堀古英司 講演会講師インタビュー

 

ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントL L C 最高運用責任者。東京銀行(現:三菱東京UFJ銀行)為替資金部ドル・円ディーラー、部長代理、同ニューヨーク支店バイス・プレジデントを歴任した後、ニューヨークにてファンドマネジャーとしてヘッジファンドの運用に携わる。米国在住も、定期的に帰国し講演活動を精力的に行っている。日本の聴講者へ向けたオンライン通信での講演会も人気の堀古英司氏にウォール街から見たアメリカ大統領選、そして、これからの日本についてうかがった。  

(text:荒木みか、photo:吉田将史)

 


お金の本質とは!?


──プロの投資家からの信頼が厚く、銀行や証券会社からの講演のご依頼が多いようですが、それについてどう感じていらっしゃいますか。

堀古:確かに金融機関向けに今後の日本・アメリカを中心とする世界経済・株式、為替市場の動向についてお話させていただくことが多いです。やはりそれは、実際にお金を運用してつらい苦しい思いをして、そこから出た結果のお話をしているので、自分の「お腹を痛めてやっている」というのが伝わっているんじゃないかなと思いますね。
そもそも私は分析が間違っていると本業が成り立ちません。もちろんすべて正確に“当てる”ということではありませんが7、8割は正しい見立てをしていると思います。逆に言うと7、8割当てられないとウォール街では生き残れません。ですから、分析や結果をだし、その責任を自分でも負っている。そこが信頼を寄せていただけている一因かな、と感じています。

 

──堀古さんというと、“プロ”向けのイメージが強い気がします。

堀古そうなんです。“玄人”向けとばかり思われがちですが、じつは『お金の教室』のような一般の方向けの講演も得意なんですよ。
私は常々思っているんですが、日本人は「お金」に関心を持ちながら人前でその話をするのをためらうんです。その根底にあるのが儒教の「士農工商」の教えです。“商”が一番下なんですよ。でも、「知っているけれど言わない」のと「知らない」では全然違います。ですから、ウォール街で23年間戦ってきたプロの立場から、お金の本質について学校や一般企業でももっとお話していければと考えています。皆さんの顔をしっかり見ながらお伝えするので、難しい話ばかりではありませんから安心してください(笑)。

 

──『お金の教室』という話がでましたが、ニューヨークでヘッジファンドマネージャーとして活躍されているご自身の原点や契機はどこにあったのでしょうか。

堀古アメリカで勝負をしたいと考えだしたのは、高校・大学時代にアメリカンフットボールの遠征でそのスケールの大きさや深みを目の当たりにしてからです。憧れましたし、世界の舞台で活躍したいと強く思いました。
「お金」に関して言えば、私は高校1年生の時に父親を亡くして、そこから、母がお金で苦労しているのをずっと見てきたんですよ。私も当時はいろいろアルバイトをしたものです。そこで残ったお金を少しでも利回りのいいものに入れて、とか。それが原点で、その時の思いや考えは“今”につながっていますね。

 

──アメリカンフットボールの経験が投資に活きたことはありますか。

堀古:活きているどころか、「アメフト=投資」です。ウォール街はアメフトそのものなんです。相手を徹底的に研究し、戦略を練り、常に究極のレベルまで鍛錬の連続……どこを怠っても生き残ることはできません。あと「退場にならないこと」が鉄則と言うのも同じです。ウォール街でもよくいるんですよ、ずるいことをして反則を取られ、退場になる人が。投資は「“ズル”をすると儲かる」という誘惑が多いんです。でも、スポーツはルールを守らないとおもしろくないのと同じで、ビジネスでもルールを守るというのは鉄則です。もう一つ言うと完全に負けるとわかっている相手以外に、最初からそんなに無茶苦茶な作戦で向かうことはありえないと思うんですよ。そういう意味でも、退場になるということは、自分でチャンスを摘んでしまうことになるんです。
アメフトでもビジネスでも常に心がけてきたことがあります。それは、誠実であること、そして何よりも信頼を大切にすること。この2つを犠牲にした勝利や利益に興味はありません。

 

──ウォール街での起業についてですが、34歳の若さで銀行を辞められ、日本人がウォール街でヘッジファンドを立ち上げるというのは、リスクを伴うチャレンジだったと思いますがいかがでしょうか。

 

堀古私は銀行で為替ディーラーをやっていましたが、当時、ディーラーとしての寿命は40歳まで、という感じでした。マーケットで勝っていく自信はあるのに、銀行に残ればあと6年しか職業寿命がない……。ですから、ここでチャレンジしないことこそ「リスクを取らないリスク」だと考えたんです。実際、同期はもうほとんど銀行を卒業していますが、私は早めに現職に切り替えたおかげで、あと50年はこの仕事ができると思っています。
ただ、独立後3年間ほどは開店休業状態でしたけどね(笑)。

 

 

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 ウォール街から見た大統領選とメディアの姿

 

──アメリカ大統領選の結果をどのように受け止めていらっしゃいますか。

堀古共和党の経済政策は今のアメリカに必要なことだと思っていました。それがドナルド・トランプ氏への批判から実現しないとすれば残念だな、と。しかし今回、トランプ氏が大統領になり、議会でも共和党が過半数を獲りました。これはアメリカのみならず世界経済に大きなメリットをもたらすと考えています。

 

──メディアが報じるトランプ氏と堀古さんが知るトランプ氏には大きな隔たりがあるとうかがいました。

堀古:人々が思い描いているような「トランプ像」は、まず人種差別主義者というのがあると思います。そこからして、まったく違います。彼の周りには白人もいますが、マイノリティの方が多いんですよ。それに、彼は元々ニューヨークでビジネスをしてきた人だということを忘れないで欲しい。ニューヨークで成功を目指すのに、人種差別をしていて生き残れるわけがないんです!
トランプ氏主催のパーティに呼ばれたことがあるんですが、そこで歌っていたのは黒人歌手でした。ほかにも、黒人のバスケットボール選手が事業を始めるときに100万ドルを“ぽん”と出資したり、あと90年代初め、トランプ氏が苦しい時に投資をして彼を助けたのは日本人なんですよ。そういうことからも、人種差別というのはメディアが作った虚像に過ぎないと思います。

それと、私が知っている彼の信条は2つあって、一つは「メディアを利用する」こと。そして、もう一つは「敵はとことんつぶす」ということです。今、メディアを利用しようと思ったら暴言が一番なんですよ。暴言を吐くとメディアにすぐに取り上げられるのでね。今回も「暴言王」とメディアは喜んで取り上げていたじゃないですか。
もう一つの考え方はどうかな、と私は思うんですが……。でも、彼はそうやってビジネスの世界で生き残り、成功した人なんですよね。

 

──ヒラリー・クリントン氏が優勢だと言われていましたが、そこから盛り返した要因は何だったとお考えでしょうか。

堀古:まず認識しないといけないのは、アメリカのメディアはどちらを支持しているか選挙運動前に明らかにしてくれるんです。今回の場合、95%がクリントン氏支持を表明していたんですよ。でも日本のメディアは、「“クリントン氏支持”のアメリカのメディアはこう報じています」と、断りをいれないといけないのに、それを言わずに情報を流していました。だから日本の世論はアメリカ以上にメディアの情報に動かされたと思いますね。
我々は、メディアの“クリントン氏支持”というのを差し引いて情報を見ていました。もっと言うと、メディアが95%もクリントン氏をサポートしているにもかかわらず、世論調査で拮抗しているというのは、それは明らかにトランプ氏で決定ですよ!
ではなぜ、トランプ氏支持を表明したり、彼で決定だと言う人が少なかったか? それはトランプ支持と言うと袋叩きにされる風潮があったからです。イコール差別主義という扱いをされる。だからみんな言わなかった、言えなかったんです。
 

──メディアについてのお話がありましたが、現在のメディアの在り方について感じていらっしゃることはありますか。

堀古:特にここ数年そうですが、私はほとんどメディアを信用していません。インターネットやSNSの出現により競争が激化し、視聴者数、購読数、クリック数を増やすことに腐心し過ぎていて、情報の正確さ、公平性についてはかなりあやしいと感じています。あまりにクリックや視聴者の“数”ばかりを追い続けて信用を犠牲にしていると思います。少なくとも投資に携わる人は、大衆への迎合化が著しいメディアの報道を妄信していては本質は見えてこないです。

 

──大統領就任後、トランプ氏は思うような政策を実行できるとお考えでしょうか。

堀古:政策を通そうと思ったら上院で5分の3を獲らないといけませんが、共和党はその数に足りていないので、すべてを通すことは難しいでしょうね。法人税減税に関しては共和党、民主党ともに賛成しているので、すぐに通るでしょう。世界最高税率の法人税はやはり改善されるべきですよ。法人税は資本に対する課税であり、金融をよく知らない人は資本に対する課税を提唱します。資本の流れが悪くなることによる経済全体への悪影響を理解していない人が多いんですね。

 

──500億ドル規模とされるインフラ政策に関してはどうでしょうか。

堀古:共和党内にも慎重派が少なくないので、それは少しハードルが高いと考えています。アメリカの多くのインフラは50年以上前のもので、老朽化は大きな問題だと思いますが……。

 

──日本への影響について、トランプ氏が大統領になると「ドル安になるのでは?」という見方もあるようですが?

堀古:そういう意見があると私も聞きましたが、まったく逆です。「ドル高」ですよ! トランプ氏が大統領になるとどうしても財政赤字が増えるんですね。そうすると、アメリカの国債を買う人がそのリスクを見るので、リスク込みの金利になります。それを「実質金利が上昇する」と言うんですが、それは「ドル高」要因なんです。トランプ氏は「ドル高」、マーケットもすでにその方向で進んでいます。これが真実ですよ。
そこで日本はどうかと言うと、「ドル高=円安」なので、あたかもアベノミクスが再び始まるかのようなメリットを受けられる。ただ、そこで日本が調子に乗ってメリットをタダ取りしていると、アメリカの貿易赤字が増えて、トランプ氏が日本に対して強硬姿勢を取ってくるのは確実でしょうね。

 

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「投資の頭」を育てる

 

──改めて日本の経済政策についてうかがいたいのですが、「アベノミクス」をどのように評価されていらっしゃいますか。

堀古:アベノミクスはさまざまな人がいろんなことを言うので、もう何がなんだかわからなくなっていますね。簡単に言うと、「金融政策」、「財政政策」、「成長戦略」の3本ですよね。
まず「金融政策」ですが、これは手を打つのが遅すぎてもう効かなくなっていますね。次に「財政政策」ですが、これは消費税を引き下げるなら財政政策ですが、逆のことをやったのでこれも違います。そして「成長戦略」は時間が掛かります。言っていることとやっていることが全然違うので、頓挫していると言わざるを得ないです。今、円安になって株が上がっているのはアメリカの景気が良くなっているのと、「トランプ効果」ですよ。

 

これからは、日本も思い切った財政出動をするべきです。今までなぜ税金や国債などの財政資金を出せなかったかというと、財政を公共事業などに投資しても、将来その事業自体に価値がなくなってしまっていたからです。せっかく財政を出しても、これでは「ばら撒き」で、一番やってはいけないことです。本当にやらなければいけないのは投資になること。投資というのはいくらかの投資をしたら、例えば「100」投資したら将来「200」になって返ってくるもの。時間が掛かってもいいんです。こうすると財政赤字にならないんですよ。今までは、「ばら撒き」をやっていたから財政赤字が増えていたんです。
今はお金を借りても10年間金利を払わなくてもいいんですよ。10年で1%でも得られたらプラスになるんです。そこから言うと、少子化対策は必ず投資になります。なぜなら、子どもが1人増えるとその人が生涯的に支払う税金は数千万円になるはずです。例えば少子化対策に1人数百万円かかっても、将来数千万円になって返ってくるならそれは大きな“投資”ですよ。
でも、政治をやっている人は20年以上後のことなんて言っていられない。自分が数年後に選挙で選ばれるためのお金の使い方になってしまうので、やらなければいけないことと、やってしまうことが違うんですよ。これは大きな問題だと思います。

 

──2020年東京オリンピック、その経済効果というのはあるのでしょうか。

堀古:今、オリンピックに必死になっていて「ばら撒く」ことが前提にあって、施設建設に何百億円というお金が動こうとしています。ですが、通常のスポーツ施設で何百億円も投資して黒字にするのはまず不可能でしょうね。東京オリンピックがあるのはわかります。ただオリンピック後のキャッシュフローと今のコストを比べてプラスになるかどうか、その「ネットアセットバリュー」を本当は考えないといけない。メディアでは100億円の予定だった建設費用が500億円になった、とかそういう話ばかりしている。重要なのはそこじゃないんですよ。ネットアセットバリューが見合っているのであれば、それが500億円だろうといいんです。その議論をしないといけないのに今のコストしか見ていない。なぜ、今のお金のことしか見ていないのか? そこにあるのは、投資の考えではなく「ばら撒き」の発想だからです。

 

──投資の頭というのは、日本には馴染みがうすい気がします。

そうですね。日本は投資の教育が遅れていると思います。これを何とかしなくてはいけない。日本の風土からしてすぐには難しいと思います。けれど、そんな中でも「少子化対策」への投資、これは時間が掛かってもやるべきことだし、できることなんだとお伝えしたいです。

 

──海外投資家から見て日本の株式市場は魅力的なマーケットと言えるでしょうか。

高齢化だけで言うと、先進国はすべてそうなんですよ。これだけならそんなに問題ではありません。問題なのは、日本は少子化と人口減少が同時に進行している点なんです。どこの国も人口減少を見越して経済政策を立てていないので、これはまったく始めてのケースなんです。これは投資にとっては致命的です。
日本のポジティブな所は人間が素晴らしい、信用力は世界で断トツ、食事が美味しい、と沢山あります。ですが、グローバル化の中で、英語を使っていないことはまず、大きなディスアドバンテージです。共通言語を英語にするようなドラスティックな政策もあっていいんじゃないかなとも思います。
あと、「クールジャパン」と言って日本の素晴らしいところばかりをフューチャーしていますが、足りないところをもっと認識していかないといけないと思いますね。それに、日本人は良い商品を沢山作っているのに、それをプレゼンしないんですよ。良い物を作ったら自然に売れるという考えがある。アメリカは逆で、どう見ても1個1ドルくらいのものを、優れたプレゼン能力を生かして5ドル10ドルで売る。それがどんどん売れていくんですよ。

 

──日本ではNISAが徐々に浸透していますが、これから投資を始めようという方にアドバイスがあれば教えてください。

NISAについては、まず、制度そのものについてですが、120万円とか5年間とか日本はいろいろと制限を付けるのが好きですね。制限を付ければ付けるほど投資意欲は削がれるものです。日本は極端にリスクを回避したい人が多いのだから、制限などほとんど無くすくらいでちょうどいいと思います。これから投資を始めようとする人には、投資の大前提、人口が増加していて経済成長が期待できて投資環境が整っている国で投資を始めて欲しいです。これらの条件を最も満たしているのはアメリカなんですよ。

 

──世界の金融の中心・ウォール街で生きるプロの視点から、これからの投資についてお聞かせください。

講演でもお伝えしていますが、投資を始めようとする人はメディアの言うことを鵜呑みにしないことです。本質を掴むことの大切さを知っていただきたい。それと、投資の鉄則は、「ノーリスク・ノーリターン、ハイリスク・ハイリターン」だということ。特に金融危機以降、世界の投資家はリスクに敏感になっています。リスクから逃れたい人が、何かショックがあった時に市場から資金を引き揚げたいのは当然だと思います。しかし、リスクから逃れたい人にリターンが無いのは当然だし、みんながリスクが高いと思う時にあえてリスクを取った人には、高いリターンがもたらされるのは当然なんです。
「ノーリスク・ノーリターン、ハイリスク・ハイリターン」。これさえ覚えていればマーケットはそんなに怖いものじゃないんですよ。
しっかり本質をつかんで、賢明なリスクテイカーになってください!

 

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