練での課題の一つでもあります。宇宙に向けての身体的な準備は非常に重要です。体の柔軟性を保ち、ストレッチや適度な運動で体を動かしやすくすることが、訓練の中で大きな意味を持ちます。無重力という環境に適応するには、身体が変化に対して準備されていなければなりません。
ストレス管理と人間関係の調整
宇宙旅行においては、物理的な環境だけでなく、心理的な側面も大きな要素となります。狭い空間に長時間閉じ込められる中で、仲間との協力やストレスの管理が非常に重要です。実際、ISSに滞在する宇宙飛行士たちにとって、長期間同じクルーと過ごすことは時に精神的な負担となり、相互の信頼や支え合いが欠かせません。そこで必要とされるのが、宇宙心理学に基づく「エネルギーの流れ」の理論です。宇宙心理学では、人間の思考や感情もまたエネルギーの一部と捉えます。私たちの内面のエネルギーが宇宙全体と共鳴し、ポジティブな考え方を持つことで、宇宙からもポジティブな影響を受けると言われています。宇宙という未知の空間での生活は、心の持ち方が非常に大きな影響を与えるのです。
食事やトイレの違い:地球と宇宙の生活のギャップ地球で何気なく行っている食事やトイレのような日常的な行為も、宇宙においては全く異なります。無重力下では、食べ物の管理や水分補給、排泄の方法も大きな課題となります。宇宙船内での狭い空間では、食事の準備やトイレの使用が煩わしく感じることがあるため、その対策を訓練の中で実践しておくことが大切です。こうした準備をしっかりと行うことで、宇宙旅行中の不安や不快感を最小限に抑え、よりスムーズに生活できるようになります。
睡眠の質:宇宙でも「休息」が重要
また、宇宙旅行中は睡眠の質も重要な要素です。無重力下での眠りは、地上での睡眠とは異なり、寝袋で固定して眠ります。ISS内は過多なCO2や機器類の騒音も睡眠の妨げになる可能性があり、地上の環境とは大きく異なります。そのため、睡眠の環境を整えるための訓練も不可欠です。長期間滞在する宇宙飛行士ほどではなくても、ストレスフリーな睡眠が、宇宙旅行者の宇宙滞在を健康的に支えるための基本となります。
ポジティブ思考が引き寄せる「宇宙のエネルギー」
宇宙心理学の観点から、私たちの思考や感情は「エネルギー」として宇宙と共鳴し、私たちの周りに起こる出来事に影響を与えるとされています。このため、ポジティブな思考を持つことは、宇宙旅行における重要な要素です。心の中にポジティブなエネルギーを持つことで、未知の状況や困難にも前向きに対応でき、宇宙旅行をより充実したものにすることができるのです。これまでの宇宙や極地での研究では、不安や抑うつ症状などのネガティブな感情にばかり注目していました。しかし、満足感、熱意、畏敬の念などのポジティブな感情は、プレッシャーのかかる環境で成功するために不可欠な要素ですと、メンタルヘルスチェックリスト(MHCL:Mental HealthChecklist)を開発したヒューストン大学(University of Houston)の心理学教授キャンディス・アルファーノさんの調査結果からも実証されています。
最後に
私は、ヒューストン大学大学院で心理学を学び、その後、宇宙ビジネスのAS21(Aero Space 21 century) をLAで設立し帰国後、JAXA広報部参事として日本の宇宙開発を世界に伝えてきました。これまでの経験を活かして、今回の宇宙旅行事前訓練プログラムが、未来の宇宙旅行者たちにとって有意義なものとなることを願っています。身体的、心理的、そして精神的に準備を整えることで、宇宙という新しい環境にスムーズに適応できるようにサポートしていきます。この訓練が、皆さんにとって宇宙旅行をより安全で充実した体験に変える手助けとなることを心から楽しみにしています。
(駿河台出版社・ )

Forbesの[日本の起業家50人][日本の女性起業家50人]に選ばれた。Who’s who2022年にノミネートされている。津田塾大学卒後、サントリー株式会社(現サントリーホールディングス株式会社)入社。Houston大学大学院で修士取得後帰国。
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