青島健太 講演会講師インタビュー

 

 

プロ野球選手、社会人野球監督、日本語教師、大学教授といった多彩な活動を通じて得た経験をもとに、ライターとして様々な角度からスポーツの醍醐味を伝えている青島氏。一流監督・コーチのマネジメント術、トップアスリートのモチベーションといったビジネス関連の講演会でも人気のテーマについて伺った。 

(text:伊藤秋廣、photo:小山幸彦)

 

 


講演で伝えたいこと


青島健太 講演会講師インタビュー- 主にどのような内容の講演を、どのような立場の方々にお届けしていますか?

青島:おかげさまで様々な分野からお声がけいただいています。例えば、最先端IT企業から金融、製造業、サービス業、建設業、あるいは、最近では2020年に開催が予定されている東京オリンピックに絡み、全国の自治体から声をかけていただき、行政対応やスポーツでいかに地域活性化するかといった話から、健康づくり、コミュニティづくりなど幅広いテーマでお話しさせていただく機会も増えています。

 また、私もお話しさせていただいて楽しいのは学校ですね。中学、高校、大学に通う学生さんたちは、間違いなく、これからの日本を背負う人たち。輝かしい未来への希望を抱いている若い皆さんに出会い、私自身もエネルギーをもらいますので、本当に良い時間を過ごすことができていると感じています。

 

- 特に企業における講演では、どのようなお話をされていますか?

青島:企業に呼ばれる場合は、タイムリーでありながら、それぞれの立場にとって有意義な話をさせていただくように心がけています。たくさんの人々を束ね、より良い職場環境を提供しなくてはならないマネジメント層には、スポーツ経験や取材を通じて私が見聞きしてきた監督やコーチの手法を参考にしていただけるように紹介し、一方、その組織に属して、どうやったら自分の力を発揮できるか、そんな思いを抱いているフレッシュマンには、上司や先輩方に負けるなと、彼らだってみんな最初はあなたたちと一緒だったのだよと話し、「競争力」を高めるようにと伝えます。人それぞれに持ち味があるので、発揮すべき個性を自覚して、どうやったら自分がその職場で輝けるのか、楽しくやれるのかを考えようじゃないかとエールを送っています。

 上司と部下の関係についても、よくお話をさせていただきますね。上司が部下に対して「相手が何を考えているのかわからない」「今の若いものは…」などと口にするような、その種の断絶やギャップの正体はコミュニケーション不足にほかなりません。現在のマネージャーやリーダー層に求められるのは、若い人たちをより正確に、そしてそれぞれを個別に理解することだと思っています。リーダーが全部一人でやってしまうのならば良いですが、多くの人たちに頑張ってもらってチームとして成果をあげるためには、当然、メンバーの一人一人に力を発揮してもらわなくてはなりません。あいつは何が得意だ、こういう物言いをする、こんな思考回路を持っている、といった相手の個性や特性を理解しないと動いてもらえないし、力を出してもらえないと思うのです。そのためには若い人たちのありようや思考は理解すべきでしょう。結局、一番重要なファクターはコミュニケーションですね。

 

青島健太 講演会講師インタビュー- キャリアの中で、26歳でプロ野球選手になられ、引退後にオーストラリアで日本語教師、さらに現在のスポーツライターへの転身など、これまで多くのチャレンジをされていらっしゃいますが、リスクに対する恐れはありませんでしたか?

青島:プロ野球を引退してオーストラリアに渡り、日本語教師を目指したことが、これまでの人生の中でも一番大きな転換点だったかもしれません。今振り返ると、自分でもどうしてそうしたのだろう?よくやったなぁという面白おかしさがあります。それまで、学生、社会人、プロと長い間野球をやってきて、いざ引退するときに、野球とはまったく関係のない、新たな一歩を踏み出したいと思いました。年齢は31歳。不安もありましたし、もちろんリスクだってあると自覚していました。でも、人生を強烈に変えたかった。これまでの人生と決別するということ自体にエネルギーは生まれませんが、人生を変えたいと思い、変えることができるという可能性が見えたら、そちらにエネルギーが向かうのは当然でしょう。これまでとはまったく違う生き方がはじまるというワクワク感だけがありました。ワクワクする気持ちがないと、リスクばかりがクローズアップされてしまいます。面白そうだと思うこと、前を向くことで不安やリスクに対する意識は薄れていきました。

 

- そうした様々なバックボーンを持つ青島さんだからこそ講演で伝えることができるのはどのような内容だと思われますか?

青島:取材者でありながら、取材される側の立場も経験してきました。選手であったり、企業チームの監督であったり、一企業人として企業に属した期間もありました。様々な立場を経験して物事を立体的に見ることの必要性を実感してきましたね。
 
 大切なことは、物事を一面的に見ないということです。様々な要素から構成されている多様性に気が付くことで新しい発見が生まれ、未開発な自分の能力も引き出すことができますし、さらに他人の魅力に対しても敏感に察知できるようになると思っています。他人のある嫌な一面だけを見ていても、その関係性において何の進展もありませんが、実は見方を変えただけで、これまでと違った繋がりを作ることができるかもしれません。自らが持つ多様性、周囲の方が持つ多様性に気が付くことは重要です。これはスポーツに限ったことではないかと思いますが、成功している人ほど複合的な力を発揮していると思います。

 わかりやすく説明すれば、スポーツの世界も身体自慢とか足が速いとかいったことだけで活躍できるほど甘い世界ではなく、情報収集力や客観的思考法、自分を律する力など複合的な要素でアスリートの力は成立しています。講演では、そういったスポーツ的アプローチがビジネスシーンにおけるどのような立場の方でも応用できるとお伝えし、考えていただけるきっかけづくりをさせていただきたいと思っています。


多様性に適応するマネジメント


青島健太 講演会講師インタビュー― 現在、特に注目されている指導者はいますか?

青島:スポーツでは、素晴らしい指導者がたくさん活躍しています。プロ野球の世界では、ソフトバンクの工藤公康監督や日本ハムの栗山英樹監督が新しいスタイルでチームを束ねています。

 工藤監督は対話型のマネジメントを取り入れ、選手の能力を引き出すようなアプローチをしています。栗山監督もそう。選手との距離感の縮め方も工夫し、最新のマネジメント手法を用いてソフトにチームを導いています。いまや、かつての強権的な指導者のやり方は通用しません。適応力のある方はマイナーチェンジしたり、ガラッと手法を変えたりして成果を出しています。そもそも選手の考え方や思考のスペックが変わってきているのですから、それに合わせていかなければ人を動かすことなどできないと思っています。

 

 

― 著書『長嶋的、野村的』の中で、指導者やアスリートを「直感・野性」の長嶋茂雄氏タイプと、「理論・知性」の野村克也氏タイプに分類されています。「直感・野性」タイプのプレイヤーと「理論・知性」タイプのプレイヤー、それぞれの才能を育てる際に、指導者として気をつけるべきことはありますか?

青島:自分をよりよく伸ばすためには、マネージャー、リーダーに限らず、社員も自分の特性を理解する必要があると思うのですね。他者がどうかというより、まず自分をしっかり知るという作業が必要です。野性的か知性的かという定義はある種のレトリックで、言葉を配してわかりやすく規定した言い方でもあるので、言うなればどちらのタイプであっても良いし、両面を持ち併せていても良いとは思います。けれども、本来の自分はどういうものを好むのか? どういった傾向があるのか? 何を大事にして生きているのか? そうした価値観や手法を自覚すると、同じ特性を持っている人に同じ匂いを感じるものです。また逆に、自分と違うタイプの人間に対しては、一緒にいることで補完しあえるようなニーズを感じることができるはずです。

 まずは自分を見つめること。その考え方はマネジメントを行う上でも重要になってきます。ワンパターンで一面的な価値観の上でマネジメントをすれば、好まれる人間は良いですが、はじかれる方はたまったものではありません。リーダーは多様性に対する理解を前提としながらマネジメントをしなくてはならないのです。自分とは違うタイプに対して理解や寛容を用意することが重要です。もちろん、何でもOKと寛容が過ぎても逆効果でしょう。方向性や主義主張を持ちつつ、多様性に適応すれば、極めて現代的なマネジメントが成立すると思っています。

 

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「好き」であることがモチベーション

 

青島健太 講演会講師インタビュー― 青島さんはこれまでに多くのアスリートを取材されていますが、一流選手に共通した資質はありますでしょうか?

青島:ひとつは向上心。一流のアスリートは良い意味での自己顕示欲や野心のようなものを大前提として持っていると思うので、これはあまり語っても意味はないかもしれません。
 ただ、間違いないのは、自分を自分で客観視できている人ほど大成しているという事実です。イチロー選手は、その最たるものですよね。打者というのは、注目を集めるためにホームランを打つことばかりを考えるものですが、そこに特化していったら、現在のような世界のイチローの存在はなかったでしょう。ホームランを打ちたいという欲望を殺して、三遊間にボテボテを打って一塁に全力疾走するという、この価値観を自分の中に構築できているからこそ、彼は独自の世界を作ることができた。プロになった時点でそのスタイルを確立し、振り子打法でヒットを打つことを自分の生業にする道を見出していたのです。自分の持ち味は何なのか、フィジカルな特徴は何なのかを客観的に捉え、それらの能力が最大化されたときに、もっとも競争力が高まるスタイルはどこにあるのかを、武器を並べたうえで、これまた客観視している。難しいことですが、これが一番のポイントですよね。

 企業活動に置き換えるならばマーケティングですよ。自社の強みを分析して競争力を高める。熱いだけではダメなのです。酔っているだけでもダメ。クールに客観視しないとなりません。錦織圭選手もそうですよね。ビッグサーブではなくストロークで勝負する道を選んで、拾いまくって、ライン際に打っていくスタイルを構築したことで、世界に通用する選手となっていったのですから。

 

青島健太 講演会講師インタビュー― プロスポーツの世界では30代の内に現役を終える選手が多いですが、イチロー選手や三浦和良選手、クルム伊達公子選手など40歳を過ぎても一線で活躍されている選手はどのような部分が優れていると思われますか?

青島:まずはフィジカルなコンディショニングの維持ができていないとダメでしょう。イチロー選手は43歳、伊達公子さんも然り、カズに至っては50歳、山本昌さんも50歳まで投げたとか、これらをかなえているのは、昔のプレイヤーよりも健康維持に対する意識が高まり、チーム環境的にも医学的にも管理の方法論が確立されているからに他なりません。さらに彼らに共通しているのは、やっている競技、そこに立ち向かう自分が今でも大好きなんですよね。辞めている人はそれを始めたころのように好きじゃなくなったから辞めるのだと思います。もちろん、本人の意思に反して辞めさせられるケースもありますし、今までのように身体が動かなくなればつまらなくなってしまいます。どちらにせよ、どこかで限界を自覚してやめていく。

 長くやっている人たちは、辞める理由がないのです。年齢や立場に応じて、自分なりのチャレンジを楽しむことができる。これはあらゆる仕事に言えることです。辞める理由はひとつ。それが好きじゃなくなってくるからです。好きなことは続けられる。勝ち残る、生き残るコツは、ほぼほぼそういうことです。勝っている人は皆、やっていることが好きなんですよ。ビジネスマンもそうでしょう。好きだから寝食を惜しんで、人より早く会社にいって仕事をするし、それをいとわない。そこにはもちろん使命感もあるでしょうが、最大の理由は、ただ好きだから、面白いからやるのです。

 

― プロ野球選手として結果が思うように出ないとき、モチベーションをどのように保っていらっしゃいましたか?

青島:スランプに陥らない人はいないと思いますが、自分が何を目指しているのかという方向だけは絶対に見失わないようにと自分に言い聞かせてきましたね。そもそも高いレベルに置かれているからこそスランプに陥るのだと自覚することです。山登りと同じで、頂上に向かって登っているはずなのに、時折、少々下ったり迂回していたり、それでも間違いなく上は目指しているのです。もがいている限り激しく落下することはありません。モチベーションを維持する秘訣などないと思っていますが、とにかくもがくしかない。そうこうしているうちに、必ずどこかに足場は見つかるはずです。

 まあ、その仕事は好きで始めたのだと思い出すことですよ。好きで始めちゃったんだから、このくらい仕方がないと楽観することです。そして、周囲の対応も重要ですね。マネージャーは落ち込んでいる部下に気づいてあげること。先ほどの話ではないですが、多様性を認めながら個別に見てあげることが大切ですね。部下の性格だけでなく、状況も多様であることをまず認識しておくべきです。

 

2020年東京オリンピックと地域活性

 

青島健太 講演会講師インタビュー― 2020年には東京でオリンピックが開催されます。最後に、スポーツを通じた地域活性の可能性についてお聞かせください。

青島:これは日本にとって本当に大きなチャンスだと思っています。様々な議論はあるかもしれませんが、素晴らしい価値や成果が残るようなオリンピックにすれば良いと思うのですね。具体的にどのようなことをやるべきなのかは、それぞれの業種や役割の中で皆さんが必死に考えていますし、その中でビジネスチャンスを見出そうとするのも当然のことです。

 2020年まではインバウンドは増えていくでしょうから、観光業も東京のみならず、様々なエリアに広がっていくことでしょう。スポーツというものを通じて、ビジネス活況をどのように作っていくのかというのも、ひとつの大きなテーマとなりますが、その一方で、今、いろいろなところで指摘されている人と人との関係やコミュニケ―ションも、このイベントをきっかけにより良いものにしていける、絶好の機会だと捉えています。

 子どもたちにとっては世界からいろいろな人がやって来て、多様なものに触れ合える場になりますし、競技をやっている子であれば活躍する可能性だって生まれる。ひとつひとつあげていったら、本当にきりがないほど影響力のある一大イベントであることは間違いありません。オリンピックの開催を通じて、健康やビジネス、コミュニケーション、地域活性など、これらの未来がどうあるべきか、それを皆で考え、持ち得るエネルギーやパワーを向上させる動きが日本各地で起こることがとても楽しみですし、そういう機会にしなくては、せっかくのオリンピックもただの体育祭になってしまう。それぞれの立場の方がこの機会をどう活用すべきなのかということを真剣に考えていくべきでしょう。

 

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