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「週休3日で、成果をだす」──そんな働き方に真正面から挑むのが、元マイクロソフト業務執行役員であり、『クロスリバー』代表の越川慎司さん。大手通信会社や外資系企業で過労によるうつ病を2度経験。働き過ぎた末に心が折れた過去を原点に、無駄を徹底排除し、AIを活用して「週30時間勤務で成果を出す」組織モデルを確立。現在では39人の複業スタッフとともに、全国800社以上の働き方改革を支援し、注目を集めている。“ライフワークバランス”ではなく“ライフワークハーモニー”を掲げ、経営者から従業員まで全ての人々が健康的に働ける未来を描く、 Speakers.jp でも人気講師の越川さんに、これまでの軌跡と熱い思いを伺った。
(text:高田晶子、photo:遠藤貴也)
越川慎司 私は大企業と中小企業という異なる規模の会社、そして、国内事業とグローバルのいわゆる外資系企業のいずれも働いたことがあります。大企業、中小企業、国内、外資の企業形態で働いた体験から、講演会に来ていただくお客様、ご依頼いただく団体の方々にはバリエーションに富んだ話はできるかと思っています。
3回の転職を経て、2017年にクロスリバーという会社を立ち上げました。前職の日本マイクロソフトでは役員を務め、WordやExcel、Power Pointなどの事業部門の責任者でした。巨大な事業の売上目標をクリアした上で、自ら役員の立場を辞し起業に至りました。
越川慎司 私はNTTと日本マイクロソフトにいた時に、2回精神疾患になりました。うつ病だったのですが、2週間、睡眠時間を7時間取ったら両方とも復帰できたので、かなり軽度だったとは思います。つまり、それほど寝ていなかったということなんですね。
多くの方の場合、悩みがあったり、人間関係でしんどくなってしまったり、会社にフィットしなかったりしてメンタルに支障をきたしますが、私の場合は仕事が楽しすぎて、文字通り寝る間も惜しんで働いていました。昔は残業や徹夜をすると褒められるという文化もありましたし、私自身趣味もなかったので、生活すべてを仕事に費やしていたのです。ある日の朝、出社しようと家を出る時に、靴の履き方がわからなくなっていたんです。気が付いたら、左足が革靴で、右足がサンダルでした。
越川慎司 そうなんです。さすがに怖くなって、医療機関を受診したら「1回きちんと休もう」という診断が下されました。その後、NTTを辞めて、突然「アメリカに行こう」と思い立ち、英語も話せないのに渡米。そこで、アメリカのベンチャー企業に入社したのですが、その企業が敵対的買収をされてしまい、アメリカのマイクロソフトに入社することになりました。マイクロソフトには結果として11年半在籍したのですが、もともとはアメリカ本社に籍があり、ビル・ゲイツとも一緒に仕事をして、その後日本マイクロソフトに転籍した形です。
越川慎司 日本マイクロソフトに移り、本部長を務めていた時のことでした。その時も仕事が楽しすぎたのですが、時差が17時間あるシアトルの本社の人たちとやり取りするには、日本時間で夜11時や朝3~4時などになってしまいます。1年の1/3ほどはシアトルと日本を行ったり来たりもしましたし、1年中時差ボケのような感じで、睡眠障害になり、うつ病を発症しました。
ですから、思い悩んで辛くてうつ病になったのではなく、仕事が絶好調で評価されていた時に、ポキッと折れてしまったんですね。
越川慎司 家族も含めて周りには相当迷惑をかけました。このまま同じようなことを続けてまたうつ病を発症したら、3回目はもうないと思いました。残業や徹夜をせずとも、限られた時間の中で成果を上げる仕事の仕方は、マイクロソフトにいた時に教えてもらったので、それなら思い切って、週休3日の会社を作ろうと思い立ちました。
週休3日で週30時間しか働いちゃいけない会社を、今8年続けているのですが、売り上げが下がったらやめようと思っているんです。休むことがゴールではないし、週休2日より週休3日のほうが高い利益を上げられるモデルを作ろうと思っているので、徹底的に無駄なことは排除しています。社内会議も禁止しています。そういうことはAIなどITツールに任せられる部分も大きいですから。
越川慎司 そうですね。うつ病になったこと自体はすごく残念なことではあるのですが、働き方を見直す大きなきっかけにもなりましたし、ある意味チャンスでもありました。
2017年の労働基準法の改正で、企業は従業員に残業をさせると罰金を払わなくてはいけなくなりました。昨年には建設、医療、教育関係も含めた全業種、全業態に労働時間規制が入りました。だから、多くの企業が働き方を変えるチャンスだと思うんですよね。ただ、神経をすり減らして働いている方が多いのも現状です。しかしそのやり方だと、心身ともに続かない。だからこそ、ウェル・ビーイングの状態で売り上げ、利益を追求していくことが今必要だと、多くの方が気付き始めていると思います。
越川慎司 人手不足の解決策としては、大きく2つ。人を増やすか、人を増やさなくても仕事が回っていく方式に変えるかのどちらかです。
まず、人を増やすという点で、「優秀な人材に選ばれる企業」企業にならないといけない。ただ、今の新卒の企業選定理由に「福利厚生」を重視する学生は多くなっています。有休がとりやすい、資格が取れるなどですね。優秀な人材を入れるためには、企業がホワイト化しなければなりません。
また、私の会社のように、全員が複業(副業)というケースもあります。つまり、私の会社にいる39人全員はどこかの企業に所属していて、私の会社で複業として働いてもらっているのです。私がやっている規模の会社だと、一流のコンサルタントを雇うのは難しいのですが、「複業だったらどうですか?」と聞くと、仕事をしてくれるんです。優秀な人は余力もありますし、自分が所属している企業で給料を20%上げるなんて至難の業です。でも、副業なら月に5万円、10万円が余裕で稼げる。また、企業サイドとしては、社員ではなく、副業人材を業務委託で採用することで、人を増やすこともできます。
越川慎司 私の会社ではスタッフ39人で約800社とお仕事をさせていただいていますが、それはやっぱりAIを使うということが大きいですね。私には秘書がいなくて、そこを補ってくれるのがAIなんです。新幹線のチケットを取ったり、スケジュール管理をしたりなどはすべてAIがやってくれます。
人を増やすためには、例えば採用戦略を見直す、人が集まるような仕組みにする、正社員にこだわらないなどのことが挙げられると思いますが、人を増やさなくても仕事を回すには、徹底的に無駄なことやめたり、テクノロジーの力を借りたりすることが正解なんじゃないか。それが、8年に渡って私が会社を経営してやって気付いたことであり、約800社のご支援をしてわかったことですね。
越川慎司 「クロスリバー」の目的は、先ほど申し上げた通り、週休3日で売り上げ、利益が下がらなければ、社会・会社・社員がハッピーになることを実証するということ。全世界の企業を週休3日にすることがミッションです。契約上、私たちが支援しているとは言えませんが、様々な団体や大企業が、現在進行形で週休3日を導入しようとしており、それをコンサルティングさせていただいております。
越川慎司 生産年齢人口はこの7年ほどで約340万人が減ってしまいます。そんななかで人を増やすと言っても、増やしたところで質が下がってしまったら意味がない。
私は、約17万3000人を対象として、1週間にどんな仕事をしているかということを、ITツールやヒアリングなどで調査しました。大企業3割、中小企業7割です。そこで判明したのが、1週間の稼働のうち39%が社内会議に費やされていたということ。しかも、この社内会議の中の74%が会議のための会議でした。さらに無駄だと思ったのは、オンライン会議をしている中での41%が内職をしていたということ。聞いているふりをして、違うことをしていたということですね。つまり、働く時間の約4割を会議に費やしているのに結論が出ない会議、しかも聞いている社員が内職をしている会議は、当然辞めた方がいいですよね。私のような第三者がきちんとデータでお示しすると、例えば会議の時間が60分のところ30分にしよう、毎週ではなく月1回でいいという判断もできます。
また、調査の結果、メールやチャットのコミュニケーションに費やす時間が12%と出ています。例えば、会議のための派手なExcelや派手なPower Pointを作成しても、成果にはまったく関係なかったりもしますし、「メール見ていますか?」というメールほど無駄なことはない。今、Slackなどのビジネスチャットは多くの企業が導入していますが、これも皆さんに聞くと、無駄だと思っている方がほとんどです。
越川慎司 そうなんです。メールの出し方ひとつとっても、P(ポイント:要点)とR(リーズン:理由)とD(デッドライン:期限)、この3つを入れるだけで返答率が15%早くなることも検証結果で分かっているので、そうしたことを周知させるのも大切なことです。
残業禁止ということで、多くの企業が20時にオフィスの電気を消すのですが、そうすると近くのスターバックスやドトールやタリーズが混んでいる状態に。つまり、外で仕事をしている人が多くなるだけなので、まったく残業削減にはなっていません。だから、無駄なことをなくして、より生産的なことに時間を移行していくことが大切です。
越川慎司 私が個人的に「ワークライフバランス」という言葉に違和感を抱いています。バランスという言葉には、ワークを追及すると家庭が疎かになる、家庭に集中するとワークが疎かになるという、どちらかを優先させるとどちらかが犠牲になることを示している気がします。最近、私が出した『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)を書くために調査をしたのですが、世界のエグゼクティブはワークとライフの両方の質を上げることを考えているんです。どちらかを取るとどちらかが下がるのではなく、両方上げるためにはどうしたらいいかを考えています。
しかも、世界のエグゼクティブは自分のキャリアを長期的に考えていて、20~30代でがむしゃらに働くこともあるけれど、50代になったら休みを多くするなど、全体のハーモニーを取っている人がほとんどです。つまり、ワーク・イン・ザ・ライフなんですよ。だから、仕事においてバランスを考えるより、調和を取る方がモチベーションも高く持ち続けられる気がします。
越川慎司 日本人の素晴らしいところは実直さです。例えば、海外で社内会議が時間通りに始まる企業はないですし、集合時間の5分前には集まったり、通勤時間でも電車に乗るのに並んだり、地震が起きてコンビニの商品が棚から落ちた時に、みんなが拾って元に戻したりする文化は日本だけだと思います。これは世界に誇るべき文化で、集団行動として右向け右ができるし、実行能力は高い。規律を守るために階層型命令組織は必要ですが、これからは自分で考えて仕事をして、キャリアを作っていかないといけないので、分散型自律組織も必要になる。だからこそ、私は全従業員が副業する時代が来るのではないかと思っています。
越川慎司 私が出した著書『AI分析で分かった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)にもありますが、ビジネスパーソン1万8000人を定点カメラ・ICレコーダー・GPSで調査し、AI分析したところによると、トップ5%の社員の言動には、共通点が128個あります。例えば、文章の書き方や頷きが3.5センチ深いなどですが、その中で女性リーダーに共通する特徴のひとつに、「優秀な女性リーダーは喋り上手ではなく聞き上手」ということが挙げられます。
今、企業では上司と部下が共に感じて共に作っていく「共感・共創」関係になっています。「上司が言ったことを理解してやりなさい」ではなく、相手の意見も聞いて、相手の大変さもきちんと共感して、解決策を一緒に考えていかなきゃいけない。そうなると、上司は部下に寄り添わなきゃいけない。一方的に指示を出すだけでは、部下はついてこない。そこで、優秀な女性リーダーは7割部下に喋らせるんですよ。物静かで聞き上手な女性リーダーが圧倒的に成果を出し続けています。
越川慎司 あと、ビジネスパーソンに働き甲斐は何かということを聞くと、「承認、達成、自由」などのキーワードが出てくるのですが、優秀な女性リーダーに共通する大きな特徴として、「貢献」というキーワードが出てきます。つまり、「部下が成長している姿を見守るのが楽しい」「部下を手助けして、その部下がうまくいったことに対して、貢献したと感じる」ということです。
昔のリーダーは「俺の後ろについてこい!」という強いライオン型リーダーが多かったのですが、今は寄り添って支えてあげるリーダーの方が成果を出し続けています。優秀な女性リーダーでも部下に「自分はこれができない」と弱みを見せる人が多く、そうなると部下も弱みを見せやすくなりますし、一緒に頑張ろうという気にもなる。どちらかと言うと、ティーチャーよりコーチという感じが強いですね。答えを教えるのではなく、答えの出し方を一緒に考える。寄り添って、コミュニケーションをたくさん取って、相手を盛り立てていく。カンガルーは哺乳類の中でも一番コミュニケーションを取る動物なので、私はこうした方々をカンガルー型リーダーと呼んでいます。
越川慎司 いろいろな内容がありますが、最近多くてビックリするのが、大企業から「社員に向けて自律型キャリアの講演をしてください」という依頼です。企業側も辞めてほしくはないと思うのですが、企業側からもう「自分たちでキャリアを考えていきなさい」というような時代が来ているのかと思うと、驚くとともに素晴らしいことだと思います。
大企業がそうした姿勢になっているということは、やっぱり社会の変革期が来ているということです。生産性の高い国である北欧のノルウェーやスウェーデンやデンマークは、3年に1回くらいの頻度で転職しています。新しい成長産業に人が移るのは正しい社会の仕組みですし、雇用の流動性のためには、社会保障も必要ですが、大企業とはいえ1つの企業にずっと居続けることがなかなか難しいと気付いている方は、先ほど私が申し上げたように振り返りの時間を設けたり、自律やキャリアを考えてみたりすることが現実的かなと思います。
越川慎司 テーマとして多いのは、時間を生み出す「タスク・マネージメント」ですね。本を出した影響もあると思いますが、経営側からのご依頼では「働き方改革」「休み方改革」「謝罪の極意」といったテーマも多いです。
それもすべて、「ウェル・ビーイング」が今一番のキーワードになっている気がしています。資産としての従業員ということが、これから非常に重要になってくるので、従業員が精神的にも肉体的にも健康である状態を維持しつつ、ビジネスを営むということが昔よりも求められていますし、経営戦略の1つとして捉えられるようになってきた証拠でもあると思います。働き方改革は、どちらかというと残業無くすという引き算の話だったものが、これからは事業生産性を高めるためにダイエットした時間をどこに当てるのかに話題の重心が移ってきています。例えば、育成に充てるのであれば「学び方改革」になると思いますし、事業開発に時間を費やすのであれば「稼ぎ方改革」になる。働き方改革を一段落終えた企業が、次の方向性をどうしていったらいいのかを知りたい場合、我々が仕事をしている約800社のデータを基にエビデンスをご紹介することができるかなと思います。
越川慎司 なるべく多くの企業に「より少ない時間でより多くの成果を出す」働き方を実践してもらいたいです。それを実現するには、2つのアドバイスがあります。まずは、先ほども話しましたが、良かれと思ってやっていたことが無駄だと気付くことが大切なポイントです。例えば、金曜日の午後3時にメールの手を止めて、15分間でもいいので1週間を振り返る。振り返って成果に繋がったものをしっかりと見極めることが1つめのアドバイスですね。
その上で、仕事は会社軸、キャリアは自分軸っていう考え方をすること。大企業に入ってそのまま勤めあげたら、たくさん退職金をもらえた時代はもう終わりました。ただ目の前の仕事に取り組むだけではなく、その先に副業や週休3日という選択肢も見据えて、挑戦というよりかは実験をしていってもらいたいですね。
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