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門倉貴史 講演会講師インタビュー

慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、浜銀総合研究所に入社。2005年まで第一生命経済研究所経済調査部主任エコノミストを務める。2005年からBRICs経済研究所代表。2007年からは同志社大学大学院非常勤講師。2009年からテレビ番組『ホンマでっか!?TV』に出演。司会の明石家さんまから突っ込みを受ける「いじられキャラ」として人気を博す。「コロナはいつ頃収束するのか、国内の経済はこれからどうなるのか」「どのような生き残り戦略をして行けば良いのか」について門倉貴史さんに話を伺った。

(text:大橋博之、photo:小野綾子)

2022年の半ば以降から景気は回復する

──門倉貴史さんにお話を伺うのは2回目となります。前回から講演内容などに変化はありましたでしょうか?

 

門倉貴史 以前はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)がもてはやされていたことから、有力新興国についての講演依頼が多かったのですが、最近では、“コロナはいつ頃収束するのか、国内の経済はこれからどうなるのか” “どのような生き残り戦略をして行けば良いのか”といったテーマがほとんどになりました。

 

──やはり、コロナショックは大きいのですね。コロナ禍の状況と今後の日本経済をどうお考えですか?

 

門倉貴史 2020年末くらいまでは、“有効で安全なワクチンが普及すれば、世界経済も日本経済もV字回復する”という見方が大勢を占めていました。しかし、最近では悲観的な見方が台頭しています。

理由はいくつか考えられます。最も大きいのはワクチンに対して過度に期待しすぎていたことです。

ワクチンの普及スピードが当初予想していたよりかなり遅い。アメリカでは2020年12月からワクチン接種が始まり、2021年4月くらいには成人の約7割がワクチン接種を終えるとの見通しでしたが、実際に成人の約7割がワクチン接種を終えたのは8月に入ってから。4か月もタイムラグがあり、しかもワクチンを打ってからもブレイクスルー感染が発生している。そういったことを考えるとブースターショットも必要になってくる。まだまだ安心できる状況ではありません。

日本はハイペースでワクチン接種を進めていますが、ワクチンの承認に時間がかかったこともあり、アメリカなど先進国と比べると3か月ぐらい遅れをとったという状況です。

 

 

──新しい薬も開発されてきました。コロナ収束後の日本経済はどうなるでしょうか?

 

門倉貴史 ワクチン接種率は高まり、2021年内には予防という意味では充分になってくると予想しています。2022年以降、ワクチンの経口治療薬も普及してくるでしょう。日本でもシオノギ製薬の開発に期待がかかっており、この薬が開発されると感染しても重症化しない。医療従事者の負担も減り、経済の正常化が現実味を帯びてくると思います。

タイミング的には、2022年の半ば以降から経済が正常化し、コロナショック前の水準まで景気が戻ってくると考えています。

 

──コロナ禍で飲食、交通、観光関連が大打撃を受けました。今後は期待できそうですか?

 

門倉貴史 おそらく、経済が正常化してくると、旅行、宿泊等の観光関連業、サービス業、や飲食業が急激にキャッチアップしてくると思います。業界ごとの格差はかなり縮まってくるのではないでしょうか。

コロナ禍も収束してきて行動規制も解除されると、一気にリベンジ消費が増えてくると思います。そのことでかなりカバーはできると思います。巣ごもり消費でIT関連企業に需要が集中していましたが、それもならされてくるでしょう。

ただし、コロナ自体がなくなるわけではありません。ウィズコロナでずっと続いて行く。それでも、ワクチンや治療薬が普及することで、インフルエンザとあまり変わらなくなる。コロナを意識して活動を規制することもなくなって行くと考えています。

 

 

再びグローバル化とインバウンドを目指す

──ウィズコロナの時代で、企業はどうしていけばいいのでしょう?

 

門倉貴史 コロナショック前の日本の経済戦略は、“日本の人口が減少するため、国内マーケットを長期で見るとあまりチャンスがない。だから、日本企業はグローバル化を進め、海外に進出して行こう”、あるいは“外国人観光客を日本に呼び込んでインバウンド消費を増やして行こう”と考えていました。その戦略にまた、戻って行くと思います。

これからの企業は、国際競争を行いながら海外に活路を見出す。2022年以降になると、ポテンシャルが大きい新興国が再び見直され始めると思います。

ただし、岸田内閣がいう、所得倍増計画や、成長が加速して行くことは、すぐには難しい。成長の加速は5年ぐらいの期間を見ていた方がいいのかなと思います。

 

──企業は長いスパンで捉えてグローバル化を加速させる?

 

門倉貴史 そうです。ただし、新興国はコロナとはまた別の要因で新しいリスクが出てきています。例えば、中国では、不動産バブルが崩壊するのではないかと言われています。不動産会社の恒大集団が巨額の債務を抱えていて、不履行起こすとまた状況がガラッと変わってきます。様子を見ながらにはなると思います。

 

──確かに、中国を中心に社会情勢は激動しています。企業に対する影響をどうでしょうか?

 

門倉貴史 アメリカと中国という2つの大きな経済があります。今はその2つが反目している状況。日本はどちら側に付いて行くのかは、究極の選択ではないですが、これから重要になってくると思います。

企業が、中国に進出しても国レベルで中国と距離を置くことになると、中国のビジネス展開が難しくなって行きます。それが、岸田内閣の下でどうなって行くかで決まってくると思います。

 

──注目している第三国、進出する価値がある国はどこだと捉えていらっしゃいますか?

 

門倉貴史 中国はかなり発展しており、もはや世界の工場ではなくなりました。賃金も上がってきているので、コスト削減のために中国に進出するのは、良い戦略ではなくなってきています。

コロナ前から東南アジアに注目する日本の企業が増えていましたが、そのポテンシャルはいまだ変わりはありません。政治的なリスクも東南アジアは小さい。ウィズコロナを見据えると東南アジアの経済との関係が強化されて行くと見ています。

ただ、デルタ株が東南アジアで流行したため、自動車メーカーは生産停止の状況になっており、かなり影響を受けています。逆に言うとそれだけ東南アジアへの依存度が高まってきているという証です。

 

──リスク分散が必要になってくる?

 

門倉貴史 そうです。特に日本の場合、エネルギーがリスク分散されていません。化石燃料のほとんどを中東からの輸入に頼っている。エネルギーの調達先も多様化させる必要があると思います。

また、企業の進出先も、ひとつのエリアに集中すると、何かあったときのリスクが大きい。東南アジアだけでなく、ヨーロッパやアメリカにも進出するなど、分散するのが望ましいと思います。

 

 

──ネックになるのはコストだと思います。東南アジアに求めるのは安い賃金安い土地なのでは?

 

門倉貴史 東南アジアはコストが安いので製造拠点という意味合いがありました。しかし、今は、ミドル階級中産階級が台頭してきています。これからは最終消費地としての魅力も高まってくると考えています。

 

──企業が考えるべきことは他にもありますか?

 

門倉貴史 時代は不確定要素がいろいろあります。しかし、ひとつ確定的なことは、日本の人口は50年先には減っているという事実です。国内消費のマーケットも当然減ってくる。そうしたとき、例えば、消費関連の企業は長期で考えた場合、“どうすれば成長できるか”が、課題として出てきます。

私がよく言っているのは、“商品のマーケット自体は縮小して行くけれど、一方で高齢化は進んで行くので、高齢者の方の消費を取り込むことが大切”です。

高齢者の方はあまり消費をしません。欲しい物が見つからないので消費をしないということもあります。そこに何か工夫をして、高齢者の消費を取り込んで行く。特に高齢化が進んでいる地方では消費関連の企業が成長していけると思います。あとは海外のインバウンド消費を増やして行くのも良いかと思います。

 

──高齢者の方の消費意欲を高める工夫とは?

 

門倉貴史 例えば、高齢者はご自身が消費をしなくとも、お孫さんにはお金を惜しみなく使います。お孫さん向けに魅力的な商品やサービスを提供する。それをおじいちゃんおばあちゃんが買う。そういった流れを作って行くと、高齢者の消費意欲を開拓できると思います。

 

 

2000万円ではまだ足りない

──投資の側面はいかがでしょうか?

 

門倉貴史 コロナショックで日本は相当の財政を支出しているため、将来、借金は増えて行きます。すると財政再建を進めなくてはいけないでしょうから、増税も具体的に検討されるでしょう。

個人の投資家が心配されているのは、“そういったとき、負担はどれぐらい増えるのか”、あるいは政府の財政がこれだけ悪化してくると社会保障にも影響が出てくるでしょうから、“年金が減ってしまうのではないか”、“医療費の自己負担、介護の自己負担は上がるのではないか”。そうなると当然、老後が心配なので“自助資産はどれぐらい持っておかなければならないかの、そのシミュレーションを聞きたい”ということです。

 

──それはとても聞きたいですね。個人としては切実な問題だと思います。

 

門倉貴史 岸田内閣が社会保障制度をどう維持して行くのかのビジョンを明示してくれると、かなり不安感がなくなるので消費のマインドが良くなって、消費が増える効果が期待できると思います。

──個人投資家に対しては、どのような講演をされていらっしゃいますか?

 

門倉貴史 これから高齢化もどんどん進んでいきますので、退職した後にかなりの生活費がかかってくることが予想されます。年金が減額になってしまうと退職された方にとっては危機的な状況になってしまいます。

寿命が延びていくなか、退職した時点でどれぐらい貯金が必要か。そこから逆算してどれぐらいのペースで貯金を増やしていけばいいのと言ったご質問や、資産運用するにはどういった方法がいいのかなどです。

 

──老後2000万円問題が今なお、切実ということですね。

 

門倉貴史 私の試算ですと2000万円ではとても無理で、60歳の時点で3000万円ぐらいは必要なのかなと思っています。

 

──株はどうしょうか? V字回復とともに平均株価も上がっていくのでしょうか?

 

門倉貴史 景気が回復してくれば、株価も上がりやすくなると思います。今までは期待を先取りして株価が上がっていた。今の段階で見るとむしろ下げリスクの方が大きい。金融緩和を長い期間続けてきたことでお金が溢れている状態です。その溢れたお金が株式市場に流れ込んできているという側面もあると思います。

 

──個人投資家はどう動けばいいのでしょう?

 

門倉貴史 個人投資家の方はできるだけロングスパンで運用する。10年、20年、30年。それぐらいの期間で運用することを大前提としていただきたいと思います。しかも、さまざまな金融商品や投資商品に分散して投資するのが、リスクを最小限にしてリターンを大きくするコツになると思います。

コロナ渦で将来の生活に対する不安が高まり、資産運用に関するオンライン講演の依頼も増えています。

 

──今後、講演はオンラインがこのまま定着し、増えて行くのでしょうか?

 

門倉貴史 どうでしょう。微妙ですね。それはテレワークが普及し、定着するかという話にも関係してくると思います。緊急事態宣言が出たとき、テレワークの普及率は高まりました。しかし実際に行かないと仕事にならないなど、テレワークの問題点も出てきています。中小企業の場合にはコストもかかる。

だから今、テレワーク率がかなり下がってきています。コロナ禍が収束するとまた、講演会もリアルの対面式になる気がしないでもないですね。

 

──今後、講演では、どのようなメッセージを発信して行きたいとお考えですか?

 

門倉貴史 「経済」というテーマでは、とっつきにくいとか、分かりづらいと言う声が多いので、できるだけ身近な例を挙げながらお話をすることを心がけています。時事問題を入れながら、分かりやすく解説して行きたいと思っています。あと、出演したテレビでのエピソードも、場を温めるという意味合いで、お話ししています。

 

──日本はこれからどうなるか分からないとしても、門倉さんは明るいと考えていらっしゃる?

 

門倉貴史 国内のマーケットが縮小して行くなかにあっても、まだまだ活路は開けて行けると考えています。

 

──貴重なお話し、ありがとうございました。

 

 

 

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