古賀稔彦 講演会講師インタビュー

古賀稔彦 講演依頼 インタビュー

 華麗な背負い投げを得意とし「平成の三四郎」と注目され、1992年のバルセロナオリンピックでは、練習時の怪我を押して金メダルに輝き、日本中に感動を呼び起こす。

 優勝をもたらした最大の理由は、「考えや行動がぶれない自分」がいたこと。ぶれない自分であったからこそ、怪我をしたことで迷いがなくなり、逆に絶対に優勝できると確信。

 夢を実現するためには、決してぶれず、困難に立ち向かうことを当たり前に思うことが必要不可欠であると伝えてくれる。

(text:増田聖祥、photo:吉田将史)

 

プロフィール

「自主性」に気付き自分を取り戻す。

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― どのような企業・団体、業種、職種から、年間でどのくらいの講演依頼が寄せられていますか。

古賀:講演依頼の約7割が企業からによるものです。対象も幅広く、経営者の方にお話したり、社員研修に呼ばれたりしています。近年は、年間50から60回の講演を開講しており、最近は忙しく月10回ほど講演させていただいています。

 

- 柔道に取り組んだきっかけを教えてください。

古賀:子どものころは気管支炎喘息の持病があり、病弱で、引っ込み思案でした。
 しかし、ちょっとしたきっかけから柔道に取り組み、道場内の練習試合に出たんですが、簡単に負けてしまった。悔しさで涙が止まらなかったんですが、そのとき「もう負けたくない」という気持ちがふつふつと湧き出して、強さを求める自分に生まれ変わったんです。自分の弱さを十分に知っているけれど、強くなりたい一心から、弱い自分に打ち勝っていこうと思うようになりました。

 

― 1988年のソウルオリンピックでは、金メダルの期待がプレッシャーとなり実力を出し切れなかったけれど、「原点に戻る」ことで克服したと聞いています。

古賀:日本代表になると、コーチ、トレーナー、栄養士さんなど様々なスタッフがサポートしてくれます。そして、オリンピックで優勝するには、そうした第三者の指示にしたがっていればいいんだと錯覚するようになりました。
 しかし、試合場では、国民からの期待だけでなく、対戦相手の威圧感、観客の視線などすべてがプレッシャーとなり、どう対応すればいいのか分らなくなるんです。つまり、問題に直面したときに、自分で対応する能力、解決する能力が養われておらず、3回戦敗退の苦渋を嘗めました。
 そして、今までの自分を振り返り、あらためて自分で考え行動出来る自主性の重要性に気付き、自分を取り戻したんです。

― 人の助言も大切です。だがまずは自分がどうしたいのかを明確にしなければならないんですね。

古賀:もちろん、自分ひとりの考えだけで、物事すべてが成り立つわけではありません。自我を出しすぎれば、ありがたい助言にも耳を傾けなくなり、傲慢になる一方です。
 人の意見を十分に受け入れて、「自分だったらこうする」という姿勢を示すべきです。行動に自分の考えを入れなければ意味がないんです。
 コーチから指導を受けても、「今の自分はこうしたいと思っている」と自分の考えを伝え、コミュニケーションをとってから練習に臨むべきです。そうすることにより、自分の意志や考えがあったうえで行動に移せることが出来、自分で問題を解決する能力を高めることになるんです。

「この問題を解決できる」と直感。

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- 1990年に、体重制限のないトーナメントである「全日本柔道選手権大会」で準優勝していますが、「絶対に優勝する」という気持ちに欠けた甘さが原因で、優勝を逸したとおっしゃっていますね。

古賀:そのとき優勝した小川直也選手は重量級で、中量級の私とは体格差があるため、持たれたら力負けすることを注意していました。
 しかし、試合後半、心身の疲れもあり持たれてしまったとき、なぜか「まあ、大丈夫だろう」と一瞬の自分への甘さ、弱さが出てしまったんです。次の瞬間、小川選手の足車によって、私は日本武道館ではじめて、天井を仰ぎ見ることになったんです。
 周囲の人は準優勝を讃えてくれましたが、自分に負けて準優勝に甘んじたのであり、涙が止まりませんでした。自分に負けたという敗北感は、後悔以外の何ものでもありません。しかし、自分に勝って勝負に負けたんであれば、それは教訓となり後々に生かせるんです。
 自分の弱さ、甘さ、ずるさなどに負けたことに悔しさがこみあげ、涙が溢れてしまったんです。そして、改めて勝負の怖さ、自分に負けることの怖さを教えられたわけです。

- そうした経験を踏まえ、1992年、バルセロナオリンピックでは、練習時の怪我を押して金メダルに輝きますね。

古賀:後輩の吉田秀彦選手と練習していた時に左膝を負傷してしまったのですが、その瞬間は「何でここで怪我しなければならないんだ」と思いました。
 しかし、痛みが治まった時、我に返って「これで優勝できる」という気持ちになったんです。ソウルオリンピックからバルセロナオリンピックに臨むまでの4年間は、どんな問題に直面しても、自分で解決できる力を身につけた4年間だったのです。だから、怪我をしても「オレならこの問題を解決できる」と直感したんです。

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― バルセロナオリンピック出場の後、野球やテニスにも取り組んで、常に意識改革を心がけて、モチベーションを維持することに取り組んでいらっしゃいますね。

古賀:違う世界に飛び込むと、「できない」ところから始まる。しかし、続けていくことで「できる」ようになっていく。できるようなるとモチベーションも高まり、違う形で体も鍛えられるんです。
 その当時は、私もベテランの一人ですから、成長の度合いも見越せてしまう。それが、マンネリ化を招くので、自分に新しい風をあてることで刺激をもらい、喜びも増えます。その良い影響によって本業である柔道のモチベーションも上がり、新鮮な気持ちで柔道の世界に戻って来られるわけです。そのため、色紙によく「新風」と揮毫していました。自分の心に新しい風を通してあげるのです。
 選手をはじめ道場の子どもたちが、柔道の練習で行き詰っているときは、「一回、柔道衣を脱ぎなさい」と指導し、違うことに取り組ませます。
 そうすることで気持ちが楽になり、心の整理をすることもできます。現在、指導者の立場となって、「新風」の重要性を現役時代以上に一層実感しています。

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「この仕事がやりたい」という気持ちが大事。

- 2003年4月に開塾した「古賀塾」の創立精神、指導理念、さらに指導者として、特に心がけていることを教えてください。

古賀:講道館柔道の創始者・嘉納治五郎先生によって誕生した柔道の根本精神は、「精力善用」「自他共栄」です。人として生まれてきたからには人の役に立つべきという精神を、柔道を通して学んでいこうというものです。古賀塾の創立精神も同じです。
 そして、古賀塾には幼稚園児から年配の方までいらっしゃいますが、年齢に関係なく「人の役に立てる自分」になることを、柔道を通して学んでいます。
 この精神を根本に練習に励み、柔道から得た様々な学びを、心身に生かしてほしいと思っています。鍛えた体や困難に負けない精神を、社会のいろいろな場面で人の役に立てる存在であってほしいからです。
 指導の際には、「勝負は練習から始まっている」という心構えを伝えています。「練習だから」という心構えで臨むと緊張感が生まれないんです。柔道のような勝負の世界に限らず、ビジネスにおいても「だから」に甘えや油断が生じます。
 練習場には観客もいませんが、試合では、知らない相手に向き合うことだけでなく、観客の視線も大きなプレッシャーになります。練習だからという気持ちで練習している人が、いざ本番で十分な力が発揮されないのは当たり前なんです。

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- 全日本女子柔道チーム強化コーチとして、2004年のアテネオリンピックでは谷本歩実選手を金メダルに導きますが、女性アスリートに限らず、社会進出がめざましい女性を指導するうえで心がけるべきことはなんですか。

古賀:心の信頼関係をいかにつくるかが重要なポイントになります。
 スポーツの世界では異性の恩師と弟子、会社では異性の上司と部下の関係になりますので、女の子が心から尊敬できる立場の男にならなければ、まったく心を開いてくれません。信頼関係を失うようなことがあれば、一生嫌われるでしょうね(笑)。
 もちろん、男子を指導するのとは違い、物の言い方ひとつをとっても女子選手には十分気を遣うことが大事です。服装や身だしなみなど、自分にも気を遣いましょう(笑)。
 そして、男女に関係なく、指導する側は選手および部下のすべてを受け入れる器の大きさも必要です。その上で、その人にあった助言を与えていることが、人を伸ばすことに通じると思っています。器の大小は、対話によって相手の潜在能力を引き出すコーチングを行う場合でも、指導者に求められる重要な素養だと思います。

- 柔道の修業は、ビジネスの世界でも大いに生かされると思いますが、特に重要な要素は何ですか。

古賀:やはり、自主性です。自分がどうしたいのかを明確化することですね。
 仕事で困難に直面したときでも、受身一方の気持ちだと、困難から逃げることしか考えません。しかし、もし「オレはこの仕事がやりたいんです」という気持ちに変えることができれば、困難をなんとかして乗り越えようという気持ちに変えることができるんです。
 これに関連して、中学・高校時代に入塾していた柔道私塾・講道学舎時代の恩師で、創立メンバーの一人である横地治男先生の言葉に、「決心」があります。
 先生は第二次世界大戦の戦地での経験から、「勝負をするというのは生きるか死ぬかということ。常に『決心』をして勝負に臨みなさい」とおっしゃっていました。この言葉は、私たちにとって非常に重く残っています。
 中途半端な気持ちで動いてはだめ。戦場なら死んでしまいますし、例え強制されたことでも、自分が動く以上、責任を持ってとことんやりぬくことで、達成感ややりがいが生まれるのです。

- 最後に、講演で伝えたいこと、特に心がけていることを教えてください。

古賀:自分自身も様々な夢にむかって挑戦してきましたし、現在でも、自分の夢を持ちながら、教え子たちの夢を実現するためのサポート役を務めています。
 講演では、モチベーション維持、逆境を克服すること、選手をはじめとする人材育成など、様々なテーマをお話していますが、それはすべて夢の実現につながることです。
 そのために大事なのは、日常生活の中で、挨拶をはじめ、当たり前のことを当たり前のようにできる自分であることだと思います。そんな当たり前のことの大切さと、さらにスポーツ、ビジネスにおいて夢を実現する方法を、講演でお伝えできればと思っています。

 

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