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伊原春樹 講演会講師インタビュー

その情報収集・分析力が高く評価される一方、スタープレーヤーであろうと構わず叱りつける厳しさを持つ。何事にもぶれない姿勢は、野球ファンに留まらず多くの支持を得ている。

「『怒る』は自分勝手な感情の発露に過ぎない。そこには愛情がないから、相手にマイナスな作用しか及ぼさない。しかし、『叱る』は、いわば罰を与える愛情。叱る理由がきちんと分かるからその愛情は必ず相手に伝わる」。

“いぶし銀の鬼軍曹”が、指導者に求められる資質について、熱い気持ちを伝えてくれる。

(text:増田聖祥、photo:小山幸彦)

指導の基本は選手に対する愛情。

伊原春樹──どのような方々から講演依頼を受けていますか。

 

伊原春樹:2015年の9月から11月にかけては、一カ月に7、8回ほど講演しました。個人的な知り合いからの依頼がほとんどです。
講演先も教育機関が圧倒的に多いのですが、建設会社や金融機関などの企業からも、安全大会や人材育成をテーマに講演依頼が寄せられています。
私は、プロ野球の世界では、1981年に西武ライオンズの二軍守備走塁コーチ補佐を皮切りに、野球指導者としての期間が長かったので、選手の指導法のエッセンスを、子どもの教育やビジネスの世界の人材育成に応用していただけるようにお話ししています。

 

──選手から指導者になるとき、最も心掛けたことはなんですか。

 

伊原春樹:30代前半でコーチ補佐に就任し、現在は60代になりましたが、それぞれの年代に相応しい指導法を心掛けました。選手も、30代のころは同年代の現役選手もたくさんいますし、若い世代の選手になれば、育った環境や価値観、受けた教育も違います。それにあわせて指導法にも変化が求められます。
しかし、指導の基本は、選手に対する愛情です。これはいかなる世代の選手に対しても必要不可欠な要素です。そのなかには、厳しさも必要です。なんとか成長してもらいたい、上手くなってもらいたいという気持ちがあれば、厳しさの中にある愛情も伝わりますし、こちらも選手とともに成長していきます。

 

 

誰にでもビシッと言える指導者であるべき。

伊原春樹──2015年に上梓した『指導者は嫌われてこそ一人前』のタイトルにもある、“嫌われる”という言葉の真意を教えてください。 

 

伊原春樹:もちろんそれは、ヘビのように忌み嫌われるという意味ではありませんよ(笑)。叱った相手に「畜生、悔しいなあ。監督、次は見てください」と思われることです。
叱られるのは誰だって嫌です。しかも、プロ野球選手は、中学・高校時代からエリート扱いされてきているような自意識、自尊心の強い者ばかりですし、スタープレーヤーと呼ばれる選手クラスになると、例え問題があっても指摘できず、選手をおだててばかりいる監督、コーチもいます。
でも、それじゃダメなんです。そこで、ビシッと言えるコーチ、監督であるべき。会社の上司でも同じです。

叱ることのできないコーチ、上司は、選手や部下と友達になろうとまでは思っていないでしょうけれど、やはり嫌われたくないという気持ちが強すぎるんでしょう。

 

──「叱る」ためのバランスとタイミングは。

 

伊原春樹:一般に「褒めるときはみんなの前で、叱るときは誰もいないところで」と言われていますが、これも相手によりけりです。ベテランやリーダー、スタープレーヤーにも、あえてみんなの前でガツンということも大事なんです。そうすることで、チーム全体がピリッとするんです。
もちろん、やみくもに叱るのはダメです。しかし、ジャイアンツのヘッドコーチを務めていたときでも、主将の阿部慎之助選手をみんなの前で「今日のプレーは何だ!」と怒鳴りつけたことがあります。しかし、若手などは「阿部さんでも叱られるんだ」と、気持ちをより一層引き締めてくれるんです。

 

 

選手と指導者は別な職種。

伊原春樹──スポーツ界では「名選手必ずしも名監督ならず」といわれますが、こうなる最大の原因はなんですか。

 

伊原春樹:分りやすくいえば、選手と指導者は別な職種なんですよ。その職種に適合した能力があるかどうかに過ぎない。名選手が名監督であれば一番いいんでしょうけれども、現実はそうもいかないわけです。

 

──「ミスターサードコーチャー」と言われるほどの圧倒的な存在感を出していましたね。

 

伊原春樹:サードコーチャーはオーケストラの指揮者に似ているとよく言われています。ランナーの一挙手一投足や、相手チームの守備状況を俯瞰し、一瞬で分析・判断してサインを出す。それは、両軍選手にだけでなく、球場にいらっしゃるお客様もみんなが注目している。手先ひとつで人を動かすところや、試合中のあらゆる変化にも的確に対応するとことなどは、まさにマエストロです。

 

──野球の指導者は、いわゆる選手経験者ですが、オーケストラの指揮者は、演奏家である必要はありませんので、確かに別な職種ですね。

 

伊原春樹:指揮者は、演奏家とは違う勉強をしなければなれませんからね。演奏家は一選手にすぎないですが、指揮者はすべての楽器の性質や演奏法を理解して、現場で取りまとめるのですから、まさにまったく違う能力が求められるのです。
球界でも、明治大学の応援団長から野球部の監督になった島岡吉郎さんのようなケースもありますが、要は野球を理解していればいい。野球を理解する能力の有る無し、特に「人使い」の力量が問われるわけです。
もちろん、事前の情報収集も徹底的に行っていました。情報収集は、指揮者で言えばリハーサルのようなもの。野球の試合にはリハーサルはないので(笑)、事前の準備をきちんと行うことで、的確な指示が可能となるんです。

 

 

どんな組織にも「参謀」が必要。

伊原春樹──監督として、通算4期務めていらっしゃいますが、そのときは逆にヘッドコーチに対して、いろいろと役割を求めたのではないでしょうか。

 

伊原:最初に西武ライオンズで監督を任された2002年から2003年のシーズンでは、後に監督となる伊東勤選手が総合コーチを兼任してくれました。
私の場合、監督時代にもサードコーチャーズボックスに立っていましたが、それは最前線で陣頭指揮を執るためと、お客さまへの「サービス」も含まれています。

野球チームも組織である以上、「参謀」と呼ばれる立場の人が必要で、それがヘッドコーチなどのスタッフです。伊東コーチは若いながらよくやってくれましたが、監督よりも年長者が参謀であるほうが、アドバイスを受け入れやすいと思います。
2007年から2010年のシーズンで、読売ジャイアンツで当時の原辰徳監督を、ヘッドコーチとして補佐しましたが、私が原監督よりも9歳年長者であったことが良いチーム作りに結びついたと思います。

 

──その原辰徳監督に対しては、特に強い印象をお持ちのようですが。

 

伊原春樹:原監督からは、「強い選手作り」を目的に、コーチ就任を依頼されたのです。私よりも若いといえども、やはり古い世代の野球人ですが、野球人である前に、社会人として立派な方です。
それに、広岡達朗監督、野村克也監督、森祇晶監督のように、話もできないような近より難い雰囲気はありません。
それは、お父さんである原貢さんの影響も大いにあります。
東海大学付属相模高校や東海大学硬式野球部などで監督を務めた原貢さんで、徹底したスパルタ教育を原監督に授けている。それも、他の選手よりも徹底的にシゴかれたのですが、決してクサることはなく、実力を遺憾なく発揮して、大学時代は1年生からレギュラーでした。
気持ちを鬼にして他人よりも実の息子に厳しく当たったお父さんの指導を受け入れたことで、人の痛みが分かり、監督となってからも、選手やコーチの立場や気持ちを理解して接してくれるようになったのでしょう。

 

──そんな監督の気持ちになる、社長の気持ちになって指導することが、コーチ、管理職の役目であるわけですね。

 

伊原春樹:組織全体にトップ(監督、社長)の考え方を浸透させることが、ヘッドコーチ、管理職に何よりも求められる役割です。トップが自身の考えをいちいち言わなくてもみんなが理解しているようにしなくてはいけません。

 

──最後に、講演でお伝えしたいことを教えてください。

 

伊原春樹:やはり、指導には愛情が必要であるということです。選手や部下に、本当に良い仕事をしてもらうために、愛情と厳しさを持って、分け隔てなく指導することの意味をお伝えしたいです。特に、指導者経験が長いので、プロ野球の世界で培った部下を躾け鍛えてきた経験をお話します。
また、球界に限らず、あらゆる“組織”における上下関係をはじめ、コミュニケーション法やきちんとした組織論、野球チームの指導者として身につけた組織運営のノウハウもお話いたします。

 

伊原春樹

 

 

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