講演依頼や講演会の講師派遣なら相談無料のスピーカーズ Speakers.jp

世界累計259万部を超えるベストセラー『伝え方が9割』シリーズの著者として知られる佐々木圭一さん。博報堂でコピーライターとして数多くの広告制作に携わり、カンヌ国際広告賞など国内外の広告賞を受賞してきました。言葉が人を動かし、行動を変え、人生を変えることを徹底的に研究した佐々木さんは、企業・学校・行政など、幅広い分野でコミュニケーションの本質を伝える講演活動をしています。講演会では、相手を動かす言葉のつくり方、ビジネスや教育現場で活かせるコミュニケーションスキル、チームが成果を上げるための伝え方を、実例を交えながらわかりやすく解説。その内容は“明日から使える実践的スキル”として多くの受講者に好評を得ています。今回は、講演依頼のSpeakersでも大好評の佐々木圭一さんに、言葉の研究に至った背景、伝わる技術の本質、そして言葉で人と社会を変えるというビジョンについて迫りました。
(text:高田晶子、photo:遠藤貴也)
佐々木圭一 私の父はシステムエンジニアで転勤族だったので、私も幼少期から転校を繰り返していました。なかなか友達ができない小中高時代を経て、大学に進学します。大学時代は機械の研究をしていたのですが、人とコミュニケーションを取ることが苦手だったので、当時は機械相手のほうが楽でした。大学院に進み、いよいよ就職活動をする際に、今後どんな人生を送りたいのか、改めて考え直してみました。そこで出た結論は、「このまま人とコミュニケーションできない人生は嫌だ」ということ。そこで、コミュニケーションができる仕事に就きたいと思い立って入社したのが広告会社でした。
佐々木圭一 確かにそうですね。ただ、その時は強烈に「ここで頑張らなきゃ、一生後悔する」と思ったことを覚えています。博報堂に入社して、コピーライターの仕事に就いたのですが、実際にキャッチコピーが書けるかといったら全く書けない。もちろんプレゼンテーションもすごく苦手。1日300~400のキャッチコピーを書き続けて、それらが何も採用されることはなく、捨てられ続ける毎日を送っていました。本当に大変だし、つらいと思いながら仕事をしていましたね。ただ、コピーライターという肩書きが入った名刺を貰った時に、すごく嬉しかったんですよね。
佐々木圭一 私は自分のキャッチコピーが何も採用されないながら、テレビや映画で見たり、本で読んだり、街の広告を見たりして、世の中にある「なんかいいな」と思う言葉をメモし続けていました。ある時、そのメモを見返していたら、「あれ? この言葉とこの言葉って似てないか?」と気が付いたのです。例えば、ドラマ『踊る大捜査線』に登場するもっとも有名なセリフ「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ!」や、シドニーオリンピックでの柔道の谷亮子選手(当時は旧姓の田村)の名言「最高でも金、最低でも金」には、会議室と現場、最高と最低という両極端な要素が入っています。最初は「たまたまかな?」とも思ったのですが、世の中に正反対の言葉を入れている名フレーズって、結構あるものなのです。そして、これはもしかしたら法則性があるのかもしれないと思うようになりました。
佐々木圭一 確かにそうかもしれないですね(笑)。それまで私は「言葉は才能だ」と思っていました。今でも言葉やコミュニケーションは才能やセンスだと思われがちですが、実は技術、もしくはレシピみたいなものがあるんです。
今まで仕事柄、ものすごい数のプレゼンテーションをしてきましたが、「こういう風に言うとうまくいく、うまくいかない」という事例が山のようにありました。たくさん失敗をしてきた中で、たまに成功することがあって、「成功した時って、何をどうプレゼンしたっけ?」ということを中心にまとめていきました。要はデータを取って、統計を出して、うまくいった事例だけを抽出した。すると、キャッチコピーのみならず、どのように伝えたらうまくいくかという“技術”を見つけられたのです
佐々木圭一 そうなんです。私はコピーライターとしてうまくいかず、すごく悩んだが故に、自分が得意な理系分野にあえて置き換えて法則性を見つけました。とにかく私は多くの人に「コミュニケーションは学べるものだ」ということを知っていただきたいと思っています。一般的に日本ではコミュニケーションが学べると思われていないのですが、実際、アメリカでは小学生からコミュニケーションの授業があります。自分と考え方が違う時、相手に対してどう言えば納得してもらえるかということを、小学生から学びます。座学もあれば、実践する授業もある。だから、アメリカ人は大人になった時にコミュニケーション能力が総じて高い。これは料理などと一緒で、一度でも炒飯を作ったことがある人ならまた炒飯を作ることができますが、一度も作ったことがなければ、材料も手順も何もわからない。経験したかしていないかだけなんです。それでは、なぜ日本でコミュニケーションの授業がないかというと、日本においてコミュニケーションはセンスだと思われているからです。例えば、古来より短歌や俳句などは「天才が素晴らしい言葉を紡いでいる」など、一線を画すと思われていた経緯があります。
佐々木圭一 でも、「実はこうやると上手く伝わる」という確実な方法があるのです。ビジネスシーンなら、上司と部下、同僚同士、クライアントや取引先という大きく分けて3つの関係があります。基本的にはその3つの関係ごとにコミュニケーションがうまくいく7つの法則があって、実際に上司と部下などという設定を出して、課題をやってもらうというのが、私の講演になります。
元々はビジネスで使えるように作ったのですが、プライベート、例えば家族間のコミュニケーションにも使えるし、気になる子をデートに誘うなど、もうちょっと全般的に使えるようまとめて本にしたものが『伝え方が9割』(ダイヤモンド社/初版2013年)です。日本で100万部以上、世界でも100万部以上売れた本は3冊あって、1つが経営の神様・稲盛和夫さんの『生き方』、もう1つが近藤麻理恵さんの『毎日がときめく片付けの魔法』で、もう1つが『伝え方が9割』になります。
佐々木圭一 そうですね。企業が採用で一番大切にしていることは、コミュニケーション能力だとよく言われます。確かにコミュニケーション能力があるほうが、仕事では即戦力になる。営業ならコミュニケーション能力のある人の方が営業成績を上げられるだろうし、営業でなくとも、社内のやりとりなどがスムーズで仕事がうまくいきやすい。企業がコミュニケーション能力が高い人を採用したいのも当然と言えば当然なのですが、採用される学生側からしたら、そもそもコミュニケーションを学ぶ機会なんてなかったのに、いきなり就職活動の時にコミュニケーション能力が重視されるなんて、たまったもんじゃありません。ただ、企業としてもすでにいる社員のコミュニケーション能力に関して、困っている表れでもあると思うのです。
佐々木圭一 「伝え方」は、「自分が言いたいことをどう言うか」ではなく「いかに相手のことを想像できるか」が重要です。「伝える力」というと、自分の意見を押し付けるようなイメージがあって、主張の強い人の方がコミュニケーション能力があると誤解されがちなのですが、実は「相手が何を大切にしているか」が伝え方の大きなポイントでもあります。私が仕事で一番重きを置いているのは、相手の頭の中を想像することです。
例えば、子どもに「勉強しなさい」と強く言えば勉強するのかというと、素直に勉強する子どもはほぼいません。では、どうしたら子どもが勉強するかというと、「“一緒に”勉強しよう」と言うことです。それは、子どもに勉強を教えるということではなく、同じテーブルで違うことをしていてもいいから、一緒に作業する時間を作ること。それだけで子どもが勉強してくれる可能性は高まります。
ここで大切なのは、“一緒に”ということです。学生時代に「一緒にトイレに行こう」という友達はいませんでしたか? そんなにトイレに行きたくはなくても、「まぁ誘われたから行こうかな」と思いますよね。だから、それは大人になってからも同じで、「珈琲買いに行かない?」と言われると、ものすごく珈琲が飲みたいわけでもないけど、「まぁ行くか」となる。みんな“一緒に”って嬉しいものなんです。これはチームワーク化という相手が自らやりたくなるように促す伝え方の技術のひとつです。
佐々木圭一 自分が言いたいことがある時に、すぐに言いたくなってしまうとは思うのですが、1回立ち止まって、相手がどう考えるかを想像することです。
特に、Z世代の若者と上の世代のコミュニケーションは、かなり異なります。上の世代が言いたいことをそのまま言ったとしても、子どもに「勉強しなさい」と言うのと同様に、相手は素直に言うことを聞きません。逆に人間関係が悪化してしまうケースも多いでしょう。仕事終わりに「今日飲みに行こうか」と若い部下に言ったら、「それは仕事ですか?」と聞かれたりする時代です。自分とは育ってきた環境が違う相手なので、それは仕方のないことです。例えば、部下が焼き鳥好きだったとしたら、「焼き鳥が美味しいと評判の店を見つけたんだけど、今度行ってみない?」と言えば、部下だって「それは行きたいかも」と思うわけです。要は「飲みに行く」という同じ行動でも、伝え方ひとつで結果が違ってくるのです。
佐々木圭一 基本的に同じです。そこで、どんな場面でも非常に使えるキーワードが「ありがとう」という言葉です。会社で誰かが何かをしてくれた時も、タクシーで目的地到着後に運転手さんにも、お風呂を洗ってくれた家族にも、「ありがとう」はどんな相手にどんなタイミングで言っても違和感がない。しかも、「ありがとう」は人と人との距離がちょっと縮まります。すると、その相手との会話もうまくいきやすくなります。オフィスでも「ありがとう」の数が多い部署の方が、コミュニケーションがうまくいっているケースが多いですね。意識的に使っていきたい言葉です。
佐々木圭一 そうですね。オンラインで仕事をする人は通勤時間がなくなり働きやすくなるという利点もあると思うのですが、細やかなニュアンスは伝わりにくくなります。私はオンラインの講演やコミュニケーション研修の仕事もやらせていただくのですが、その際はなるべくオーバーリアクションを心掛けています。対面なら軽く頷くだけでも「この人はきちんと理解しているな」と判別できるのですが、オンラインで画面を通した途端に、軽い頷きでは全く反応していないように映ってしまいます。ですから、オンラインの時ほどリアクションを意識した方がいいですね。
佐々木圭一 私はそうでもないと思っています。むしろ、世の中のコミュニケーションはどんどん良くなっていっているなと感じています。
一例を出しますと、私は自分の事務所に来客用の紅茶を常備しています。ネットで100個のティーパックを購入したのですが、個包装されていないティーパックが袋にひとまとめになっているものが届いた。瞬時に「うわっ! 安かったから買っちゃったけど、しまったな……」と思ったのですが、箱に「個包装にしていない分、いい茶葉を使っています」と書いてあるのを見つけた。そこで私は「いい茶葉は嬉しいな」と思ったんです。そして、改めて考えてみると、個包装をわざわざひとつずつ破るのはゴミも増えるし、その作業が面倒臭い。個包装にしているからって、劣化する・しないには関係ないだろう。そしたら、個包装じゃない方が断然便利です。しかもいい茶葉で安い。むしろいいじゃんと思い、100個ひとまとめのティーパックを定期購入するようになりました。それってまさに伝え方だと思うんです。受け取った人が「いいね」と思うような言葉が世の中に増えてきていますよね。
佐々木圭一 主に「YESに変える技術」ということをお話させていただくことが多いです。つまり、「自分がどう言えば、相手がYESと言いやすくなるか」ということですが、これはビジネス上、最重要なうえに難しいとされる課題です。「こう言えば、100%YESと言われる」わけではないのですが、私の講演で学んでいただいた技術を使うと、YESと言われる可能性が大体20~30%はUPします。
具体例を出しますと、言われたらやるけれど、言われたこと以外はやらない部下がいたとします。自分はその部下に「自発的に仕事して」と言いたい。でも、そのままダイレクトに「自発的に仕事して」と言うと、その部下は「うわっ、嫌な上司!」と反発して「異動したいな」「転職しようかな」と思うかもしれない。パワハラだと騒がれる可能性だってある。それでは何と言えばいいのかというと、「君には期待しているから、君の思うようにやっていいよ」「君がどんどん進めちゃっていいよ」なんです。「期待している」という言葉は認められたい欲という伝え方の技術を使っています。人は期待されると嬉しくなって、相手の求めに応じてもいいかなという気持ちになるものです。部下は「期待されているし、頑張ろう」と勝手に奮起してくれる。要は「自発的に仕事して」と同じことなのですが、伝え方ひとつで全然印象が違いますよね。
こうした技術が7つあるので、講演の前半は座学で学んでいただき、座学だけだと自分のものになりづらいので、講演の後半では具体的な3つのお題を出させていただくので、実際に自分で伝え方を考えて書いてもらうという実践的なことをやっていただきます。
佐々木圭一 どんなにいい講演を聞いたとしても、人って忘れてしまうものです。直後は感動して覚えていたとしても、1週間くらい経つと「なんか役立ちそうなこと言っていたけど、何だったっけ?」となってしまう。しかし、自分からアウトプットすると非常に身に着きやすい。私もいろいろと試したうえで、一番身に着きやすい方法は、聞いていただくだけではなく、講演のなかで、ワークで体験してもらうことだと思うに至りました。
1回きりの講演だと90分くらい。研修という形になると、全6回、または全12回など。実際に1か月試してもらい、レビューして、また試して……と6か月ほど繰り返すと、きちんと身に着くと思います。
佐々木圭一 はい。義務教育のうち1年、いや半年でもいいので、コミュニケーション教育が導入されたら、劇的に日本人のコミュニケーション能力が改善すると思っています。きっと社会に出た時に活躍しやすくなりますし、仕事だけではなくて、友達との会話、異性をデートに誘う時などにも役立ちます。それこそ結婚する若者も増えるかもしれない。争いの回避法もわかるので、義務教育期間中にコミュニケーションの授業を導入できるよう、研究を進めています。これを読んでくださった人の中に日本の教育に関わる方がいらっしゃったら、ぜひお手伝いしたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

相談無料! 非公開の講師も多数。
お問い合わせください!
Speakersでは無料でご相談をお受けしております。
講演依頼を少しでもお考えのみなさま、
まずはお気軽にご相談ください。