鳥越俊太郎 講演会講師インタビュー

Speakers.jp Interview Vol.22 「取材者」として「がん患者」の自分を伝える ジャーナリスト 鳥越俊太郎

 がんを罹患した著名人で、患者である自分を客観的に見つめて、がんといかに向き合うべきかを語ることが出来るといえば、鳥越俊太郎氏の右に出る人はいないであろう。
 2005年10月に大腸がん摘出、2007年1月に左肺がん摘出、同8月右肺腫瘍摘出、2009年2月に肝臓がん摘出と、過去4回の手術を経験。その経過を、取材者・鳥越が、がん患者・鳥越をレポートし、闘病から、がんをとりまく医療のあり方までを、誰よりも客観的にリアリティをもって伝えてきた。また、2013年現在、70代でありながら、週3回のジム通いで体を鍛え、がん患者とは思えない健康な容姿を維持している。
 講演会では「がんになったら、その経験を楽しむような気持ちになってほしい」というポジティブシンキングを伝え、講演を訪れた人を励ましている。そんな鳥越氏に、がんと付き合いながら強く生きていくための自分自身のあり方などを聞いた。

(text:増田聖祥、photo:小山幸彦)

スーパーポジティブな毎日

鳥越俊太郎写真
2009年2月に行った4回目の手術から、一般的に言われている「5年生存」の期限まで、あとわずかですが、現在の体調はいかがですが。

鳥越:良好ですね。今日も2時間ほど、ジムで筋トレをしてきました。
 急な仕事が入っても、スケジュールを調整して、週3回のトレーニングペースだけは堅持しています。
 そのため、土曜・日曜でもトレーニングすることがありますが、完全に習慣化しているので、筋トレが楽しいと感じています。その勢いで、2012年12月には、ホノルルマラソンにも出場し、完走しました。

70代とは思えないほどのスーパーポジティブシンキングで、新しいことに挑戦し続けていらっしゃいますね。

鳥越:私の年齢になると、人生も残り少ないから、常に新しいことに取り組んでいないと面白くないんですよ。
 若いころなら、楽しいことが目白押しでしたが、いまでは新しいことを探して、年毎に新たなテーマを決めて挑戦しています。

闘病に関するテーマを中心に、講演も精力的に行われていますね。
鳥越俊太郎写真

鳥越:毎月平均10回以上講演していますが、講演依頼はそれ以上にいただいています。しかし、講演以外にテレビ番組にも出演していますので、さすがに全部はムリです(笑)。
 医療機関やJA、生命保険会社、損害保険会社、各自治体、教育委員会、青年会議所、商工会議所、大学など、ありとあらゆるところから講演依頼をいただいています。
 オファーをいただくことはありがたいですが、やはり身ひとつなので、限界はあります。それでも、大学などからの依頼で、学生を対象とする講演などは、できる限り対応したいと思っています。

新聞記者、ジャーナリストとして、自分にがんがみつかった場合は正直に公表するつもりだったとおっしゃっていましたね。

鳥越:若いときから、自分ががんになったら公表しようと思っていました。取材を通して、人様の様々な事情に触れる立場ですから、自分が取材される側になったときには、積極的に対応していこうという気持ちです。でも、自分が本当にがんに罹患するとは思ってはいませんでしたけれど(笑)。

実際にがんに罹っているとわかったとき、怖くなりませんでしたか。鳥越俊太郎写真

鳥越:それはなかったですね。小学校6年生のときに、墓場で遊んでいた際、白骨を目撃してしまい、ちょっとパニックになったものの、猛烈な無常観にかられ、「人はいずれ死んで、誰もがこうなるんだ」と、諦念という死生観を身につけ、死というものが怖くなくなったのです。
 それに、もともと呑気な性格なんですよ(笑)。能天気に「まあ、なんとかなるやろ」と、突き詰めて深刻に考えないたちなんです。だから、がんに罹っても、ちゃんと手術、治療すれば必ず治ると、良いほうにしか考えないんです。

鳥越さんだから、がんを宣告されても、気丈でいられたのだと思いますが、一般の人は必ずしもそうではないので、がん患者になってもポジティブな気持ちでいられるコツはなんですか。

鳥越:がんがどのレベルで見つかるかにもよります。私の場合、2005年10月に行った最初の手術では「ステージⅡ」と診断されていたので、切れば治ると素直に思ったんです。
 しかし、がんが末期で見つかり、余命半年などと言われれば、どういう気持ちになったかは分りません。呑気でいられなかっただろうし、残された時間をどう過ごすかで悩んだかもしれません。

 

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がん対策は検診・保険から

食事や睡眠管理、ストレス回避など、がんに罹らないための生活習慣上の心得で最も重要なものはなんですか。

鳥越俊太郎写真

鳥越:何でがんになるのかについて、現在、それぞれの症例で正確な原因が判明していないんです。子宮頸がんはウイルス性であるということだけは判明しているのですが、それ以外のがんは、様々な原因が考えられるのです。
 そもそもがんは、遺伝子が何らかの損傷を受け、細胞分裂に影響を与え、異常な細胞分裂を繰り返すようになったものです。遺伝子が損傷を受ける原因は、ウイルスなのか、ストレスなのか、喫煙なのか、食事内容なのかは不明なままなのです。だから、がんの予防を考えても、はっきりとした効果が期待できない現状にあります。
 それでも、規則正しい生活を励行し、暴飲暴食をせず、睡眠をきちんととり、適度な運動を行うことで免疫力を維持するのがいいのではないかとは思います。しかし、若いときに、規則正しい生活などはムリですよ。徹夜マージャンなんかしょっちゅうでしたし(笑)。

だからこそ、がん検診を受診することはとても重要ですね。

鳥越:私も、がん検診は重要であると認識していたので、年に1回の人間ドックは受診していました。
 しかし、最初のがんが発見される直前の3年間は、それまで担当してくれたお医者さんが、人間ドックの業務を止めてしまったため、検診を受けなかったんです。別のお医者さんを紹介してくれるとおっしゃったんですが、面倒くさくなって受診しないまま放置し、3年後に改めて検診したら、大腸がんが発見されたわけです。がん検診の重要性を、改めて感じました。

がん治療には、お金がかかりますが、がん保険には加入していたのでしょうか。

鳥越:妻が加入してくれていました(笑)。20年前に、がん保険のセールスマンが訪れ、掛金も少なかったため加入したんですね。当時は、将来がんに罹るなんて想像もしていないから、保険のメリットなどは意識していなかったんです。
 実際にがんになって、がん保険に加え、加入していた生命保険の特約などからもお金が支払われることになり、手術・入院代で150万円かかりましたが、保険で180万円下りたため、残りはその後の治療費に補填できました。
 がん保険は、掛け捨てのものが多いので、もったいないと考える人も多いのですが、経済的負担軽減を考えると、加入に対して前向きであって良いと思います。

正しい知識・情報こそが、真の勇気付けとなる

高齢化社会が進行すると、早期に発見されたがんと共に生きる人が増えていくと思いますが、どのようにつきあっていくべきでしょうか。

鳥越俊太郎写真

鳥越:私の場合は、がん患者になったことが、体、健康、人生、命などを見つめるきっかけとなり、それが良いほうに展開しているのです。
 そして、2人に1人はがんに罹る時代であるため、がんに関する情報を知りたい、話が聞きたいわけで、私に、がんをテーマとする講演依頼が寄せられるのです。
 がんについて話せる人は、医療関係者とがん患者を経験した人です。しかし、医療関係者の話は専門的で難しくなりがちで、面白みに欠けます。一方、患者さんの話は、自分の体験談だけに終始することが多いようです。その人の体験談であるけれども、話に客観性を持たせ一般的な話として伝えなければならないのですが、そういう人は少ないようです。
 また、『がん患者』(講談社刊)という本を著しており、取材者・鳥越として、患者・鳥越を客観的に見つめ、がんについての自分なりの考え方も示しています。

鳥越さんのほうが、お医者さんよりも、がんに対する向き合い方などは理解していらしゃいますね。

鳥越:お医者さんが言っていない重要なことがあるんですよ。例えば、「がんは痛まない」ということ。
 人間は、痛みや発熱がきっかけとなって病院に行き、病気を治して生きているのですが、がんには、初期において自覚症状がないんです。もちろん、末期には痛みを感じますが、肺がんなどは病状が相当進行しても、痛みがないんです。だから、末期症状で咳が止まらなかったり、息ぐるしかったりして、病院にいってレントゲン写真を撮ったら肺にがん細胞が広がっていることがわかり、はじめてがんに罹ったことを知るのです。だから、初期の肺がんが見つかるのは、非常にラッキーなケースなのです。肝臓がんも、黄疸が走るころには末期を迎えています。
 胃に痛みがある場合は、単なる胃炎であることがほとんどです。胃にがんが出来ても痛くないため、がんが大きくなるまで分らないのです。しかし、全体にがんが広がっていても、他に転移がなければ、全摘出することで、胃がんは克服できます。

著書『がん患者』の中でも、読者に「勇気を届けたい」とおっしゃっていますが、最後に、がんはこういうふうに付き合えば怖くないということをお話しください。

鳥越俊太郎写真

鳥越:私の講演会にいらっしゃる方は、本人や家族、友人ががん患者であるケースが多いんです。「ご本人を含め、周りにがん患者がいらっしゃる方は、挙手を願います」というと、ほとんどの人が手を挙げてくれます。
 そして、「手を挙げたまま、まわりをご覧ください」というと、みんなうーんと唸ってしまうんです。こうしてがんが特別な病気ではなく、誰もがかかる病気であることを知るのです。
 がんは、早期発見・早期治療を実践すれば、怖くない病気です。反面、手遅れになって見つかったら、付き合う間もなくお仕舞いです。だから、早期発見・早期治療すれば、普通に付き合える病気なのです。
 そのためには、がん検診を習慣付けること。ある一定の年齢になったら、毎年の誕生日にがん検診を受ける、胃カメラを飲む、大腸の内視鏡検査を行う、各部をCTスキャンするなどが、がんと向き合うための第一歩です。
 がんに罹ってからでは遅いんです。私の講演がきっかけとなって、がんに対する心構えが甘かったとか、無知だったと感じた人が、こういう風に思えばよいと気付きをしてくれれば良いかなと思います。
 そして、勇気を届けるというのは、がんばってくださいと励ましの言葉をかけることよりも、正しい知識・情報を差し上げて、「がんを知ってもらう」ことなんです。
 私の講演を聴いた方が、がんのなんたるかを知り、元気が出て勇気が湧き、がんに罹っても落ち込まずに生きていくことができれば、これ以上に嬉しいことはありません。

 

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