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三橋貴明 講演会講師インタビュー

急速なインターネットの普及によって、その新たなチャネルで活躍し広く知られるようになった著名人は多い。経済評論家・三橋貴明氏もその一人。大学教授や官僚OB、シンクタンクの研究員と違い出自に縛られることなく、自由な立場で、正しい定義づけと豊富なデータに基づいて情報を発信。
緻密な分析と高い確度に富んだ内容ながら、中小企業診断士として活躍してきた経験も踏まえ、専門用語や難解な概念を平易な言葉に置き換えて解説。様々な講演で「非常に分りやすい!」と評判を呼び、特に中小企業経営者層に高い人気を得ている。
そして、経済および経済政策の目的は、文字通り「経世済民」、世を經(おさ)め、民を濟(すく)うものとして、国民を豊かにする政策のあるべき姿を訴えている

(text:増田聖祥、photo:波多野匠)

ネットからデビューした評論家のさきがけ

三橋貴明──サラリーマン時代から、ネットを舞台に評論活動を行っていたんですね。

 

三橋貴明:中小企業診断士の資格を取得し、2008年11月に事務所を開設しますが、それ以前の2006年後半に、最初はヤフー掲示板において、韓国銀行の資料など各データに基づきながら、韓国経済の実態をレポートしていました。

そして、その年の末から、電子掲示板サイト「2ちゃんねる」でも投稿による評論活動をはじめ、反響をいただきました。
当時は、私が独自に作成している「国家のバランスシート」をはじめ、データに基づいて国民経済を語る人が少なかったため、非常に好評で、改めて一冊の本を上梓し、評論家デビューを果たしたのです。当時は、ネットで注目され、本格的な評論活動をはじめた人はいなかったのではないでしょうか。

 

──主に、どのような企業・団体から講演依頼が寄せられますか。

 

三橋貴明:年間200回に及ぶ講演を開講させていただいていますが、法人会、商工会などをはじめ、全国の幅広い業種・職種から講演依頼を受けています。「公共投資を増やすべき」だと主張しているため、建設系のクライアントや、TPPに反対の立場をとっているためJAからの依頼もあります。

 

 

増税がデフレ脱却の足を引っ張る

──講演でも、アベノミクスに対する評価について話されることも多いのではないですか。

 

三橋貴明:アベノミクスとは、安倍晋三総理が推し進めている経済政策の組み合わせを表した言葉ですが、総理はデフレについて理解していないようですね。
2013年5月7日午前の衆議院予算委員会で、安倍総理は「デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられる」という認識を示したんです。要は、市中に流通しているお金の総量が足りないことがデフレの原因と思っているようで、日銀に依頼して通貨量を増やせばデフレ脱却できると。総理のブレーンも悪いのかもしれませんが、点数にしたら100点満点中30点ですね(笑)。

 

──デフレ脱却の基本とは。

 

三橋貴明:マクロ経済的にはGDP(国内総生産)を拡大させる、つまり所得の合計を増やすことです。ミクロ経済的には、実質賃金をアップさせることです。稼ぐ給料で買えるものを増やし、国民が富裕になることです。
2014年10月から2015年3月における実質GDPは、2期連続で年率換算でそれぞれ2%以上のプラスと報道されています。しかし、第二次安倍内閣が発足して20ヶ月以上、実質賃金はマイナスで、5%以上の落ち込みを表しています。これでは、経済政策として評価に値しないと言えますね(笑)。

 

──今日のデフレはどのような仕組みで起こっているのですか。

 

三橋貴明:バブル経済の崩壊後に、国民が消費と投資を減らして、借金の返済や、あるいは銀行預金を増やすことに躍起になったため、みなさんの所得が減り、現在のデフレに至るわけです。
消費と投資が行われなければ、所得は増えません。所得が減ればさらにモノを買わなくなるため、物価がさがり所得が減る。まさに悪循環、デフレスパイラルに陥るわけです。
つまり、所得の不足こそが、デフレの主要因なんです。そして、所得の不足は、需要の不足でもあるのです。要するに、名目GDPが足りないのです。みなさんが、モノやサービスを買った金額の合計、つまり需要の合計が名目GDPですが、これが不足しているのです。統計的に、需要の不足イコール所得の不足なのです。

 

──デフレ時なのに消費増税した悪影響も大きかったですね。

 

三橋貴明:需要を減らす政策ばかりを行っているにも拘わらず、増税ばかりしていては、デフレ脱却はできませんね。
日銀は、コアCPI(生鮮食品など価格変動の大きい品目を除いた消費者物価指数)でインフレ率をみていますが、2013年は一時的に1.4%にまで上がったんです。この勢いで2%のインフレ目標が達成できると思ったのですが、緊縮財政に切り替わり、政府の支出は削減され、補正予算も削られて、2014年4月の消費増税も重なり、今はゼロになってしまいました。

 

──2017年4月には消費税率10%の再増税が予定されていますが、大きな不安がありますね。

 

三橋貴明:経済成長は、人口の増加や価格の変動ではなく、生産性の向上で成されます。生産者一人あたりのモノとサービスの生産の拡大です。
生産性向上は、投資によってしか起こらないのです。設備投資、人材投資、公共投資、技術開発投資の4つだけが経済成長を導きます。
政府は、国債を発行したら、そのお金をもってモノやサービスに投資しなければならない。2013年年度は、10兆円以上の補正予算を組んで執行したんですが、2014年度は5兆円、15年度は現在のところ、3.2兆円しか予定されていない。
それなのに、2017年4月の消費税率10%の再増税が控えています。これでは評価のしようがないです(笑)。

 

 

所得の上昇こそが経済成長

──フランスの経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』がベストセラーになり、そこで提唱されている「資本利益率(r)が経済成長率(g)を上回る結果、所得格差、貧富の格差が拡大する」という意味を教えていただけますか。

 

三橋貴明:例えば、私が1000万円所持し、それを資本として経済活動をしたとしましょう。そこから毎年3%ずつ配当をおこない、年間30万円入ってくるとします。これを資本利益率とします。
その一方で、別な人の昨年の年収が1000万円で、今年は1020万円になったとしても、2%しか増えていない。
所得の上昇率こそが経済成長率にあたるため、資本利益率3%と経済成長率2%の差がそのままであったり、さらに拡大したりすれば、貧富の差が拡大するという仕組みなのです。
第一次世界大戦が始まる前は、資本収益率は5%、経済成長率(所得の上昇率)が2%ぐらいで、どんどん貧富の格差が開いていっていました。

 

──シンプルで合点のいく指標ですね。

 

三橋貴明:経済学者は、ピケティ氏の主張を否定する人がほとんどでした。資本には「限界効率逓減の法則」という考えがあります。資本を1投入したときにいくらの配当が得られるかを考えたとき、だんだん配当が下がっていく。つまり、資本利益率が下がっていき、結果的にいずれは所得の上昇率(経済成長率)のほうが上回るようになるはずだというものです。
しかし、ピケティ氏が過去200年間の歴史をさかのぼって調べると、1914年から1973年まで、つまり第一次世界大戦が始まったときからオイルショックの時期までを除くと、すべて資本利益率が経済成長率を上回っていたのです。

 

──それは、どのような理由が考えられますか。

 

三橋貴明:まず、グローバリズムがあげられます。経済学者たちが指摘した資本の限界効率逓減の法則は、資本が国内だけに留まって活動していれば当てはまるかもしれません。しかし、現在、資本は世界中を動いています。より収益性の高いところに移転していくのです。
政府が国民全体を意識して、国民全体を豊かにするという考えをもったときに、はじめて経済成長率(所得の上昇率)が資本利益率よりも大きくなるのです。累進課税強化などは、一番分りやすい施策ですね。富裕層を対象に、資本収益や所得からたくさん税金を徴収するわけですから。

 

──富裕層から低所得者層にお金が回る仕組みが必要なんですね。

 

三橋貴明:一時期、日本でもアメリカでも所得税の課税率の最大値が90%に達していたことがあり、そうなると所得の再分配機能が働きます。結果、低所得者層が引き上げられ、中間層が増えていきます。
1914年から1973年までは、世界中で頻繁に戦争が行われていたので、富裕層から低所得者層まで国民全体を考えた政策をやらない限り、総力戦となる戦争には臨めないわけです。
だからといって、戦争をやれといっているわけではありませんよ(笑)。政治家が、国民全体を考えた政策を実行すればいいだけの話なのです。ただ、ほとんどのケースで実行できていないことをピケティ氏は指摘しているわけです。

 

 

「グローバリズム」が世界規模のデフレを招く

──「グローバリズム」が進むと、経済成長率は鈍化するのですね。

 

三橋貴明:「グローバリズム」における利益の最大化は、資本の移転によってなされます。つまり、工場などの生産拠点を賃金の安い海外に移転することです。例えば、日本から中国に工場を移転するだけで利益は最大化されるでしょう。
1914年まで、厳密には1929年の大恐慌までの時代は「グローバリズム」でした。「グローバリズム」が進むと、資本利益率が経済成長率を上回るのです。
結果、投資家と消費者は利益を得ることになりますが、国内の労働者は不利益を被るわけです。つまり「グローバリズム」の本質は、所得移転に過ぎないのです。国内の労働者から途上国の労働者や投資家に所得移転しているだけです。

 

──グローバル市場における国際競争力強化と、個人消費を中心とした内需依存の経済成長は両立しえないと。

 

三橋貴明:「グローバル市場における国際競争力」とは価格競争力そのものです。価格競争力を引き上げるには、労働規制を緩和し、安い労働力を確保して、実質賃金を抑えることが有効です。国内の日本人が、単価の安い外国人労働者相手の賃金切り下げ競争にまきこまれたら、当然ながら国内の消費を拡大することなんかできません。

 

──真剣に、国内の需要を増やさないと日本はこの先立ち行かなくなりますね。

 

三橋貴明:日本だけではありません。世界的に立ち行かなくなってしまう。現在、世界規模のデフレに見舞われています。
世界中みんなでお金をつかわなければ、みんな貧乏になります。その点について、アメリカは理解しているようです。だからこそ、日本、ドイツ、中国に、財政出動を要請しているんですよね。
中国の李克強首相は、2015年1月に公共投資の拡大を宣言したのですが、その財源を確保するために、AIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立することになったわけです。
ドイツはいまだに分っていないようです。いまだに緊縮財政を実行しているせいで、ユーロ圏全体がデフレになっているんです。わかっているんだけれどもできないのかもしれませんね。

 

──それはユーロ圏全体で考えなければならない問題だからですか。

 

三橋貴明:当然、そうなります。単一国家が国債や通貨を発行するみたいなわけにはいかない。
ユーロ圏を日本に例えるなら、財政破綻寸前のどこかの県が地方債を発行しても、日銀は買い取ることはしません。
それと同じで、ドイツだけでなく各国の国債をECB(欧州中央銀行)が買い取ることはしない。破綻寸前のギリシャの国債ならなおさらです。
そうはいっても、現在は買っているかもしれません。ギリシャを破綻(デフォルト)させるわけにはいかないので。いずれにせよ、ECBは各国の政府から独立しているので、ドイツやギリシャ政府から、国債を買い取るように命令することはできないのです。

 

 

「講演後にいただく質問を楽しみにしています!」

──講演会でみなさんに伝えたいことはどのようなことですか。

 

三橋貴明:講演会で様々にお話しさせていただいていますが、私の発言・主張を信じてほしいという気持ちで臨んでいるわけではないのです。
もし、みなさんが「思考停止」に陥っているのであれば、それを解消したい。つまり、定義とデータに基づいて、経済を正確に捉え、考えるためのきっかけとしてほしいんです。
例えば、高度成長期は輸出依存度が高かったという先入観をお持ちの方がいらっしゃいますが、当時はGDPの7%に過ぎず、現在の約半分です。今よりも輸出に頼っていなかったのが高度成長期で、これは数字から明らかになります。
正しい理解をするためには、まず、輸出依存度とは何かと定義し、次に実際のデータを確認すること。そこで間違いに気付けば、「思考停止」から解放されるのです。

 

──何事も、定義とデータに着目することが基本なんですね。

 

三橋貴明:必ず、定義付けとデータ確認を行ってください。そうでなければ、テレビ等で間違った情報が流布されると、そのまま鵜呑みにして終わり。「思考停止」のままです。
定義やデータを調べたくても、例えば、中小企業経営者のように、一人であれもこれも仕事を抱えていて、勉強する時間が無い、やり方を知らない方はたくさんいらっしゃいます。
そうした方が、もう繁忙のあまり「思考停止」に陥っているのであれば、そこから抜け出すためのテクニックを学んでほしくて講演活動をしていると思ってください。

 

三橋貴明──講演で、特に心がけていることはなんですか。

 

三橋貴明:実は講演会で一番楽しみにしているのは、講演後や懇親会の会場でいただくみなさんからの質問です。
定義やデータを正しく理解している方は少ないわけですが、どういう点を理解していないのかを知らなければ、私としても説明のしようがないんです。
ですから、質問をうけることで自分自身にフィードバックし、話し方を変えるなど、その後の講演に生かしています。
講演会では、中小企業経営者さんに限らず、忙しくて経済の勉強をする時間のないみなさんにお会いし、お話できることを光栄に思っております。
そして、たくさんの質問をいただけることを、本当に嬉しく思っていますので、講演会場でお会いできることを楽しみにしています。

 

 

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