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田村潤 講演会講師インタビュー

元キリンビール株式会社代表取締役副社長。
1995年、上層部の「安売りで売上を伸ばせ」という消耗戦を意味する指示に反発し、売上が全国最下位クラスの高知支店へ異動を命じられます。40年近く市場シェアトップを独走していたことで、現場の社員は顧客本位の営業をする体力がついていませんでした。
田村氏は営業一人ひとりの意識改革に着手し、見事、業績V字回復を成し遂げました。

高知支店・四国地区での業績が認められ、田村氏の営業手法は全社を巻き込む大きな改革の渦となり、2009年、キリンはついにアサヒビールから首位を奪還します。
2016年の著書『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え!』は22万部を超えるベストセラーとなりました。

(text:飯田健人、photo:小野綾子)

講演について

田村潤

──主にどのような企業・団体から講演のご依頼がありますか。

 

田村:幅広い方々からご依頼を頂いています。大企業から中小企業。商工会議所など。業種も様々です。著書『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え!』はもともと営業マンが出張の新幹線の車内で2時間で読める、というコンセプトで誕生した本です。
しかし、講演では経営者層や中間リーダー層も聴講してくださいます。話す内容は営業マン向けとリーダー向けで調整はしますが、本質的な部分は同じです。

 

──講演の際に心がけていることはありますか。

 

聴講者との関係性の構築でしょうか。最近皆さんの前でお話をしていると、「波動」のようなものを感じることがあります。お話したことが皆さんの心に響いて共感が得られると、それによってエネルギーがもらえるような気がするんですね。聞き手が熱をもつと、こちらも集中力が高まっていく。「波動の交流」という表現ができるかもしれません。そういった関係性の中でお話できるように心がけています。

 

 

リーダーの仕事

──著書がビジネスマンに受け入れられた理由、ヒットの要因はどのようなところにあったと思われますか。

 

田村:講演で主催者や聴講者の方とお話したり、お葉書で感想を頂いたりしてわかったことがあります。
1つは日本企業全体の現場力が弱くなっているということ。2つめは何のために仕事するのか、理念がよくわからないまま働いている方が多いということです。
「うちと同じです。」という共感の声を頂くことがあります。つまり、20年前のキリンビールだけではなくて、皆さん同じ悩みを抱えているということではないでしょうか。

 

──著書の中では「都落ち」という表現もありました。初めて高知支店に赴任した時の印象はどのようなものでしたか。

 

田村:意外と明るかったんですね(笑)。キリンが苦戦しているエリアでしたが、売り上げが低くてみんな陰鬱としているかな、と思ったらあっけらかんとしていた。これは、上から降りて来た指示を自分のできる範囲内でこなすことが仕事だと教育されてきていたからです。
自分なりにベストを尽くしているつもり。だから成績が悪くても自分(たち)のせいではないという意識だったんです。

 

田村潤──安売りという消耗戦への反抗と、それに対して事実上の左遷。モチベーションを下げずに改革を成し遂げられたのはなぜですか。

 

田村:若いころは人事の仕事をしていました。ですから社内の人事というのは理不尽なこともあるとわかっていたんです。人同士の好き嫌いもあれば、たまたまこのポストが空いていたという偶然もあります。また、自分の実力以上の人物を評価することはできません。そういうものだとわかっていましたから。自分の目の前の仕事を、置かれた環境で一生懸命やるしかないと。

 

──シェアを奪還するため、営業力を上げるためには「基礎体力」が必要だと著書で述べられていますよね。そのためにリーダーとして意識したのはどのようなことでしょうか。

 

田村:着任した当初はどうしていいかわからなかったというのが正直なところです。苦戦しているエリアということもあり、課題は山積していました。
しかし、それまでの経験からわかっていたことがあります。仕事は対象を絞って、一つ一つを徹底的にやることが大切なのです。決めたことをやり切る文化を醸成することが必要だとも感じていました。

 

──現場が成果を上げられるような仕組みを作るのですね。

 

田村:絞り込んだ仕事を現場が徹底的にやるためには、環境整備をすることも必要です。それもリーダーの仕事。仕事の成果を出す環境をリーダーが整えることで、現場に実行力をつけていくのです。

 

 

心の置き場を変える

──現場の社員に対して田村さんが出したメッセージはどんなものだったんでしょうか。

 

田村:自分達には使命があるのだと。上から言われたことを「こなす」のが仕事ではありません。美味しいビールを作り、お客様に美味しいと感じてもらって、良い一日を過ごしてもらう。それが使命なのだと。自分たちは一体何のために働くのかということを繰り返し伝えていました。

 

──メッセージの伝え方にも工夫があったそうですね。

 

田村:理念だけを伝えても社員にはピンと来ません。そこでリーダーが、「理念に照らすとこういう状態がお客様にとって望ましいのだ」いう現場の具体例をピックアップします。そして理念、戦略と現場の事実を1セットとして、毎週月曜日に話していました。

 

──現場の基礎体力がつくまでに4か月はかかると述べられていました。その間にも本社は実績を求めてくるわけですよね。現場と本社の間で板挟みになったのでは?

 

田村:そうですね。中間リーダーですからこれはあります。確かに上から言われたことをこなしていれば悩まなくていいし、楽です。ですがそれだとメンバーの基礎体力がつかず、中長期的には数字も上がりません。当たり前の仕事を愚直に地道に徹底的にやっていくのです。
幸い、といっていいのかわかりませんが(笑)、高知や四国は売り上げの比率が全国に対して非常に低かった。これが東京や大阪だったらそうはいかなかったのかもしれませんが。

 

 

ワークライフバランスの本質

田村潤──田村さんの変革が奏功し、まず高知でシェア一位を奪還。現場と本社の関係性はどのように変わりましたか?

 

田村:現場で新しいことに挑戦しようとする際には本社の理解を得なければなりません。私はできるだけ現場と本社、上と下の情報量のギャップを埋めることを心掛けていました。繰り返し本社にメッセージを送る中でやがて成果が上がるようになると、現場の考え方を理解してくれるようになり、良い循環が生まれるのです。

 

──著書の中で、「Aランク店だけでなくB,Cランク店もすべて回るように」と指示を出したとありました。重要度の低い店舗まで一軒ずつ回るのは一見効率が悪いように感じられますが、どのような意図があったのでしょうか?

 

田村:確かに非効率ですが、理念を考えたら全ての店舗を回るべきです。キリンを置いてない店があれば、おいしいキリンをお客さんが飲めない。申し訳ないが、お客さんを差別することになる。会社の都合で決めたランクとは関係なくすべてのお店を回るべきなのです。
現実的には限られた人数の営業で、すべての店舗を回るというのは無理だと思うわけです。しかし、出来るだけ多くの店舗を回ろうとすると努力が、自主性や工夫を生むのです。やらされるのではなく、自分たちでどうにかしようという工夫や知恵です。またBランク店、Cランク店を回るために生まれた工夫が、結果としてA店へ活かされる好循環が生まれました。

 

──リーダーが決断をし、理念を繰り返し伝えることで現場の営業それぞれが自主的に動くようになったのですね。しかし、働き方が変わったことで仕事量が増えたのではないでしょうか。負荷が増大した状態で、社員のモチベーションは落ちなかったのですか。

 

田村:そこには誤解があります。負荷は増やしていなかったのです。理念を繰り返し伝えて、自主的にどうしようかと動き出す。成果が出て、お客さんに喜んでもらえる。すると仕事が段々面白くなってくる。会社に行くことが楽しくて仕方がないという雰囲気でした。

 

──現在のワークライフバランスの考え方は、「ワークがストレスの源泉だからその時間を減らしてライフの部分でストレスを発散しよう」となりがちですよね。田村さんはワークの充実度を上げることで、ライフ全体の充実度を上げていこうという考え方のようですね。

 

田村:働くことの本質がどこにあるのかということを考えなくてはいけません。労働時間が短いのが幸せなのではなく、誰かのために使命を果たす。やるべきことを徹底的にやりきるということが本質なのではないでしょうか。
今の働き方改革では残業時間を減らせば生産性があがる、という考え方がありますがそうではありません。生産性を上げるためには強い現場が必要で、そのためには現場の自由と自主性を育むことです。現場が考えて、その結果が会社の施策に反映される。その施策を現場が実行していくという循環の中で、個々の能力が上がって市場を理解し、無駄が排除されていくのです。

 

──本質的な「働き方改革」を20年前に既に実行されていたのですね。

 

田村:日々の満足度、充実度は上がったと思います。理念が浸透し現場が強くなると生産性が上がります。顧客との関係が強化され、市場への理解が高まれば、労働時間はいくらでも減らせられるのです。またそうした仕事を通じて作られた前向きな姿勢が、仕事以外の時間にも生かされ、理想的なワークライフバランスに繋がっていきました。当時の高知のメンバーは本当に良く遊んでいました。

 

 

組織の理念と現場の事実のギャップを埋める覚悟

田村潤──田村さんは高知支店でシェアを奪還した後に、四国を統括。そして本社へと戻る過程で部下の数も増えましたよね。それぞれのステージでやるべきことは異なりましたか。

 

田村:最終的には部下が4000人になりました。でも基本は変えません。理念と現場がセットです。問題はコミュニケーションのコストです。最初の高知支店は十数人のチーム。部下が増えれば増えるほど階層も増えますから、意思伝達のコストも増えるわけです。これには工夫が必要でした。

 

──現場で何が起きているか、それこそ営業社員の「波動」が感じられなくなる不安はあったのではないですか。

 

田村:会社組織というのはフォーマルなものですが、インフォーマルなつながりも作りました。最前線にいる営業マンと直接連絡を取り合い、現場で空気や雰囲気をヒアリングしていました。これは非常に効果があったと思います。

 

──現場を束ねる中間リーダーの育成は最重要課題ですが、どのような対策を取られていましたか。

 

田村:考えつくすべてのトレーニングは施しました。でもリーダーだけ集めたところで、現場に戻ったらそこは従来通りの上意下達の組織なわけです。うまく起動しなかったので、営業のチームごとにトレーニングをする、というような方策を取りました。

 

田村潤──聴講対象者には中小企業の経営者も多いそうですね。キリンのような大企業に対し、資本力で劣る中小企業がいかに自社のブランド力を高めていくか。その戦略に必要な視点はありますか。

 

田村:「一点突破」に尽きます。現代は中小企業の時代だと言われていますね。大企業は会議や打ち合わせなどの管理費用が莫大で、かつスピーディな決断が難しい。
変化の激しい時代において、中小企業の優位性は2つ。

1つは一点を目指すスピーディでスリムな組織であること。時代に合わせてどんどん自身を変えていく組織です。
2つめは理念の浸透がしやすいこと。思いつきで手当たり次第に何でもやる、というのは効率が悪い。自分達の存在意義に照らして、ここにチャレンジしていこうということを絞る。中小企業のほうが人数が少ない分理念が浸透しやすいですから。

 

──20年という歳月を経て時代は激変しました。もし今現場に戻るとしたら、現場の社員にどのようなメッセージを送りますか。

 

田村:1つは目の前の現場に本質がある、ということです。世の中には無数の事象がありますが、それらを一つ一つ拾っていくのではなく、目の前の現場を掘り下げることで本質が得られます。すると全てがわかるようになります。

2つ目はやはり会社の使命です。自分達の使命はどこにあるのか、その使命を果たす覚悟を決めてもらう。心の置き場を変えてもらうのです。

でも実際にはその使命、つまり理念と現場の現実には大きなギャップがあるはずです。理念と現実とのギャップを埋めること。それが仕事だと、仕事の定義を変えることです。

 

田村潤──IT革命を経て、現在は第3次AIブームに世界が沸騰しています。また、働き方改革やダイバーシティといった概念が広く認知されるようになりました。現場も大きく変化しています。

 

田村:ITやAIを研究して、理念と現実のギャップを埋めるために活用しなければなりません。持っている資源を総動員しなければあるべき姿を実現できません。ダイバーシティは当然の話です。女性の活用もそう。金太郎あめじゃ非連続的な成長をもたらす戦略は出てこないんです。
だから理念が大切なのです。ITやAIを活用してそこに向かってジャンプするんだ!という。

 

──日本企業の今後の展望をどのように捉えていますか。

 

今の日本企業は理念に対してどうすべきか、ではなく「去年」より頑張ろうというスタンスになっています。「従来との比較」です。
現在世界で活躍している企業はそうではありません。理念を設定して、ITを活用してそこに向かう企業ですよね。ITでイノベーションを起こし自分達の夢を叶えるんだという。
でも日本企業だって戦後はそうでした。技術の力で夢を形にする企業。松下電器、ソニー、本田、トヨタ。
志を持って時代を眺め、技術革新はどのような方向に行くのか、自分たちはどういう方向にいくべきなのかを再度見つめ直してほしい。

 

──今後どんなことにチャレンジしていこうと考えていますか。

 

田村:今はもっと伝える活動に注力していきたいです。以前、聴講していた方から「働いている人間が幸せになった」という感想を頂きました。もっとわかりやすく伝えて幸せな人を増やしていきたいですね。恩返しができるように。

改革は一人から。それが自分のエゴのためでなければ誰かが応援してくれます。不可能なことは何もないんだと伝えていきたいんです。

 

 

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