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高木豊 講演会講師インタビュー

1980年にドラフト3位で大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。
常に野球ファンを魅了し、惜しまれながらも現役を引退。
引退後は、野球解説に加え、CM・TVドラマの出演もこなすマルチぶりを発揮。
2003年にはアテネ五輪の守備・走塁コーチとして“JAPAN”のユニフォームにも袖を通す。
野球を通して学んだ組織論やコーチング、そして父親として子育てへの想いなど、話を伺った。

(text:伊藤秋廣、photo:吉田将史)

能力で人を選ばない

高木豊──主にどのような内容の講演を、どのような立場の方々にお届けしていますか?

 

高木豊:企業から求められて、いわゆる“組織論”をお話しさせていただきます。建設業界や保険会社など、歴史ある大手企業からお声がかかることが多いですね。具体的には、社員をいかにして、組織で機能できる人間に育成していくか、あるいは、どのような人間を役職者として抜擢すべきなのかといったテーマが中心となります。
そこにはある共通点があるんですが、社員教育という観点から、様々な事例を交えながらお話をさせていただいています。

 

──高木さんが講演でお話しされる“組織論”の概略を教えてください。

 

高木豊:まず、能力で人を選ばない、真摯にコツコツやっている人間の方が良いですよとお伝えしています。なぜなら、能力のある人間はとかく組織を軽視する傾向がありますので、能力優先で管理職を選んでいくとその組織は崩壊してしまう。バランスというのはすごく大切で、能力が有りつつ真摯にコツコツやる人間が良いという話になるし、そのためには教育が必要になってきます。

さらに、人の良いところを見ることができるような人間に育てないといけないという話もします。人間というのは、欠点ばかりに目が行って、指摘をするすることが多いけれども、組織というのは一人ひとりの強みで勝負していくもので、確かに修正は必要ですが、決して欠点で勝負するわけではありません。そういう意味で、強みを見出せるような人材が必要になります。そこは野球の世界と共通する点があると思っていて、やはり試合に負けると欠点や弱点が目につきますが、明日も試合がありますし、強みで勝負するためにはどうしたらいいのかと気持ちを切り替えなくてはなりません。球界でも欠点ばかりを指摘する風潮もあり、そういった前向きな議論ができない場合もあります。選手の欠点をあげつらうような悪口などがはびこっている。しかし、そんな組織が勝てるわけがないんですよ。委縮するだけで選手が本来の力を発揮できませんから。

 

 

組織では、相手を認めて可能性を見出す

高木豊──どのようにすれば相手の強みを見出すことができるのでしょうか。

 

高木豊:相手を認めることです。例えば、一般社員から係長や課長補佐へと昇進するとします。そうすると同期社員などからやっかみが出てきます。「あいつはこういう ところがあるから」と陰口を言う人が出てくるかもしれません。そういった場合に、上司といわれる立場の人間が「こういう良いところがあるから昇進したんだ よ」と周囲に認識させていくことが必要です。組織というのは、トカゲのしっぽ切りのように、悪いところを指摘しながら排除していこうとする傾向があります よね。指摘をすること自体は悪くありませんが、それが行き過ぎて、苛めのようになっていることもある。

 

野球の世界でも、例えば、現時点で は力がないけれども、将来的な戦力へと育成するためにと、目先の問題に対して目をつぶることもあります。可能性を見出しながら認めてあげることこそが、人 材教育の原点だと思うんです。もうひとつ重要なのが、他人の意見に安易に乗っからず、本質を語ることです。ミーティングでも上司の意見に安易に賛同する人 間はたくさんいます。そうするとモノの本質が見えなくなるし、そういった人間が次に上司という立場になると、部下に愛情を持てなくなって教育もしなくなっ てしまいます。なぜなら上しか見ていないから。結局、平たく言えば“ごますり”だけになるんですね。処世に長けているだけ。こういった人間にはモノの本質 の見方を教えてあげるべきでしょうね。残念ながらプロ野球界においても現在、ほとんどのコーチがそんな傾向にありますね。勝負の世界は契約社会ですから、 どうしても上の顔色を気にしがちです。下手すれば職を失ってしまいますからね。サラリーマンの社会では出世の妨げになるかもしれませんが、上司に逆らうと いうことを排除してはならないと思うんです。それを踏まえ、度量の大きな人間を上司として据えておかなければ、その組織の中で本質が育たないと思います。

 

──1980年にドラフト3位で大洋ホエールズに入団されますが、野球界に入って率直な感想などお聞かせください。

 

高木豊:正直言って、プロの世界がすごいなんて思ったことはありません。個人的にはすごいと思う選手はいましたが、プロがすごいなんて圧倒されているようでは、そこで生きていくことはできませんからね。入団した時には、とにかく3年で結果が出なかったらやめようと思っていました。大学を出て3年といえば、もう25歳になりますからね。その年齢になっても鳴かず飛ばずだったら、もう他のところで就職したほうがいいと思ったんですよね。3年間が勝負と思っていたので、プロってすごい!なんて感じる暇もなく、それくらい腹を据えてやらなければという意思を持って臨んでいました。当時は一切酒も飲まなかったし、誘われても断って帰ってくるような人間でしたから、よく付き合いが悪いなんて言われていましたよ。でも、3年スパンで目標設定していたので、人と飯を食ったり、酒を飲んだりする暇はなかったんですよ。設定した目標をクリアして、3年でレギュラーを確立させ、その後はシーズンごとに目標を設定し、良い成績を残そうと、給料分の成績を球団に返そうということばかりを常に考えていました。目標が達成されると給料があがる。給料があがると責任が増す。お金というのは責任の対価ですから、給料に見合った働き、そして言動とはどういうものなのだろう、ということを常に意識していましたね。

 

高木豊──その責任意識はどのような体験の中で育まれたのでしょうか。

 

高木豊:それはお金をもらう以前、アマチュア時代から自分の中にありましたよ。高校、大学の時にはキャプテンを任せてもらって、その中で責任意識が芽生えたのかもしれません。甲子園に出なくてはいけない、出たいという欲求や願望はあったけれども、結局出場はかないませんでしたし、大学の時も優勝できなかった。キャプテンという責任を預けられている立場としては、達成できないから、そこに反省が生まれ、何が足らなかったか考えたり、自分を責めたりしていました。

 

──現在は、プロ野球解説者としてご活躍されていらっしゃいますが、人に分かりやすく伝えるうえで心がけていることを教えてください。

 

高木豊:心がけているのは予測です。人間は占いが好きですよね。今日は良い日になるといわれたらワクワクする。それと同じように、「このバッターは絶対打ちますよ」と言ったら視聴者もチャンネルを変えないですよね。もちろん、そこにはしっかりした根拠は必要です。理由をしっかり示しながら解説をします。また、結果についてお話をするときには、なぜそのような結果に結びついたのかということはきちんと説明するようにしています。そこまで行くには必ず何らかの原因がある。心理的要因なのか技術的要因なのかを見極めて、しっかり伝えようとしています。伝え方については自分なりに勉強をしましたね。TVというのは視聴率が大事なんです。チャンネルが変えられないようにするためのテクニック論みたいなものを関係者と話す機会があって、そこからヒントを得ました。予測して話す手法もそんな流れから着想を得ました。出演時間が長くなって話すシーンが増えてくると、何度も同じフレーズを使い始めてしまうんですね。それで、語彙を増やそうと読書をするようになりました。さらに知り合いの大学教授に頼み込んで、聴講生として講義にも出席させていただきました。個人的な興味もありましたが、そこで人に本質を伝えることの重要性を学び、解説者として、あるいはコーチとしての仕事に生かそうと考えたんです。

 

 

コーチングは選手の特性に合わせる

──2001年ベイスターズの守備・走塁コーチに就任、2003年アテネ五輪、日本代表チームの守備・走塁コーチとして、日の丸のユニフォームに袖を通されました。様々な選手をコーチングされてきましたが、人材育成のポイントについてお聞かせください。

 

高木豊:アテネ五輪の時には、ご存知のように特殊なチームが結成されていますし、短期間の勝負となりましたので、とにかく結果を出すことに集中するようにと選手には伝えていました。目的が明確で共有しやすいということで、ある意味、“高校野球で甲子園を目指そう”という感覚に近いスローガンを掲げればよかったんです。ところが通常のプロチームというのは、もっとシビアなもので、自分の生活や家族のことを考えなくてはなりません。長丁場になりますから技術面だけでなく、メンタルも含めたコーチングを行う必要があります。私の場合は、まず選手との信頼関係の構築からはじめます。これがなければ何を言っても聞いてくれませんからね。いろいろなアプローチがあるとは思いますが、私の場合にはやはり優しさ、愛情から入ります。自分が“どれだけお前のことを思っているのか”という愛情が伝われば心開くし、信用してくれる。信頼関係が結ばれていれば、何を言っても叱っても大丈夫。助言を受け入れながら選手が向上できる環境ができあがります。

でも、そう簡単に信頼関係が構築できるわけではありません。相手の性格や生い立ちに合わせ人それぞれにアプローチを変えていきます。例えば、厳格な親に育てられた頑固な人間であれば、常に寄り添って、相手の頑なな心を溶かすところからはじめます。ずっとエリート畑を歩いてきた人間は多くの言葉を嫌うのでワンポイントでいい。プライドをくすぐってあげればいいんです。高校を卒業してプロになった選手と大卒でも接し方が変わってくる。人それぞれの性格や行動を分析して、特性に合わせて接し方を変えていくんです。

 

──そのような対人技術はどこで身につけられたのでしょうか。

 

高木豊:私は人間ウォッチングが好きで、普段から様々な人の行動を観察しています。なぜあの人はこういう行動をとったのか?そこにはこんな判断が、こんな考えがあったに違いないと、心の動きを読んでいくのが好きなんですよね。人の話を聞くときもそう。なぜ、このタイミングでこの言葉を使ったのか?とかね。言葉をかけるようなタイミングなどは、自分の子どもを育てながら培ったものかもしれません。コーチングと子育ては随分共通する部分があると思います。選手に対しても自分の子供のように愛情深く接していかなければ信頼されません。また、逆に親子だってずっと一緒に住んでいるから信頼関係が持てるかというとそんなことはなく、常に愛情をかけているからこそお互いが大切な存在になっていくのでしょう。いくら一緒にいても、虐待ばかりしていたら信頼関係など結べませんからね。

 

高木豊──信頼関係が結べないような相手には、どのように対処すべきでしょうか。

 

高木豊:無理をするのは良くないでしょうね。無理をしていることは相手にもわかります。でも、遠くからでも見ていることは必要です。例えば相手が何か成功をしたときに「お前、よく頑張ってんな」と、その一言だけかければいい。そうしたら相手は「俺のことを見てくれているんだ」と理解しますから。べたべたする必要はないんですよ。誰もがみな、同じ手法が通用するわけではないですから。中には人を寄せ付けないタイプの人間もいます。遠くから見守って、成功したとき、失敗時などポイント、ポイントで声をかけてあげることが大切ですね。自分と合わないから手放すのではなく、よく観察しておくことが大切です。

 

──高木さんと言えば、3人の息子さんがプロサッカー選手として活躍されていらっしゃいます。皆さん立派にご活躍されていますが、子育てにおいて父親としてどのように向き合ってきたのでしょうか?

 

高木豊:いろいろな愛情があると思いますが、べたべたせずに、とにかくこの子が一生懸命何かに向かえるよう、挫折しないよう、なおかつ自立できるようにとは心がけていました。それぞれの適性を様々な角度から見て評価して、チャレンジさせてあげるようにしていました。人間は環境の生き物ですから、家に本しかなければ本を手に取るようになるでしょうし、ボールがあれば手にとって投げるようになる、様々な可能性につながる環境づくりをしていました。

次男は、ずっとTVの料理番組を見ていたので、“見ているだけでなくて作ってみたら?”とレシピ本を買って与えてやった。そうしたら「俺は食べるのが好きだ」って(笑)。無駄になってもいいんです。でも、そこからわかることがあるし、見えてくることがあると思うんです。それは親からしても、子供からしても。やはり大切なのは観察することです。

教育現場やPTAの会合で呼ばれてお話をする機会も増えています。こういっては失礼かもしれませんが、そのような場所で話を聞いていると、親の対応や態度に問題があるようにも感じることがあります。子供の特性を理解しようともせず、ただゲームを与えてみたり、親としての自覚が感じられないような服装をしていたり行動をとっているような、とても未成熟な印象の親御さんもたくさんいますよね。最近は、メールやSNSを中心にコミュニケーションをとっている親子も多いと聞きます。それはまるで血が通っていない、寂しい関係のように思えて仕方がありません。実際に向き合って会話をしなくては、相手の本質など理解できないし、信頼関係など生まれるわけがないんです。“三つ子の魂”ではありませんが、親子も最初が肝心。親子の関係をしっかり確立しておかないと、後々まで引きずってしまいますよね。

 

 

失敗することで人間性が豊かになる

──講演会のタイトルに「成功と失敗で学ぶ大きな要素」というものがございます。高木さんが経験した成功体験で最も印象的なことをお教えいただけないでしょうか?

 

高木豊:成功って、まだわからないですよね。人生が終わった時点で、何が成功だったかは他人ではなく自分が決める。いくら大金持ちになって皆からちやほやされても、それが自分の本意でなければ、それは成功ではありません。それとは別の“成功体験”というものはもっとわかりやすい。野球の打ち方をこう変えたら打てるようになったとか、人それぞれにいろいろな成功体験がある。人間はみな、そういった成功体験を支えに、糧に生きていますよね。

でも、成功体験ばかりを重ねているだけの人はつまらないですよね。失敗したときのほうが勉強になりますし、人間性も豊かになる。例えば組織の中で失敗をしたとする。上司が度量のある人間だったら失敗を許し、それを糧にして頑張れといえるでしょう。人の上に立つ人間はそのくらいの器でなければと、失敗した部下も学び、そういう上司になりたいとも思うでしょう。むしろ失敗したときの方が信頼関係を結びやすいともいえます。弱っているときに声をかけてあげる。成功している時には人の話など聞きませんからね。確かに難しいですよ。何を言えば心に響くのか、どのタイミングが良いのか。それを考えることが上司自身の成長にも繋がるんです。

 

高木豊──高木さんが球界指導現場を取材して、この監督のここがすごい!このコーチのここがすごい!というものはありますか?

 

高木豊:野村克也監督ですかね。何事にも根拠があるんですよ、例えば1球目、キャッチャーがサインを出す。これは絶対に根拠があって、とりあえず“初球だからまっすぐいっとけ!”ではダメなんですよ。野村さんは物事の根拠を明確にしたうえで野球をやれと指導するんですね。ミーティングでも「なぜ、あの場面であの球を投げたんだ。その理由を述べろ」なんて詰め寄りますから(笑)。あまり厳格にやりすぎると人間って苦しくなりますから。そこは相手の特性に合わせてという、先ほどの話につながるんです。

 

──最近では江川卓さんとのトークショーも行っているとのことですが、通常どのようなトークを展開されていますか?

 

高木豊:野球での対戦秘話や「空白の1日」などをテーマとして、ご一緒にトークをさせていただいています。私が突っ込み役になって話を引き出しますが、江川さんは私としか一緒にやらないんですよね。単独でもやらない。あの人、よっぽど私のことが好きなんでしょうね(笑)。同じユニフォームを着たことがある人間に突っ込まれると腹を立てることもあるのでしょうが、私はずっと敵対する立場にありましたから、江川さんも気軽にお話ができるではないでしょうか。話すテンポも合いますし、とても楽しいセッションになりますよ。大変好評ですので、江川卓さんの組織論やモチベーション維持方法など、ご要望に応じて、わたしが引き出せるよう対応します。セッティングいただければ喜んで対応しますよ。

 

──最後に講演会でお会いする皆さんへ伝えたいことをお教えください。

 

高木豊:多少の着色が入っている大人たちが素直になって聞けるような、そんな話をしたいですね。ですから皆さんも素直に受け止めてほしいと思っています。講演の途中でお客さんに発言いただいたり、質問を受け付けたり、いじったりしながらアットホームに進め、そして最後に心温まるような講演にしたいと思っています。

選手時代、大スランプに陥ったときの話ですが、当時の私は傲慢だったがゆえに自分の心を閉ざして虚勢を張っていました。それに気が付き、心を開いて打席に立つようになったら面白いように打てるようになりました。その経験から、3人の息子たちにも「心閉ざすと人間の成長は止まる。素直になれ」と伝えています。心を開き、受け入れ態勢が整うと人の言葉がどんどん入ってくるんですよ。そうしたら、人は成長していく。そういったことが伝わるような時間にしたいと思っています。

 

高木豊

 

 

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