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大桃美代子 講演会講師インタビュー

ニュース番組をはじめ、料理、クイズ、バラエティ、情報番組など幅広い分野で活躍されているタレントの大桃美代子さん。2004年、新潟県魚沼市の実家へ帰省中に「中越地震」に被災し、2005年11月に「魚沼特使」に任命され復興のために活動しています。
雑穀エキスパート、野菜ソムリエ、おさかなマイスターなどの資格を取得し、食育や農業に関心を持つ大桃さんに、農業や町おこし・地域振興の課題や問題点について、また、好奇心はどこから沸いてくるのか、詳しく話を伺いました。

(text:伊藤秋廣、photo:吉田将史)

農業への興味は、中越地震がきっかけ

──講演会の依頼を多く受けていらっしゃると思いますが、主にどのような企業・団体から講演依頼を受けていらっしゃいますか?

 

大桃美代子大桃美代子:現在、出身地である新潟県魚沼市でお米を作っていることから、農業や自然環境、あるいは食育をテーマとしたお話を中心に講演をさせていただいています。実際に農業に従事されている方々はもちろん、人間が生きていくうえで必要不可欠な“食”という切り口で、「オーガニックフェスタ」というようなイベントで、美容や健康への意識が高い方々が集まる機会にお時間をいただいたり、医療関係者の皆様から求められて、お話をさせていただくこともあります。

食育活動に関しましては、1日350gの野菜を摂取することを推進するファイブ・ア・デイ協会さんとご一緒させていただきながら、その摂取法や適正な量の把握の仕方などを、お子様だけでなく、お母様方にもお話をさせていただくんですね。子どもは吸収力があるので、私の話をすぐに理解してくれるのですが、逆に大人の方がなかなか馴染めないようで……、子どもたちから「お母さん、野菜が足りてないよ」と言われたりするので困ります、なんて声をいただくこともあります。子ども時代からのバランスの良い食生活は、大人になってからの健康な食生活に繋がってくるので、その大切さをしっかり伝えていきたいと思っています。

 

──農業に興味を持ったきっかけを教えてください。

 

大桃:2004年に発生した中越地震がきっかけとなりました。私が生まれ育った町も被災したのですが、そこから一年経過したら報道がほぼされなくなり、“もう被災地は復興したのではないか”と勘違いされるくらいに世間の関心が薄まってしまったかのように感じたんですね。ところが、まだまだ困っている方や頑張っている方がいっぱいいらっしゃる。その姿を地元・魚沼から発信する必要があるのではと思っていたんです。

地元で、しかも一人でできることっていったい何だろう? と考えたときに、私の実家が農業を営み、父が兼業でお米を作っていましたので、「これだったら一人でできるのではないか」と思い至ったんです。ところが未経験者が一人でお米を作るのは、たやすいことではなくて、現在は地元の農業法人の皆さんにご協力いただきながら、農地管理をしていただいています。もちろん、私も実際に田に出て、草取りや田植え、稲刈りを一緒にさせていただきながら、食べる喜び、作る喜びを実感しています。環境に優しい米づくりを進めるために草取りという作業が必要で、しかも手間がかかるということも身をもって理解しました。

私はタレントなので、どうすれば皆さんに発信ができて、どのように見せれば注目を集められるかといった見識を持っています。世間から注目を集められれば、農業に従事している方々のモチベーションがあがって、新たな取り組みにチャレンジしよう、継続して頑張ろう、という気持ちが生まれます。そういった形で、地元の復興に貢献したいと思ったんです。

 

──食育に興味を持ったきっかけを教えてください。

 

大桃美代子:私自身が元々、食に対して関心を持っていたことに起因します。お米を生産するにあたり、様々な調査を行ったのですが、日本でも主食とされてきたお米を食べる量が減っているという現状を目の当たりにしました。その要因に、「お米は太る」という間違った認識や、炭水化物抜きダイエットの流行があげられます。炭水化物を極端に抜いてしまうと、男性も女性も便秘になってしまうんですね。一瞬は痩せたとしても、バランスを欠くことによって、容易にリバウンドしてしまう。特に小さな子どもたちは成長期なので、無理なダイエットをすると、大人になってから骨が弱くなってしまったり、女性の場合は子どもができづらいカラダになってしまったりと弊害が生じる可能性があります。大切な時期にしっかり栄養を摂取すること、バランスよく食べることが重要であることを伝えたいと思っています。

もちろん、こういった食育の知識は子どもだけではなく、そのご両親にも知っていただいて、過度なダイエットが子どもたちの身体を壊し、大人になってからの健康な生活、寿命を短くしてしまうのだということを正しく理解し、それを子供たちに伝えていただきたいと思うんです。

 

 

見渡せば地域活性のヒントはたくさん転がっている

──「ちょっと農業してきます」というタイトルで講演を行っていらっしゃいますが、どのようなことを講演していますか?

 

大桃美代子大桃美代子:2008年に出版させていただいた本「ちょっと農業してきます」をベースに、私の農業体験を、日本全国、様々な農産地に訪問してお話をさせていただきます。農家の皆さんと交流を図っていると、例えばトマトを作っているところはお米の作り方を知らなかったり、キャベツを作っている方はゴボウの作り方を知らなかったり、同じ農家と言っても様々で、それぞれに作物や農法が異なっていることに気付かされるんですね。農業ってコミュニケーションツールのひとつだと感じていて、どこに行っても、どのような年齢層の方であっても、農業に関係している方であれば皆、話をしているだけで親近感が沸いてくるのです。

そういったお話をお聞きするのはとても楽しいので、最近では日本国内に留まることなく、韓国やベトナム、タイにも農業取材に出かけています。いずれも米食文化を有する国ではありますが、それぞれにお米の作り方も違います。お米だけではなく同じ品種の作物であっても、作り方や場所によって成果物が大きく変わってきて、そのような地域差があるからこそ名産品が生まれ、名産地が生まれたりするのですが、韓国ではそれが国策として進められているんです。大邱(テグ)というリンゴの産地が生まれたのは、水に困っている地域で水崎林太郎さんという日本の技術者が灌漑用水を作ったことがきっかけになったと聞いています。日本の農業学者が韓国のキムチで使われている白菜の品種改良を行ったお話とを併せて講演会で披露させていただくと、皆さん「エーッ!」と驚かれますし、その講演を通して日本と韓国の農業を通じての交流や繋がりを実感していただけます。

 

──地域の問題にも着目されていらっしゃいますね。

 

大桃美代子:地域活性への興味もやはり、中越地震の経験から生まれました。私は農業から始めましたが、被災地の中で“復興”という目的意識を共有しながら、商店街を被災する以前よりもっと素晴らしいものにしよう、貧困の子供たちをどうやって救っていこうか、ということを真剣に考える動きが生まれてきました。現在、共同通信社と地方新聞社が合同で主催している「地域再生大賞」の選考委員として、地域復興、活性化のために頑張っている団体の様々な成功事例を見させていただいていることで、とても自分の勉強になっていると感じています。

特に最近は、貧困・高齢化という背景の中で、地域が抱える問題はさらに深刻化していると感じています。その一方で、高齢化を逆手にとって上手に活用している事例や、後継者不足が叫ばれる中、移住者にとって魅力ある地域づくりを成功させたケースなど、周りを見渡せばさまざまな活性化のヒントが転がっています。もちろん農業を軸としてお話をさせていただきますが、そこから広がり地域活性、地方の経済復興の領域にも注目してお伝えします。

 

──大桃さんといえば、様々な資格もお持ちで、その博識ぶりから「大桃博士」の愛称で親しまれていらっしゃいます。博識になるためには相当な好奇心をお持ちかと思いますが、「知りたい・学びたい」という好奇心はどこから沸いてくるのでしょうか?

 

大桃美代子大桃美代子:自分では好奇心旺盛とは思っていなくて、「行きたいと思ったら行く」だけといいますか、人生は短く活動できる時間には限りがあると思っているので、多少の時間の余裕ができたら、例え一泊であっても海外に出かけてしまいますね。会社員の方ですと、会社や部署、家庭など支えるものがたくさんあって、なかなか自由に動きが取れないかもしれませんが、私はフリーランスで活動していますし、自らが動いたことが言葉になっていくといいますか、研究者とは違って、この目で見ないと言葉が出てこない人間なので、フィールドワークを通じてお話を聞いて、そこで得た、生きている地元のデータを元にお話しをさせていただきます。

目で見るだけでなく、五感でフルに感じたいんです。そこに足を踏みいれなければ感動は生まれませんし、感動してはじめてストンと納得するというか、感動がないと人に話した時に「嘘だ」と思われるのではないか、本当ではないと思われたら嫌だという気持ちがあるんです。女優は“虚”を演じる存在ではありますが、単純に“虚”を演じているだけではうまく表現できず、私は“その人”になりきるために最低一か月半は役柄と同じ生活を送っていたんです。

例えばピアニストだったらピアノの練習をして、シェフだったら本物のシェフに付いてお店で働いたりして、はじめて体現できるなど、どちらかというと体験派の人間なんですよね。学問の知識をデータでわかりやすく説明する人間ではないので、現場に足を運ばなければアウトプットできないし、自分が感動しているから人に感動をお届けすることができるのだと思っているのです。

 

 

町おこしには、人格者であるキーマンが必ず必要

──山積する農業や地域の問題を解決するためには、どのような取り組みが必要だと考えていらっしゃいますか?

 

大桃美代子大桃美代子:農家の方たちとお仕事したりお話を聞かせていただいたりする機会が多いのですが、そこで様々な問題があることに気づかされます。皆さんもこの現状をどうにか打破したいと考え、例えばネットワークを構築して力をつけるべきか、小さな農業として生きていくべきか、あるいはTPPにどう対応すべきかなど様々な選択肢の中を手探りしながら、新しい農業の道を探っていらっしゃいます。例えば、国策のひとつとして用意されている補助金が使いづらいため、うまく活用しきれておらず、その一方で、政府は農業活性化を成長戦略の一つとして、大きな目玉政策のように扱っている。そのギャップの大きさを感じずにいられません。

また現在、国は大規模農家を作っていこうとしているのですが、ここでも問題が生じています。大規模農家になれる人は良いのですが、もちろん、高齢化のため大規模農家になる道をあきらめるどころか、機械が壊れたらやめるとおっしゃる方が多いのですね。そうなると、どんどん農地が空いてしまいます。じつは大規模化したい人は土地の集約も任されてしまうのですが、どうしても飛び地になってしまうため、移動による時間ロスが生じてしまう。この土地とこの土地を交換して、大きな農地にしましょうといった動きも出ているのですが、農家の方々は自分が育てあげてきた土地に思い入れがあって、「取れ高も悪い、日当たりも悪い土地と交換するのは嫌だ」とおっしゃる。そこをうまく調整し交渉するネゴシエーターが不足しているのです。農家さん同士で話をすると、どうしてもうまくまとまらないので、『農地バンク』のような中間管理機構がネゴシエーターとしての役割を果たすべきだと考えます。

地域振興の現場においても、様々な問題が生じているのですが、行政ではカバーできない部分を、地元発信のNPO法人が担っているパターンが多く見られます。岡山県の笠岡諸島にある「かさおか島づくり海社」は、高齢の方が買いものができない時、海を渡って大手スーパーで買い物をして届けるということをやったり、幼稚園がないからと保育施設を経営したりといった、島の困りごとを一手に引き受けるNPO法人です。その取り組みが評価され2015年度の「地域再生大賞」に選出されています。これからは、各地域でこういう取り組みが必要になってくると思っているんですね。高齢化に伴い行政サービスも行き届かなくなる可能性があるので、こういった“お困りごと解決屋さん”の存在は日本各地で必要になってくると思うんです。高齢化と人口減少が進んでいる離島だからこそ、こういった先進的なアイデアが生まれる。そういった事例をこの目で見て、そして感じて、皆さんにお伝えしたいと思っています。

 

大桃美代子──地域活性化を円滑に進めるために、もっとも大切な要素は何だと思われますか? 

 

大桃美代子:地域活性化のスタートアップ時には、必ずそこにキーマンが存在しています。軸となる人がいて、「私財を投げ打ってでも進めるのだ」という方がいて、そこにフォロワーが生まれる、その方々が集まって団体になってはじめて継続していくという流れがあります。ファーストステージに登場するキーマンやフォロワーの根底には強力な郷土愛があり、この地域で何とかしたい、この困りごとをなんとかしたいという、思いがあることが絶対的な条件になります。キーマンがいない土地は逆に存続が危ぶまれますよね。そのままでいれば、他の土地に移住したほうが楽に暮らせるという話になってしまうので……。キーマンが人格者であるということが重要だったりするのですね。そして、その取り組みをやりとげる強い意志も必要です。

地域で新しい取り組みをやろうとすると、どうしても抵抗勢力というか、昔からの保守的な反発力が働くので、時にはそれに負けてしまう人もいるのですけれど、それでは新しいことが一切生まれなくなってしまいます。抵抗勢力があろうと、それでもやりとげるのだと強い意志を持って進んでいけば、「あいつ、なんか面白いことやっているな」と応援してくれる人が出てきて、そして徐々に変わっていくものです。キーマンとなる方が一生懸命に取り組んでいる姿勢を見せるというのがとても重要なのですね。ですから、私がお米を作っている姿を見てもらいたいと思うんです。私が行って一緒にやりましょうと、苗を手で植えて昔ながらの農法を踏襲して草取りをする。もちろん、農薬を使えば楽ですよ。しっかり基準値を守って蒔いた農薬を一度使うのと使わないのでは、草の生え方が全然違うんです。これだけ辛い思いをして草取りをするなら、農薬を使いたくなるよねってわかったうえで、それでも草取りをやるんです。どっちがいい? と聞いたら、「こっちがいい」と。みんな農薬の方が楽だと思うのですが、では、どちらの田んぼで収穫されたお米を食べたい? と聞くと、「農薬を使っていない方のお米を食べたい」というのですよね。自分はどういうものを選び、食べていくのかというジレンマの中で、食べ物選びを真剣に考えるようになり、農業をはじめたおかげで様々な方々とお話ができるようになりました。

 

──農業を通じて大桃さんが得たものは大きそうですね。 

 

大桃美代子:TVは「時間のメディア」と言われているので、生放送であれば、ある時間に始まってある時間にきっちり終わるんですね。でも農業って、お天道様とのお付き合いの中で、自分の気持ちひとつでコントロールできるものではありません。さらに雨が降るから、その前にやっておかなくてはならないことや、自然との対話なので、人間が都会で暮らすという便利さの中でどれだけ多くのものを失っているかなど、本当に色々なことを思い知らされるのです。

 

──最後に講演会でお会いする皆さんへ伝えたいことをお教えください。

 

大桃美代子:日本という国は自然豊かで農作物も豊富。とても素晴らしい国土なのですが、自然が豊かだということを別な側面から見れば、災害が多い国でもあります。地震や津波、台風など自然災害との闘いの中で日本という国が形成されてきたといっても過言ではないと思うのですが、私は中越地震という自分が生まれた場所で被災したことによって大きく人生が変わりました。そこから復興していく人や地域の姿を見ながら、改めて自分が地域に育てられた、というアイデンティティを再認識し、何とか地域のためにできることがないかということで復興のために農業を始めました。そこから広がった地域活性化のアイデア、農業のアイデア、女性が生きていくためのアイデアなど、経験の中からお話できたらなと思っています。

 

大桃美代子

 

 

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