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辻野晃一郎 講演会講師インタビュー

VAIOなどソニーの主力商品を次々と生み出し、ソニー退社後はグーグル日本法人の社長を務めた辻野晃一郎氏。
イノベーティブなものづくりの会社から最先端IT企業へ、そしていま自身の会社で再びイノベーションを起こそうと世界へチャレンジしている。
世界の中で日本企業はどんなポジションなのか、日本が抱える問題とは、そしていま日本企業には何が必要なのかなど、
グローバル企業を知り尽くした賢人に話を伺った。

(text:伊藤秋廣、photo:中川淳)

デジタルやインターネットで日本は出遅れ、凋落がはじまった

 

――どのようなところから講演を依頼されますか?

 

辻野晃一郎 現在はありとあらゆる企業、大企業から中小企業まで、家電や自動車など製造業、地場の企業を対象にした地域振興、経済団体、商工会、金融機関や大学からもご依頼があります。講演は本業ではありませんが、できるだけご要望にお応えすることが使命だと思っています。

 

そもそも私が会社を起業したり、本を出版したり、講演をしたりするモチベーションがすべて集約されるところは日本がヤバいという危機意識なんです。日本は様々な分野ですべてが周回遅れ以上に遅れ始めています。私がソニーに在籍していた時代は、日本が経済成長、技術発展の先頭にいた時代でした。日本発のグローバル企業を世界中が尊敬していた時代は確かにありました。それと比べ、現在の状態は比較にならないほどに凋落しています。

 

どうしてそうなったのか?というところを自分なりに分析して、色々な答えを持っているつもりなので、警鐘を鳴らしながらできるだけ世の中にメッセージを発信し、個人の行動変革や企業の改革を促したいと思っています。ただ傍観者として警鐘を鳴らしていても説得力がないので自分自身も行動しようと考え、会社を起こしました。

 

――日本の凋落の要因は何だと思われますか

 

辻野晃一郎 顕著になったのはインターネットや物事がデジタルに移行した後ですよね。それまでは例えばソニーみたいなベンチャー企業がワンジェネレーションで売り上げ8兆円以上のグローバル企業として伸びていきました。時代が変わって隕石がぶつかったみたいにデジタルやインターネットの時代がやってきました。ソニーも当初はオーディオCDを開発したり世の中を変えるデジタル革命の最先端にいました。今で言うところのGoogleAppleのような破壊的イノベーションを起こしていた。しかし、インターネットの時代がやってきて出遅れが目立つようになってきました。

 

それは日本が抱える構造的な問題に起因すると思っています。例えばアメリカ人は基本Do It Yourself、個人主義。一方、日本は中央官庁も企業も皆、すべてピラミッド。トップダウンで降りてきた指示を受け身で黙々とこなす。指示がおかしくてもほとんど声をあげない。インターネットが当たり前になった今は個人が解放された時代です。なのに日本はいまだにピラミッド型が主流で、組織を守るために個人が犠牲になる構図がほとんど変わっていません。世界では個人がエンパワーして、個人の多様性を尊重し自主性を重んじることによって組織を成長させているというのに、日本は追従していないのです。昔のソニーは個人が大事にされ、自由闊達で愉快な理想の企業でした。その組織風土が会社を発展させて世の中を驚かす世界企業に成長してく原動力になっていたのです。

 

 

 

 

 

――Googleに入社された経緯をお聞かせください。

 

辻野晃一郎 私は2006年にソニーを退職しました。ソニーがソニーでない会社になり始めていました。ソニーの神髄は井深さん、盛田さんが作ってきました。人がやらないことを真っ先にやるDNAがありました。何をやるにせよソニースタイルで、斬新なアイデアやアプローチがありました。商品だけでなくビジネスモデルにおいてもそうでした。日本の家電メーカーが米国のレコード会社やハリウッドのコンテンツ会社を買ったりと、途方もないことをやっていました。旧財閥系から生まれた大きな会社ではなく、戦後に生まれたベンチャー企業だったソニーがやってのけたのです。

 

人がやらないことをやるという魂がソニーを成長させていたが、どこからかそれがなくなっていきました。最近は数字的には戻ってきつつあるようですが、昔の強烈なスピリッツが戻ることはないでしょう。創業者たちの逝去はひとつの転機になっているし、それと同期してデジタル、インターネットの時代に移行。強烈な求心力が失われ、ソニースピリッツを忘れた人や知らない人がどんどん増えていってしまった。外的要因と内的要因の両方が作用して苦境に陥ってしまったのです。

 

ソニーは私が命をかけた会社でした。日本が生んだベンチャーで、世界で活躍するビジネスマンになりたいと思って入社し、ソニーが大好きでソニーのために働くことが生きがいになっていました。ところが何年もいると、あれ?ということが起き始める。それでも辞めないでいたのですが、カンパニープレジデントという役職(=子会社の社長のようなポジション)になると、嫌でも社内政治に巻き込まれてしまいます。私はそういったことに疎いので、外向きに凋落するソニーを何とかしようと奮闘していました。ところが、これ以上やっていても自分の力ではソニーを変えることができないと悟り、私自身が辞めることがソニーに対するメッセージになると考えて辞めたんですね。

 

ですから、会社を辞めた翌日から浪人です。無職の時期が何か月かあって、ハローワークにも行きました。そうこうしているうちに会社法が改正されたので、一度、自分で会社を起こそうと考え個人でコンサルティング会社を立ち上げたのですが、ちょうどその頃、Googleからお誘いがありました。ソニーの覇権争いに巻きこまれて疲れ切っていたし、今さらまた大きな組織に入るのも嫌だなと思って何度もお断りしたのですが、Googleという会社自体に興味がないわけではありませんでした。

 

本社から役員が来るから会うだけあってみないかといわれて訪問したら、話が盛り上がって、Googleは昔のソニーみたいな会社だなと思ったんですね。もちろん、時代も国も状況も違うのですが、すべて基本、個人の裁量に任せている。ソニーもかつてはそうだったのですが、権限がほぼ現場に移譲されていました。現場の担当者が決めて、組織がそれをサポートするという関係性だから何事もスピーディ。日本の一般的なピラミッド会社と大きく異なっていました。またエンジニアを尊重する社風もかつてのソニーのそれと共通していました。自由闊達な雰囲気も昔のソニーそのものでした。そこで興味が湧いて、以降の採用プロセスに臨むことにしました。

 

 

 

 

――どうして今、辻野晃一郎さんの講演が世の中的に求められているのでしょう。その要因をご自身ではどう思われますか?

 

辻野晃一郎 いろいろあるとは思いますが、このままではマズいと感じている人が多いのではないでしょうか。例えば企業からは社内改革が必要だと思っているから呼んでいただいているのでしょう。私の経験を聞きたいというのもあるでしょうし、もっと軽く、Googleにいたから興味本位で招いて下さる方もいるでしょう。ただまあ、皆さんがそれなりに閉塞感みたいなものを感じているのではないでしょうか。それで、私の話の中から何かしらヒントが欲しいと考えているのだと思います。

 

ベンチャー企業の若い方からもご依頼をいただいています。そういう方々にはもちろん、私の経験談が役に立つようであれば届けたいし、それから学生さんとかもっと若い人にも伝えたいですね。最近、ようやく表面化してきましたが、日本の教育も極端に遅れていますよね。受け身の人しか育てないから、自立して自らの信念や自分の興味で行動する子どもが育っていません。先生の言うことを聞く、受け身の人間を大量生産しています。そして競争ばかりさせているから落ちこぼれが生まれます。

 

今や教育先進国は競争を否定していますよ。だって、みんな個性が違うのですから、その人の自己実現をどのようにサポートするかを考えています。日本は相変わらず横並びにさせられて点数で競争させて、落ちこぼれると人生の敗北者と勘違いさせる。学校ではわからない才能が隠れているかもしれない。そういうことを北欧の教育先進国などは理解しているから、ユニークでイノベーションを起こせる人材をを育成しようとしています。そういった点において日本は大きく立ち遅れているように感じているのは私だけではないはずです。

 

 

 

 

危機意識を持ち続け、人々を覚醒させたい

 

――色々なテーマでお話をされていますが、そういった知見はどこで獲得されてきたのでしょうか。

 

辻野晃一郎 比較的、多方面に興味を持つタイプなんですかね。複雑な状況をシンプルに表したときに、その根本原因が何なのか気になるのです。だから、今、世の中がすごく大きく変化しているけれども、その根本原因は何のか?みたいなことをいつも考えています。例えば日本は人口減少傾向に転じましたが、世界を見渡すと人口は爆発的に増え続けている。2050年には100億人に到達するともいわれています。地球も乗り物だと考えたら定員があるわけで、定員オーバーとなれば食料や水、エネルギーなど有限の資源の奪い合いになります。だから自国主義やブリグジットみたいな保護主義的なことが今、世界各地で起こっているのは、恐らく根底にそういう要因があるのだろうとか考えます。

 

また何よりもテクノロジーの加速度的な進化によって世の中が大きく変わっていて、国の存在すら希釈されていますよね。むしろGAFAのような多国籍の民間企業のほうが一国よりも力を持っているような時代。もう国という概念さえ崩れ始めている。そういうことをいつも頭の中でぐるぐる考えているのです。

 

さまざまな異なる事象、例えば東芝の経営が傾いて巨額の損失を出したとか、シャープが買収されたとか、JDIが経営破綻したとか、ひとつひとつはバラバラの出来事のように見えますが、でも私は、全部根っこでつながっていると考えています。先ほどお話ししたような、日本がずっと抱え続けてきた構造的な問題というか体質がそうさせている。どこかに日本病のような共通の病巣があるのではないかと思うわけですよ。だから日本人が早く、その病巣に気づいて除去しないと本当にマズいことになると危機意識を持ち続けています。私がここ数年の間に講演でこういった話をしても、どんどん事態は悪化している気がしてなりません。

 

――そういった日本の凋落に対し、今後、どのようなアクションをとっていかれるのでしょう。

 

辻野晃一郎 まずは自分自身の本業である自分の会社を影響力ある会社にしたい。まだビジネスとしてのスケールが小さいので、きちんとした存在感ある会社にして、生み出した資産をうまく使って、世の中を良い方向に導くような活動をしたいと思っています。それは若い方への投資かもしれないし教育への貢献かもしれません。従順な人材ではなく、おかしいことはおかしいといえる人材を輩出する必要があります。

 

確かに人のマインドを変えることは難しいでしょうが、この国を再構築するような意気込みで取り組むべきだと思っています。

 

人々を覚醒させる必要があると思うんです。思考停止状態に陥っている人が多いのではないでしょうか。少しでも人々が覚醒して現場で行動する人が増えることに役立てたらと思っています。

 

辻野晃一郎

 

 

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