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池田清彦 講演会講師インタビュー

その発言は骨太で、医学、生理学等の基本である理論生物学に基づいた「そもそも論」が主体。不確かな最新情報に左右されず、「正しいと思う情報、面白いと思う論文は、科学原理から見て間違いがないかどうかでわかる」と、基礎科学の研究者の軸足はぶれない。辛辣にして洒脱なエッセイストとしても知られ、フジテレビ系教養バラエティ『ホンマでっか!?TV』(以下『ホンマでっか』)でも披露されている軽妙な“池田節”は、生物学のエッセンスにあふれ、講演でも大人気である。

(text:増田聖祥、photo:小山幸彦)

カミキリムシの先生が、教養バラエティのレギュラーに

──1年間にどのくらい講演を開講していらっしゃいますか。また、講演依頼はどのようなところから、どのようなテーマで寄せられますか。

 

池田清彦池田清彦:50件から60件ほどに及びますね。学校や会社の新年度が始まる4月から6月にかけては少ないのですが、9月から11月にかけては多くなります。多いときには、講演回数がひと月で11回に及ぶこともありました(笑)。
一般企業をはじめ、教育関係・福祉関係団体、幼稚園などからも講演依頼があります。地方公共団体では、男女共同参画やダイバーシティ、環境問題などをテーマとする講演を頼まれることが多いです。さらに、健康で長生きするにはどうしたらいいかというテーマでの講演もあります。

 

──『ホンマでっか』のレギュラーになられて以降、広く一般にお顔が知られるようになりましたね。

 

池田清彦:カミキリムシをはじめ昆虫生態学を研究している立場から、以前から環境問題には強い関心があり、2006年に『環境問題のウソ』という本を出したことがきっかけで、他局の討論バラエティに出演しました。それをご覧になった『ホンマでっか』のスタッフさんが「ウチにも出て欲しい」と、お声がけしてくれたんです。
番組が始まった2009年当初は不定期の深夜番組だったので、環境問題についても、私と武田邦彦先生(中部大学教授 「SpeakersインタビューVol.23」に登場)が一緒になって、結構過激なことを言ってもオンエアされたんです。しかし、2010年10月から午後9時枠のゴールデンタイムに移ってからも、以前と変わらないスタンスで話していると、カットされる部分が多くなりました(笑)。

 

──我々が、環境問題の実態や本質を正しく理解するには、どのようにしたら良いのでしょうか。

池田清彦

 

池田清彦:テレビを観ないほうがいいと思いますね(笑)。そして、インターネットを経由して、外国からみた日本の情報を仕入れる。それには外国語のリテラシーが求められますけれども、海外の目で見たほうが、より正確に日本の姿が見えると思います。
例えば、日本の新聞だと「北極の氷が溶ける」と地球温暖化の話ばかりしています。確かに、北極の氷は増減を繰り返していますが、日本の新聞は減ったときだけ大々的に報道するんですね。2012年に大きく減少し、その後は増えている。しかし、2012年だけ、新聞はデカデカと記事にするんです(笑)。
その一方で、南極の海の氷は、毎年観測史上最大を更新して膨張しているんですよ。これが意外と知られていないのは、新聞が報道しないからなんです。
文科系思考が強い方などは概念に縛られがちなんですが、大事なのは概念つまり言葉ではなく、論理で物事を考えることなんですね。

 

 

生物学の基本を知って子育てをする

──著書や『ホンマでっか』において、子育てについても、生物学者の見地や、脳の構造などからお話しなさるから、説得力がありますね。

 

池田清彦池田清彦:例えば、言語の場合、7歳から8歳ぐらいまでが臨界期といわれ、それまでに言葉を覚えなかった場合は、どんなにがんばってもうまく言葉を発音できるようにはなりません。

 私の教え子に、4歳まで中国で暮らし、その後来日した中国人の子がいますが、日本語の発音に中国訛りがない。つまり「ネイティブ」並みにあらゆる言語を話すのであれば、臨界期までに、例えば外では日本語、家の中では中国語なんて環境で育つと、両方の言葉が流暢にしゃべることができるようになります。ちなみに、彼は英語もネイティブ並みに流暢です(笑)。
これは、脳の「ブローカー領野」(※1)が関係している話で、そこは発音を司る領域なんです。
しかし、いわゆる偉人と呼ばれる人は、1つの言語で深く物事を考えるもので、外国語が不得意な人が偉人には多いんです。深く考える、つまり文法を組み立てたりするのは「ウェルニッケ領野」(※2)で行われます。本来は、それぞれのキャパシティがバランスよく配分され機能すべきなんです。
さらに、2歳児のころに出来上がった脳の基本構造を基に、生き残るシナプスと死に絶えるシナプスがはっきり分かれて、ニューロン・ネットワークの構造がおおまかに決まって、天才になれるのかどうかが決まる。そういう話をすると、赤ちゃんがいる若いお母さん方は真剣に聞いてくださいますね。(※1)ブローカー領野:前頭葉下部の下前頭回後部にある、言語産出の中枢。考えや理解を言語にする機能をもつ。(出典:『大辞林』第三版)
(※2)ウェルニッケ領野:大脳左半球側頭葉上側頭回後部で、耳からの言語音の理解の機能を司る中枢部分。(出典:『大辞林』第三版)

 

──最近の子どもたちは、自然に接するよりも、スマホやゲームに没頭することが多いのですが、どのようにお考えですか。

 

池田清彦:ゲームは、クリアしたときの達成感もあって決して悪い効果ばかりをもたらすものではないでしょう。ルールの枠の中だけでやるものだから、必ず答えがあって、解けないゲームはない。受験勉強と同じです。

しかし、様々な自然環境に触れると、必ずしも答えがあるとは限らない。そのような局面に立ったときに、とりあえずやってみるという姿勢が必要となります。そういう資質を鍛えるためには、外遊びをしたほうが良いです。

 

──生育期別のやるべきこと、やってはいけないことは何ですか。

池田清彦

 

池田清彦:例えば、反抗期などでは、親から独立するまでの一過程に過ぎないので、放っておくことが重要です。

 チンパンジーのオスは、他の群れのメスが好きになってしまうと、親を無視してそっちに行ってしまいますが、人間は自我が芽生えても、中学生ぐらいでは経済的に自立できないので親元を離れられません。
親から自立したいけれども実際問題として無理だからジレンマに陥ってもがく。もがくことが反抗期なんです。それを経て一人前になりますので、静かに見守っていましょう。

 

──子育てに当たるお母さんは様々な悩みを抱えていますが、生物学的なアプローチから、アドバイスをお願いします。

 

池田清彦:基本的には、遺伝子と環境で子どもの能力が決まってしまうので、それを踏まえて子どもの個性をしっかり掴むことが一番大事です。

例えば、集中力が30分しか持続しない子どもは、短期記憶を司る脳領域(海馬)のキャパシティがそれだけなので、勉強を中断させます。そして、暫く海馬を休ませているあいだに、重要な短期記憶が長期記憶になることで、海馬が空っぽになります。そして、再び勉強すると頭に入る。
一方、集中力が2時間持続する子どもなら、一気に勉強させ、その後は勉強で記憶したことを整理させる。その作業には、集中力が30分しか続かない子より多くの時間がかかりますので、それにじっくり当てるようにします。
つまり、脳のキャパシティによって、それぞれに有効な勉強法を指導する。それは、兄弟でも違いがありますから、決してほかの子と比較しないで、個々に褒めてあげることが重要です。
そして、絶対に親の見栄を子どもに押し付けないことです。いわゆる「お受験」を親のエゴで押し付けて、その子が入学してから、その学校のレベルについていけないと不幸になります。
自分のキャパシティを超えて活動すると、どこかで破綻します、自分のキャパシティの範囲を知りながら他人にはないものを探し伸ばしていけば、楽しく前向きな人生を歩むことが出来る。それを指導してあげてください。

 

 

自分にあった生き方、環境を求める

──講演のテーマでもある「がんばらない生き方」は、いかにも池田先生らしい肩に力の入っていない生き方ですね。

 

池田清彦池田清彦:どうでもいいことで、いちいち衝突するのはムダですし、努力と成果は必ずしも正比例しません。血のにじむような努力でも、それが本人にとって楽しみであれば、辛くて仕方のない努力よりも、成果は違ってくるでしょう。
だから、『ホンマでっか』で司会を務めている明石家さんまさんは、実にお話が好きな方で、決して歯を食いしばってお笑いに臨んでいるわけではない。テレビカメラが回っていないところでも、打ち上げの席上でも、実によくしゃべっています。楽屋に挨拶に来た後輩さえも笑わせようとしゃべっているので、本当にお笑いが好きなんですね。
まさに、「がんばらない生き方」で成功している人の代表でしょう。

 

──モチベーションは上がらないけれども、“歯を食いしばって”がんばっている人にアドバイスをお願いします。

 

池田清彦:例えば、就職先でも、自分に不向きな職種・会社でも、企業ブランドを優先して就職したら、その後が大変だと思います。
教え子の一人が、某有名証券会社に就職したんですが、「合わない」と言ってすぐ辞めてしまいました。回りは、非常にもったいないことをしたと思ったようですが、本人はあっけらかんとしている。その後ベンチャー企業に就職したんですけれど「非常に向いている」と連絡がありました。
生物学上の例でも、クジラの祖先といわれているメソニクスは、犬ぐらいの大きさだったんですが、突然変異で足が短くなり、陸上よりも動きやすい環境を求めて海に入って大きくなっていきました。彼も、その会社で大物になるかもしれませんよ(笑)

 

──最後に、講演ではどのようなことを心がけ、どのようなことを伝えていらっしゃいますか。

 

池田清彦:「テレビや新聞などのメディアで、あまり伝えられてない情報や事柄をお話しして、みなさんの気付きのきっかけになればと思っています。皆さんがお持ちの常識とは違うことを知っていただき、自分なりの情報を探していただきたいと思います。

そして、大切なのは何事も自分自身で考えることです。私の講演が、その一助になれば幸いです。

 

池田清彦

 

 

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