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石川和男 講演会講師インタビュー

1965年福岡県生まれ。東京大学工学部卒業後に通商産業省(現・経済産業省)に入省。資源エネルギー庁、中小企業庁、大臣官房等を歴任。現在は政策アナリストとして社会保障関連産業政策論、エネルギー政策論、公的金融論、安全網論、行政改革論などに関する政策研究や提言を行っています。講演依頼Speakers.jpの講演会でも人気の石川和男さんに、未来の地球環境へと繋がる「カーボンニュートラル」の実現と課題について、また日本のエネルギー事情をわかりやすくお話していただきました。

(text:加藤みのり、photo:増本雅人)

もともとエネルギー政策に興味を持っていなかった

――石川さんがエネルギー政策に関わるようになった経緯を教えて下さい。

石川和男 きっかけからお話すると、東京大学に入学して資源開発工学科を専攻していたんです。というと、すでに志を持って前に進んでいるような、格好いい感じがするでしょう? でも、もともと石油や原子力に興味を持っていたわけじゃないんです。 実際には、流れに身を任せ、入ったのが当時は人気のない資源開発工学科だったんです。 

入学後は、社会勉強に熱が入り過ぎちゃって、成績がいっきにガタンと落ちてしまいました。ところが、人生というのは面白いというか何が起こるかわかりませんね(笑)。大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)の資源エネルギー庁に入庁することになりまして、本格的にエネルギー関係の政策に深く携わらせていただくようになったのはそれからですね。僕が入庁したのは1989年でバブル全盛期で、日本全体が好景気で浮かれている時代でしたから、資源やエネルギー政策に対する関心があまりありませんでした。 

日本がエネルギー問題に関心を寄せ始めたのは2011年の3月11日に起きた東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故ですね。それがいまだに尾を引いています。メディアが安易に恐怖心を煽るようなニュースばかり取り上げたせいで「原子力は怖い」というイメージが根付いてしまいました。西日本の一部の原発は再稼働が許されていますが、未だに東日本の全ての原発は強制的に稼働を停止させられています。だから電気代も西日本は安いですが東日本は高いでしょう。僕はそこが専門なのでハッキリ言いますが、原子力は危なくありません。 

現代は、メディアやネットの自虐的でふわふわした風評に近いものが蔓延していて、皆さんそれに毒され過ぎているなと思っています。確かにデフレが続いていますし、ここ30年の経済の動きを他国と比較してみると、アメリカやヨーロッパ、中国は平均賃金もGDPも延びています。一方日本はというと、バブル期は圧倒的にアメリカに近い世界第2位でしたが、今は中国に抜かされ、そのうちドイツやインドにも抜かされそうです。 

そこだけに意識を向けてしまうと萎縮してしまう人も多いでしょう。でも、こんな時だからこそ政治的指導者やメディアはもっとポジティブな意見を述べていったほうがいいと思います。経済の状況について言うと、今後5年~10年のうちに、この国の需要を爆発させるような分野を意図的に作る必要があると思います。 

今年5月、脱炭素社会の実現に向けた新法GX(グリーントランスフォーメーション)推進法が成立し、10年間で20兆円規模となる新しい国債『GX経済移行債』が発行できるようになりました。エネルギー・原材料の脱炭素化と収益性向上等に資する革新的な技術開発や設備投資等を支援するという目論見ですが、これだけでもこの先10年、年間2兆円の経済対策になります。エネルギーだけに限らず、政府はこうした経済対策をどんどん打ったほうがいいと思いますね。

 

 ――最近、よく耳にする「カーボンニュートラル」というワードについて簡単に説明していただけますか?

石川和男 カーボンニュートラルというのは、気候変動・異常気象の原因とされているCO2、メタン、N2O(亜酸化窒素)、フロンガスを含む温室効果ガスの排出量から吸収量と除去量を相殺してゼロに近づけようということです。 

ですから、誤解されがちな「炭素を出さない」という事ではありません。現実的に人類は化石燃料が主力エネルギーなので炭素を全く出さない生活するというのは無理な話です。けれども、一方で森林などCO2の吸収源を作ったり、風力発電や太陽光発電でCO2が排出されないエネルギーを同時に使っていくという取り組みによって、プラスマイナスゼロを目標にするという考え方なのです。

 

――日本では2050年にカーボンニュートラル達成を目標に掲げていますね。

石川和男 はい。でも、実際にはなかなか難しいと思いますね。世界は再生可能エネルギーが主流だという記事を多く目にしますが、総合エネルギーの統計を見れば一目瞭然で違う事がわかります。日本を含め、世界は化石燃料に依存していますから圧倒的に石油と石炭が主力なのです。次に天然ガスで、その次に桁が下がって水力と原子力。風力や太陽光はさらに桁が下がった位置にあるというのが現実です。

 

――そんななか、私たち個人や企業が取り組むべき事は?

石川和男 講演会でも質問を受けてお話しすることもありますが、個人で行うべき事は、やはり省エネでしょう。無駄な電気やガスを使わない。例えば、駐車場にしばらく車を停める場合はなるべくエンジンを切るなど、小さな事ですけれどコツコツと積み重ねていくことが大切だと思います。それから、これは企業側の努力にも関わってくる事ですが、いかに省エネ効果の高い商品を購入したりサービスを利用したりするか。例えば、冷蔵庫やエアコンを購入するにしても、従来製品に比べて省エネ率が何パーセント上がっているかとか、そういった消費者としての目を養うというところも重要です。

一方で企業側の役割としては、カーボンニュートラルビジネスとして需要のある製品を開発していくことだと思います。言葉は悪いかもしれませんが、金儲けの手段として使う。環境に配慮した取り組みを行う企業は消費者側からエコフレンドリーな優良企業としての評価を高めますから、カーボンニュートラルを推進していくことはビジネスチャンスでもあるんです。

将来的には数学オリンピックや物理オリンピックに出場する子供たちを増やしたい

――では、石川さんが注目している新たな分野や産業とは?

 

石川和男 たくさんありますよ(笑)。僕はエネルギー屋ですから、1番期待しているのは新型原子炉です。簡単に説明すると、安全性が今よりも格段に高くなって尚且つ小型化されたものです。

2番目に火力発電。日本は火力の効率化技術が世界的にもナンバーワンなのです。その優れた技術を今後は国外に輸出して定着させていくことができれば日本経済にも大いに貢献すると思っています。

3番目は「ペロブスカイト」という太陽電池。いまの太陽光パネルって硝子で出来ていて硬く重たいじゃないですか。ところが、「ペロブスカイト」は極薄のフィルムで出来ているのでペラペラで軽量なので、利用範囲が格段に広い。自然エネルギー活用の概念を変える可能性を持っています。

4番目は少し先の話になると思いますが、水素を燃料とした電池の軽量化です。水素はCO2を排出しませんし、自動車や船に

搭載すればカーボンニュートラルビジネスとしても大きな期待が持てます。

5番目が今後、もっと発展するであろうドローンによる物流の空輸です。例えば災害時に道路が遮断されたり電力の供給がストップしていたりするなか、ドローンを使えば被災地に支援物資を届ける事も出来ますし、高齢者のお宅に必要な品を届ける事が可能です。将来に備え、子供の頃からドローンの操作に慣れ親しむ教育があってもいいと思いますね。

 

――教育という言葉がありましたが、石川さんは「算数脳育研究会」の代表でもいらっしゃいますよね。

石川和男 そうです。教材は算数のパズルを基本とした思考療法 活脳パズルを用いています。

将来的に数学オリンピックや物理オリンピックに出場する子供たちを増やしていきたいなと思っています。というのも、僕自身が子供の頃、まったく数学に歯が立たなかった人間なので(苦笑)。一応、理系でしたし、大学に入るまではトップクラスでした。でも、所詮、受験で勝ち得たトップなんてたかがしれていて、数学オリンピックや物理オリンピッククラスとなると、もう格が全然違います。それはスポーツ選手にもいえることかもしれないですが、もともと持っている資質を子供の頃からどんどん磨いていくという事が大切なんじゃないかと思いす。いまは少子化ではありますが、数学脳を鍛えた子供たちをたくさん育てて、フィールズ賞を受賞できる日本人を輩出したいですね。

また、数学脳については私が講演会でお話しさせていただいている内容に通じるものがあるんです。

 

日本が元気になるような分野を探していきたい

――講演会ではどのようなお話をされていらっしゃるんですか?

石川和男 やっぱりエネルギーに関するテーマが多いですね。あとは経済、財政、社会保障などです。講演のご依頼内容によりますが、皆さんから寄せられる質問のなかで圧倒的に多いのが「日本の未来はどうなりますか?」というお声です。そこで、まず僕が講演会で必ず最初にお伝えするのは、日本の人口構成です。「2065年に日本の人口は8,000万人になりますよ」という事を必ずお話させていただきます。それから平均寿命および健康寿命の現状と見通しを表したグラフもお見せします。

なぜかと言うと、皆さんに観念論ではなく数字で、データで物事を考えましょうという事をお伝えしたいからです。数字で考えると、物事のどちらが良いか選択する際に天秤にかけやすい。講演会ではまず、正確な情報を数字で知っていただき、そこから解決策を考えていきましょうという話をさせていただいています。あとは、僕がもともと官僚だから、講演会でも、たまに“天下り問題”についてもお話することがあります(笑)。結構、これが好評で、皆さん「面白い」って言って下さるんです。やっぱり官僚出身じゃなきゃ知らない世界ですからね。講演会とはいえ、きっと皆さんも興味深い話でしょうから包み隠さずズバッと言っちゃいます(笑)。今も経済産業省とは仲が良いから、たまに「石川さん、こんな話をしたでしょう」なんて言われる事があります。「僕は嘘を言ってないよ」って返すと、「嘘を言っていないから困るんですよ」なんて言われます(笑)。

 

――今後、講演会を含め、どのような活動をされていきたいですか?

石川和男 率直に言うと、日本が元気になる分野を探していきたいですね。日本が今後、10年以内に伸びる分野に投資をしたり、あるいは投資を促進するような政治提言を講演会でもそれ以外の場でもしていきたいです。

 

――貴重なお話をどうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

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