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澤円 講演会講師インタビュー

元日本マイクロソフト(株)業務執行役員。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動と並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年に(株)圓窓を設立。数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。琉球大学・武蔵野大学客員教員も務める。最近DXの講演ではひっぱりだこで、多拠点生活者でもある澤円さんにお話を伺った。

(text:大橋博之、photo:小野綾子)

この世に有望ではない企業はない

──澤さんは現在、どのようなお仕事をされているのでしょうか?

 

澤円 もともと、ITコンサルタントでしたが、2020年に独立し、圓窓を設立してからは、仕事の6割は企業の顧問やアドバイザー、経営者の相談役です。テーマとして大きいのはDX。それからマネージャーや新人の人材育成。PRのお手伝いなどもやっています。

 

──顧問先にはどのような企業があるのですか?

 

澤円 日立製作所、デジタルシフト、SBテクノロジー、鹿島建設、ジェイエイシーリクルートメント、ファストドクター、ユームテクノロジージャパン、m-lab、神奈川ダイハツ販売など、大手企業からベンチャーと様々です。あと、琉球大学の客員教授と武蔵野大学の専任教員を務めています。

 

──顧問先で、どこが有望というのはありますか?

 

澤円 僕は、この世に有望ではない企業はないと思っています。それに僕は評論家ではないので、「ここは有望です」と偉そうなことを言う立場ではありません。どの企業も可能性はあるし、やりようによっては化けると思っています。

 

──では、顧問を受けるときの基準はなんなのでしょうか?

 

澤円 僕である必要があるかどうかです。僕でなくても良いことを引き受けても仕方はないですからね。

 

 

未来をどうするかを話し合う会議を増やすこと

──講演は多いと聞きます。

 

澤円 去年1年間で340回はやりました。

 

──それは凄まじいですね。

 

澤円 最近はほぼオンラインなので移動がないためこのような回数も可能です。多いときは1日に5、6件入ることもありますね。

 

 ──講演ではどのようなテーマが多いのですか?

 

澤円 圧倒的にDX(デジタルトランスフォーメーション)です。世間で「DX、DXと騒がれているけれど、どこから手を付けたらいいのか分からない」という企業もあります。また、「具体的なサービスやアプローチはある程度固まって来たけれど、もう一つ何かが足りていない」という企業。それから「ある程度、進めているのだけれど、本当にこれで良いのだろうか」と悩んでいる企業など、様々なフェーズがあります。

講演では、DXに限らず相手が何に困っているかを確認し、どういう話をすれば良いのか事前に確認をします。また、僕が講演することで終わったときに先方がどういう状態になることが成功なのか、ということも話し合います。何故なら講演をすることが目的ではなく、講演を聞いてくれたことで何かしらの変化が訪れることが目的だからです。「どういう状態になってることがハッピーですか」ということは必ず問いかけるようにしています。

 

──年に340回もこなす講演で、毎回、それを確認するのですか?

 

澤円 ほかにたくさん登壇者がいるようなイベントの1セッションを任されたなら、イベントの目的に則しますが、個別の講演だとしっかりとヒヤリングをします。

僕との窓口は企画の人だけど、実際に講演を聞くのは社長を始めとした役員、社員となった場合、企画の方の目的と聴講者の期待するものにギャップがある場合もあります。講演の内容よりむしろ、その確認の方が大事だと考えています。

実は僕が使うスライドは情報量が少ないんです。その分、語る内容を変化させています。初心者なら噛み砕いて話す。逆にスキルの高い人ならそれに合わせるといった具合です。

 

──DXテーマではどのようなことをお話されるのですか?

 

 澤円 SF映画などで描かれていた当時斬新だったテクノロジーは、現代ではいくつも実用化されています。テクノロジーは確実に進化をしていますが、人はどうでしょうか。これから出てくるテクノロジーに注目せず、今あるものでも実現できることがたくさんあるのに、使っていませんよね。

COVID‑19 (新型コロナウイルス感染症)によって世界がリセットされたわけですが、それによってどのようなインパクトがあったかというと、人間が移動できなくなったことです。しかし、人類には残された道があり、それはデータ通信でした。だから在宅でリモートワークができ、ビジネスも継続できました。結果として、COVID‑19によってデータ通信は「人類のインフラ」になりました。

皆さん、ECサイトで「買い物をしている」と考えていると思いますが、これはある意味勘違いで、その時点で買っているのはコンテンツなんです。ECサイトに表示されている情報は本物だと信じているからクリックして、こともあろうにクレジットカード番号を入力する。つまり、人類は進化してデータを信じる生き物になっているということです。

データを信じるといいことがいっぱいあって、例えば、アポロが月に行きました。アポロ計画で不可欠だったものがシミュレーションなんです。データによるシミュレーションを徹底的にやったことにより、ロケットは真っ直ぐ飛ぶ、月まで届く、月から離陸すればちゃんと帰ってこられる、これ全部シミュレーションの結果なんです。シミュレーションなしに、「とりあえずアームストロングさん真っ直ぐ飛ぶかわからないけど行ってみようか!」とはならない。つまりデータを信じることができたからロケットを飛ばせたんです。

DXってどういうことかというと、データを信じる生き物として、それを利用して世界を広げましょうよという話なのですが、普段、ECサイトでクレジットカード番号を気軽に入力するにもかかわらず、会社では未だに紙を使う。社員はスマホを使っているのに会社では固定電話とかガラケーとか、おかしいですから。

人間が意思を持って、紙をやめる、固定電話をやめる、ということをしないと、DXのトランスフォーメーションなんてできない。という話を焚き付けます(笑)。

 

──会社の方が時代遅れなんですね。

 

 澤円 アメリカではIT人材と呼ばれている人は約420万人います。ところが日本は約105万人でアメリカの1/4しかいない。アメリカの人口は日本の約3倍ですから、比率からすると少なすぎる。かつ、アメリカのIT人材は事業会社側に6割以上いるのに対し、日本は3割以下しかいない。

つまり7割はITベンダー側にいるので、売ってくる側の言うことを聞くという図式になりやすいのと経営者がIT音痴が多いこと。経営者でITのことを分かっている人がほとんどいない。言われるままに買ってしまう。しかも、安く買い叩くことが正しいと思っている。安く買い叩くと当然どこかに犠牲が生じることが多いにもかかわらず、バズワードに踊らさせれてませんか?という問いかけをします。

 

──DXはまず、会社が変わることからスタートですね。

 

澤円 まず、「やめることを決めましょう」というおはなしをします。たとえば、惰性でやっているミーティングなんてやめたらいいんじゃないかと言います。ホウレンソウ(報告、連絡、相談)ってありますよね。報告、連絡、相談に等しく時間をかけるから時間がなくなるんです。

僕は、報告=過去、連絡=現在、相談=未来に分けています。そして、未来に時間をかけてくださいとお話しします。報告は過去のことです。過去は変わらないから変えられない状態にしていつでも見られる状態にするデジタルが得意な部分をIT化すればいい。そうすればデータの間違いも改ざんも起こりません。不即時性の連絡の最悪のツールは電話だと言っています。集中力切られますし、耳と口も独占されちゃいます。これもIT化できます。

となると、報告、連絡のための会議がないかチェックしてもらって、それをやめることによって時間ができるから、できた時間を有効活用したらいいんじゃないでしょうかとお話しします。

でもこれらはDXの下準備にしか過ぎません。

 

──よく分かります。

 

澤円 紙やミーティングなどで補ってたものをデジタルに置き換えるのはデジタライゼーションです。まずそれができないのにDXはできっこありません。基盤がないわけだから。だから基盤を作るという意味で、デジタル化されていないものをデジタライズしましょうと。報告はデータを会議で知るのではなく、常に見られるようにしておけばいいんです。だって、データを信じられる生き物なんですから(笑)

 

──一番大事な相談、未来に時間を使うべきですよね。

 

澤円 相談の部分も、特にトラブルが起きたときに、「なんで?」と問い詰めないでください、と言います。「何があったの?」と問いかけるようにお伝えしています。

こういうときは人を責めるのではなく、何が障害だったか、何が問題だったのか、その「何」を論点にして、解決していこうというふうにして、心理的安全性を保つことが必要だからです。

僕が講演をしたことで、社長さんがその場で役員会議をやめると決めた企業がありました。社員たちはどよめきました(笑)。「社長はノリで言ってんだろう」と思ったら、後日、その社長から本当にやめたと聞きました。

でも、会議をやめたことで何も問題は起きなかったそうです。役員会議をやめるとどうなるかというと、役員の時間が増えるだけではないんです。役員の部下は会議のための会議や資料を作ったり、準備をしたりが必要になります。そんな人達の時間の余裕も増えるんです。

 

──会議のために資料を作って、コピーして製本するのに徹夜するという話もよく聞きます。

 

 澤円 社内で起こっていることを役員さん方が、みんな良かれと思ってやっていることが大いに無駄だということに気づかない。その結果トップの間違った判断につながる危険性は大いにあると思っています。

今はデジタライゼーションができていなくて、DXにいきなり取りかかれる準備ができない企業が多いと思っています。ただデジタライゼーションには時間をかける必要はありません。DXは今やっているビジネスを思い切りトランスフォーム(変化)させるわけだから、全く違うことを始められる体制を作るくらいの気持ちで大きく変えていきましょうとお話ししています。

 

──なるほど、澤さんの講演では、そんな間違いを指摘してくれるわけですね。

 

澤円 僕は答えを持っているわけではありません。トランスフォームする先は未来のこと。僕は未来を予言することはできないからです。だから、無駄な会議をやめて、未来をどうするかという会議を増やすことがとても大事ですね。同じ会議をするのなら、そちらの方が面白いじゃないですか。

 

 

多拠点生活はリフレッシュできる

──澤さんは2拠点生活をされているのだとか。

 

澤円 拠点としては仕事専用の部屋など含めると6か所ありますが、住居としては3拠点、東京と千葉と長野の軽井沢があります。

千葉の拠点は九十九里浜の海の近くです。なぜ、海の近くなのかというと単純に「海沿いに住みたかったから」というのが理由です。皆は僕の髪型を見て「サーフィンですか?」というのですが、僕はサーフィンはやったことがありません(笑)。最初、賃貸物件を借りるつもりだったのですが、賃貸だと自由が利かないので購入することにしました。

軽井沢に拠点を作ったのは、軽井沢に移住した友人から「ご近所さんになってくれ」と頼まれたからです(笑)。東京都心の1DKのマンションの家賃で庭付き一戸建てが借りられるというので決めました。

 

──3拠点生活の目的は何なのですか?

 

澤円 かの有名な大前研一さんは「人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える、この三つの要素でしか人間は変わらない」と語っていますが、本当にそうだと思います。時間配分に関しては、僕は刹那的なのでめちゃくちゃです。付き合う人は基本的に面白い人としか付き合っていないので大丈夫。後は住む場所だと。拠点を分けて行ったり来たりするのは面白いんじゃないかと思ったんです。

 

──同じ場所にいるとマンネリ化しますしね。

 

 澤円 コロナで旅行に行けなくなりました。旅行は脳みそのデフラグにとても良かったんです。そのことは旅行に行けなくなったことでよく分かりました。今まで海外旅行に年に2、3回は行っていたのですが、行けなくなると発想が偏るようになりました。思考が固まってきます。

あと、東京は街の中に看板が溢れていて情報量が多すぎるんです。千葉だと看板が目に入らない。海岸に行くと空と海と砂浜しかない。何も情報がない。そこには癒しのパワーがあります。

千葉や軽井沢はスケジュールの隙間にフラっと行っています。仕事もオンラインが多いので、居場所を自由に選べています。

 

──良かった点は?

 

澤円 やはり、リセットできることです。あと、視野が広がる。オーバーに聞こえるかもしれませんが、人生の考え方が変わります。東京にいると自分を常にアップデートしなければいけないというプレッシャーを抱いていました。でも、田舎だとみんなのんびりと生活をしている。そんな生活でも大丈夫なんだと知ることができます。

 

 

今は誰にでもチャンスがある時代

──今後はこんな話をして行きたいということはありますか?

 

澤円 「メタバース」を語ってもいいかなと考えています。それと、メタバース空間のなかでの講演や情報共有を増やして行きたいですね。メタバースという新しい環境のなかで仕事をしてみたいと思います。

 

──メタバースに関心を持つ企業は増えていますか?

 

澤円 増えていますね。「メタバースとよく聞くけれど、なんだか分からない」という人が多いんです。僕の講演は初心者向けなので、「いまさら聞けないけど知りたい」という人に話をするのが得意なんです(笑)。Web3.0(スリー)も同じです。

メタバースやWeb3.0を完全に理解している人はすごく少ない。ビジネスで活かしている人はほぼゼロです。すると誰にでもチャンスがあります。今はそういう面白いフェーズです。

面白いことをやりたいという人がいて、僕にお手伝いができるのなら、喜んで協力させていただきます。

 

──貴重なお話し、ありがとうございました。

 

 

 

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