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トップアスリートから一般の方まで幅広く指導を行い、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化も担う、フィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一さん。テレビや書籍でも活躍し、科学的根拠に基づいた運動指導と心身のセルフマネジメント法に定評があります。今回のインタビューでは、目標を達成するために欠かせない「継続力」の育て方、日常生活に取り入れやすいトレーニングの工夫について伺いました。講演依頼のSpeakers.jpでも大好評の中野ジェームズ修一さん。講演では、企業の健康経営や働く人々の生産性向上に役立つ実践的なヒントを数多く紹介しています。
(text:高田晶子、photo:遠藤貴也)
中野ジェームズ修一 私はもともと水泳選手でした。周りに優秀な選手がたくさんいると、自分はこのレベルには到達できない、オリンピックには行けない実力だということがわかってきます。ただ、私はずっと水泳しかやっていなかったので、まずは水泳のコーチになる道を選びました。
しかし、私は3歳から泳げたので、泳げない人の気持ちがわからなかった。コーチの仕事では選手育成だけではなく、業務の合間に子どもや高齢者の水泳教室も受け持ちます。そこで、コーチの仕事に向いていないと思った出来事がありました。クロールの息継ぎができないおばあちゃんに対して、私は「水面から口を出せば、酸素があるんだから吸えるはずだ」と思うのですが、それができないと言われても理解ができないのです。教え方もわからないので、コーチを続けるのは難しいと思いました。それがコーチを辞めて、パーソナルトレーナーを目指すきっかけになりました。
中野ジェームズ修一 21歳の時にアメリカにいたのですが、自分がトレーニングをするためにパーソナルトレーニングのジムに通い、トレーナーを付けたことがありました。すると、半年間で自分のオーダー通りの体になりました。当時はパーソナルトレーナーという仕事があること自体が日本ではまだ周知されていなかったこともあり、私も「こんな仕事があるんだ。かっこいいな」と思ったくらいで、自分がまさかパーソナルトレーナーになるとは思っていませんでしたが……。
中野ジェームズ修一 いえいえ、全然順調ではなかったです。そもそも、日本ではパーソナルトレーナーという仕事自体がありませんでした。私は2000年にアメリカから帰国して、某有名スポーツジムに「パーソナルトレーナーをやりたい」と直談判しに行ったのですが、「それはできない」と言われたんですね。「まず、そうした形態の職種がない。さらに、月会費をお客様からいただいているのに、さらにお金をもらうことはできない。ボランティアでやってくれるのならいいけど……」という話をされて、けんもほろろに断られました。
中野ジェームズ修一 そうなんです。パーソナルトレーニングはできないと言われたので、仕方なくそのスポーツジムのスタジオで、グループレッスンを担当していました。1回500円で、筋力トレーニングやストレッチなどを教えるワンコインレッスンを始めたのですが、周りからは「絶対に流行らない」と言われていました。最初は4人くらいのお客様しかいなかったのですが、どんどん増えていって、最終的に40人くらいのお客様が集まってくれるようになりました。
中野ジェームズ修一 ワンコインレッスンを始めた時に、フィットネス関係のライターをされているお客様がいました。私は「単純に筋力トレーニングだけをしていても、体は変わりづらい。でも、ストレッチや毎日の食事などを総合的にきちんと行うことによって、体が変わっていきますよ」という“前説”をレッスン前に行っていたのですが、そのライターさんが「面白い」と言ってくれて、取材をしてくれたのです。宝島社発行の雑誌の「日本のスポーツ業界を変える変革者10人」という特集記事の1人に選んでいただいた。それが2002年です。そこから書籍の話が来て、今や120冊くらい出すまでになりました。
中野ジェームズ修一 いえ、それが最初は全然話せなかったんですよ。話すことがすごく苦手で、どうしたら得意になるのかを考えた時に始めたのが、同じテーマを何回も話せばいいということ。例えば、今週は「たんぱく質について」話しをすると決めます。私は一か所だけでワンコインレッスンをしていたわけではなく、いろいろな店舗に赴いて、月曜日から日曜日まで毎日レッスンを行うので、どの店舗のレッスンでも、「たんぱく質について」の話をします。だから、週初めの月曜は、話が一番へたくそ(笑)。火曜、水曜と話すうちに、お客様がどういうところに反応するかもわかってきて、話の要点も把握できてくる。週終わりの日曜が、一番上手く話せます。そして、また新しく、今週は「太もも裏のハムストリングスの柔軟のやり方や効果」を話そう、などと新しいテーマを設定して、1週間話すという流れを繰り返し続けていたら、話すことが苦手ではなくなっていきました。最初は毎回テーマを変えていたのですが、話す場所が違うなら聞いている人も違うのだから、1つのテーマで1週間話せばいいということに気が付いてからは、すごく楽になりましたね。
中野ジェームズ修一 私に直接オファーが来たのではなく、アディダスの契約トレーナーになったことで、いろいろなアスリートとの繋がりができました。スポーツジムで働き始めて数年後です。ライザップさんが世に出てきてから、パーソナルトレーニングという概念が浸透しましたが、当時はまだ一般の人たちがパーソナルトレーニングを受けるということはありませんでしたね。
中野ジェームズ修一 卓球の福原愛選手ですね。もともと私はトレーナーを始めた時から「メダリストのトレーナーになる」ことを目標に掲げましたが、福原選手が2012年に開催されたロンドン五輪でメダルを取って、夢を叶えてもらいました。メダルを取った瞬間は私も会場にいましたが、本当に感動しました。福原選手本人はメダルを取って喜び、表彰式やメディアの取材などを終えて、時間が経つとそれなりに熱も冷めてくる。私と直接会って話す時には、ある程度冷静だったんです。しかし、私は福原本人に会った時にはもう大号泣で、あの“泣き虫愛ちゃん”に「泣きすぎだ」って笑われてしまって(笑)。
今でも、自分がこれまでやってきたことが正しかったのだと報われた気持ちになったことを覚えています。自分ではきちんと勉強して正しいと思っていることをやっているけれど、果たして自分の考えや指導が正しいかわからなかったし、不安ではありました。結果が出るかどうかで評価される業界なので、結果が出せなかったら、どんなに正しいことを言っていても、信用されません。そういう意味では、福原選手が私の指導が正しかったことを証明してくれました。
中野ジェームズ修一 それはすぐにはわからないですね。ただ、私が福原選手を見始めた2009年の段階で、福原選手はフィジカルトレーニングを全くしていなかったんです。ウォーミングアップや準備運動なども全然していませんでした。それでいて、日本を代表する選手にまで上り詰めているので、伸びしろしかありませんでした。福原選手は私が指導につくまでにオリンピックにも出場していましたが、メダルに一歩届かない。そこで、メダルを取るには何かを変えなくてはいけないということになり、私がつくことになったのです。
それは、青山学院大学の駅伝チームも同じことでした。箱根駅伝で5位くらいにまではなっても、優勝争いには届かない。根本的に何かを変えなければ、現状からブレイクスルーできないと考えた時には、フィジカルトレーニングに立ち返ることが非常に多いのです。
中野ジェームズ修一 青学もアディダスがスポンサーをしていて、私はアディダス経由でトレーナーをすることになりました。それが2014年の話で、原晋監督も何かを変えないといけないと思っていた時だったようで、監督はフィジカル専門ではなかったこともあり、私が指導をすることになりました。その翌年2015年に青学は箱根駅伝で初優勝しました。
中野ジェームズ修一 青学の場合は、福原選手と違い、トレーニング自体はしていました。初めて練習を見に行った時に、準備運動から始まって、体幹のコアトレーニングなどもやっていたのですが、理論上成り立っていないことばかりをやっていたんです。
準備運動に関しては、専門的なことを理解できていない内容と順番でした。この順番で動かすと、関節の動きが悪くなるから、それでは体は動かない。コアトレーニングに関しては、陸上は前にしか進まない競技なのに、明らかにやっているメニューがサッカーなどの横に移動したり回転したりするコンタクトスポーツのトレーニング法でした。
中野ジェームズ修一 大学スポーツでは、学生が本で読んだ知識などをもとに、自分流のトレーニングをしていることが多いので、仕方のないことなんですよね。最近ではプロのトレーナーがつく大学も増えてきましたが、まだプロトレーナーをつけるチームは少ないですし、学生コーチが学生をサポートするというクローズドな世界です。
中野ジェームズ修一 学生トレーナーが入ることが悪いわけではないですし、プロのトレーナーが入ったとしても、学生トレーナーも入れていかないと、トレーナー自体が育っていいきません。ですから、学生トレーナーを否定しているわけではないのですが、大学スポーツにもいろいろなジャンルのプロのトレーナーが入ることで、日本のアスリート界の底上げにもなると思っています。最近では、徐々にそういう大学が増えていっているので、いい傾向だと思います。
中野ジェームズ修一 まずは、頑張りすぎてしまう選手が多いんですね。強くなりたいと思う選手であるほど、トレーニングメニューを出して「週1日でいいからね」と言っても、週4~5日やってしまいます。やればやるほど強くなると思っているからこそなんでしょうが、頑張りすぎて疲労が抜けなくなってしまうことも。トレーニングはたくさんやることがいいのではなく、適正な頻度や量がある。そこをしっかり理解させることが大切ですね。
あと、「頑張り屋さん」の選手がいるのに対して、「楽して強くなりたい」という選手も少なからずいる。強くなることに直結するので、競技の練習は頑張れる。しかし、トレーニングはしたところで本当に強くなれるかどうか保障されているわけではない。できればトレーニングをしないで強くなりたいと思うものです。たまたまトレーニングをあまりやっていないけれど強い選手がいて、それは天才肌と言われる人たちですが、「あの選手もやっていないし、自分もやらなくても強くなれるんじゃないか」と自分で逃げ道を作ってしまう選手もいます。
中野ジェームズ修一 最初にトレーニングの重要性をしっかり説明しますが、基本的に私が一番大切にしているのは、やる気がない選手に対して「やりなさい」と強制しないこと。私もプロのトレーナーなので、私のことを必要だと思ってくれる選手と仕事をしたい。ですから、本人が気が付いてやりたいと思うまで待つようにしています。そこで、自分から来る選手は、やっぱり伸びますし、結果もついてきます。
中野ジェームズ修一 トレーニングをしている時、選手たちは想像以上に色々な話をしてくれます。「彼女ができた」「彼女と別れた」「彼女への誕生日プレゼントに何を渡せばいい」「卒業後は一般企業に就職した方が良いか」「社会人になっても、実業団で競技を続けるべきかどうか」など、とにかくプライベートな相談が多い。それはなぜかと言うと、社会との接点がないからです。普通の大学生ならアルバイトをして、様々な繋がりができるのですが、大学スポーツの選手たちは毎日学校と練習と寮の往復です。監督やコーチも中の人だし、唯一の社会との接点が私くらいなのかもしれないと思うと、トレーニング以外の会話も、きちんと対峙していかなければいけないと思っています。しかも、話を聞けば聞くほど、信頼感も得られるので、トレーニングも真剣に取り組んでくれるようになり、結果も出てくるので、一石二鳥ですね。
中野ジェームズ修一 私は色々なスポーツジムを回ってパーソナルトレーナーをしてきましたが、これまで自分で施設を持てるほど稼げる業界ではありませんでした。2011年に自ら「CLUB100」という施設を東京・原宿で立ち上げ、現在は神楽坂で営業しています。自分で施設を持つからには、100人の限定されたお客様に対して、効率の高いトレーニングを提供していくことにこだわっています。
店舗数を増やすとなると、スタッフを増やして、質を保ち続けなくてはなりませんが、それは難しい。ある程度システム化しなくてはならないのがどうしても嫌ですし、25年ほどパーソナルトレーナーをしていますが、ひとりひとりのお客様のトレーニングメニューはすべて違います。人によって、状況によって、毎回内容が変わるので、マニュアル化できないのです。
中野ジェームズ修一 マニュアル化できないことを教育すること自体、とても大変です。大体のパーソナルトレーニングジムでトレーナーは2~3か月くらいの研修期間でデビューすることがほとんどですが、「CLUB100」では、部活出身の大卒でも体育大卒でも、社内の研修と試験を厳しくしているので、最低でもトレーナーデビューするまでに2年はかかります。トレーナーは、人間としても専門家としても成熟していなくては、お客様と対峙できません。私の施設では100人の限定されたお客様のカルテは、電子カルテで共有されています。月に1回トレーナー全員でしっかりと情報共有をするカンファレンス制度も導入していますので、それぞれのお客様に正しいトレーニングをご提供できていると自負しています。
また、施設に先約がなくて、スケジュールさえ合えば、いつどの時間でも施設を使うことができ、24時間営業です。夜中0時過ぎに来る方もいますし、朝6時にトレーニングしたいという方もいる。お客様のご都合に合わせたタイミングでトレーニングをしてもらいたいということにも、こだわりました。
中野ジェームズ修一 ポイントは、内容・強度・頻度です。「どんなプログラムを実践しているのか」「どれくらいの強度で続けているのか」「どれくらいの頻度でやっているのか」の3点がすごく大切で、どれかが外れると、良い結果は出ません。例えば、週5日ウォーキングをしていても結果が出ない場合、頻度は足りていても、明らかに強度が足りない。いい内容のトレーニングでも、頻度や強度が足りなければ、良い結果が出ないのです。ですから、この3点を意識して、運動を続けていただければと思います。
中野ジェームズ修一 たくさんあるのですが、特に力を入れているのが、高齢者施設にジムを開設することです。機材を置いてある高齢者施設もありますが、どうやって使うかわからない方も多い。高齢者の方がパーソナルトレーニングを受けに外に出るのは難しいので、高齢者施設でパーソナルトレーニングを受けられるようにしたいんです。健康寿命を100歳まで伸ばすには、筋力トレーニングは必須ですから。
中野ジェームズ修一 筋力トレーニングは大切ですが、筋力だけつけたところで、健康になるわけではありません。有酸素運動もしなくてはいけないし、ストレッチもしなければ筋肉を傷めてしまう。食事のバランスもとらなくてはいけないですし、トータル的に考えていかなくては健康でいられません。何か1つだけやるのではなく、色々なことを意識しなくてはいけない。ですから、「これだったらあなたにもできますよ」と伝えることが大切だと思っています。
私は心理学も勉強していて、健康心理士の資格も持っているのですが、やる気を起こさせるには重要性の理解と自信が必要。まず、運動することの価値や重要性を伝えます。そこで、そのトレーニングがどれだけ重要かという理由をきちんと説明して。そして、「これだったら自分でもできるかも」と自信を持たせる。そこで初めて、「やってみよう」とやる気が出てくるのです。私はトレーナーである以前に、モチベーターでありたいと思っています。
中野ジェームズ修一 コロナ禍以降、テレワークを導入する企業が増えましたが、家から出なくなったことで運動量が減り、人間ドックで引っかかる社員が多くなったり、腰やひざが痛いと訴える社員も増えたりしています。あと、メンタル的な問題を抱えている社員も多くなり、休職するだけではなく、離職率も高くなっていく。そうした社員向けに健康経営の話をしてほしいという依頼が多いですね。現在も有名大手企業の数社と契約をしており、主にオンラインでの講演や役員のパーソナルトレーニング指導などを行っています。
大手だと年齢層もバラバラですが、スタートアップ企業など若い社員が多い企業からも依頼をいただきます。あと、4~5年の法人契約をさせていただいて、1か月に1回、全体でのオンラインミーティングの前に1時間もらっていて、みんなで一緒に体操をしたり、健康についての話をするという形態でお話しすることもあります。
中野ジェームズ修一 健康には食生活も大きくかかわってきます。どんなにいい運動をしていても、1日4000キロカロリーをとっていたら、健康には程遠くなってしまいます。たんぱく質を取っていなかったら筋肉ができないし、糖質カットしすぎると、筋肉は減っていってしまう。それじゃあバランスの良い食事をしましょうと言っても、野菜や肉をどれだけ取ればいいのか、数値で言われてもわからない。だから、私は「こういう食事が一番バランスは良い」というメニューを映像で見せていく。食べるイメージができて、ポイントさえ押さえれば、続けられますよね。
中野ジェームズ修一 私たちは「全ての人に結果を」という合言葉をもとに、先駆者としてのプライドを大切に活動しています。先駆者であるからこそ、正しいものを多くの人に届けたい。ただ、結果が出なくては意味がない。誰もが運動するからには結果を出したいですよね。結果にこだわるためには、正しいものを提供し続けていく必要があります。
日本のフィットネス人口は今、約3%と言われています。フィットネス人口を増やしていくためにも、様々な種目のアスリートも含め、様々な年代の一般の人たちにも広めていきたいと思っています。
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